障害があったら修学旅行に親も来ないとダメなの?
小学6年生です。車椅子で,酸素の吸入(きゅうにゅう)と,痰(たん)の吸引(きゅういん)が必要な障害があるけど,特別支援学校ではなく自分の町の小学校で,毎日楽しく過ごせています。ただ,3ヶ月後の修学旅行のことで今,困っています。「ふだん学校にいる看護師さんが修学旅行には行けないので,親が付いてきてほしい」と学校から言われていて,親も「看護師がいないなら自分が行かないと」と言っています。みんなと同じように親と離れて泊まれるのを楽しみにしていたけど,無理を言ってわがままだと思われるのもいやだし,やっぱり親が来るのはしかたないんですか。
「しかたがない」とあきらめることはありません。
学校や教育委員会とぜひ話し合ってください。
役所の相談窓口や私たち弁護士もお手伝いします。
修学旅行で「みんなと同じように親と離れて泊まるのを楽しみにしていた」というあなたの気持ちは,
わがままでも何でもありません。
むしろ,法律的にまったく正しいことです。
「学校の教育は,自主・自律(じりつ)の精神を身につけるためのもの」。
教育基本法と学校教育法という法律は,学校の教育について,そう言っています【★1】。
修学旅行は,そういった大切な学校教育の一環(いっかん)として,
家族と離れていつもとはちがう世界に出かけて学ぶための,だいじな行事です。
だから,ほかの子には親が付いてこないのに,あなたにだけ親が付かないといけないというのは,おかしなことです。
酸素吸入や痰の吸引という医療的ケアをする人がいるかどうかは,あなたの命にかかわる重要な問題です。
でも,だからといって,「修学旅行に看護師さんがいないなら,親が行くのはしかたがない」ということにはなりません。
文部科学省は,2019(平成31)年に,
「泊まりがけの校外学習でも,看護師などが医療的ケアをできるように,教育委員会と学校がきちんと体制をつくること」
という通知を出しました【★2】。
そして,2021(令和3)年には「医療的ケア児支援法」という法律ができ,
「親が付き添わなくてよいように,医療的ケアをする看護師などが学校にいること」とはっきり書かれました【★3】。
同じ年,文部科学省も「子どもの自立のために,親に付き添いを求めるのは,本当に必要なときだけにするように」と言っています【★4】。
もし,あなたがこの学校に転校してきたばかりで,すぐに修学旅行の日が来る,
だから学校が看護師さんを急に探せない,というのなら,
親に来てもらうのもしかたないかもしれません。
でも,あなたはずっとこの学校で学んできたのですよね。
6年生になったら修学旅行があるということは,だいぶ前からわかっていたのですから,
ほんらい,学校が前もって準備しておくべきことです。
しかも,修学旅行は3ヶ月も先なのですから,今からでも準備の時間は十分にあります。
ふだん学校にいる看護師さんが修学旅行に行けないなら,
代わりに訪問看護ステーションや病院から別の看護師さんに来てもらうなど,学校が努力しなければならないのです。
あきらめることなく,学校や教育委員会とよく話し合ってみてください。
話し合いがうまく進まないなら,市役所・区役所の障害者担当の窓口や,私たち弁護士に相談してください。
1989(平成元)年,世界は「子どもの権利条約」という約束ごとを作り,
障害のあり/なしで子どもを差別することを禁止しました【★5】。
そして,障害のある子どもの尊厳(そんげん)が守られ,
障害のある子どもが自立して社会に参加しながら暮らせるように,
子どもの権利と,大人・社会の義務を,条約で確認しました【★6】。
さらに,世界は2006(平成18)年に「障害者権利条約」を作り,
障害のある子どもの権利についても,くわしく確認しました【★7】【★8】。
この障害者権利条約のとても素敵なところは,
「私たちのことを,私たち抜きに決めないで(Nothing About Us Without Us)」という合い言葉のもと,
当事者である障害者団体が世界中から参加して,みんなでいっしょに作りあげたことです。
ものごとを決めるときには,主人公抜きに他の人たちで勝手に決めるのではなく,
主人公である本人・当事者の意見をきちんと聞かなければいけないということ。
たとえば,子どもに関する決まりやルールを,当の子ども本人の意見を聞かずに大人だけで勝手に決めてしまうのも,おかしなことですよね【★9】。
この「私たちのことを,私たち抜きに決めないで」という合い言葉は,
障害のあり/なしや,子ども/大人,そのほかにも,いろんな場面に必ずあてはまる,とても大事な考え方です。
「障害」という言葉は,長い間ずっと,一人ひとりの体や心の機能障害という個人のがわのことだけを意味していました。
しかし今は,障害のある人たちが暮らしづらい社会のがわの問題を,「障害」としてとらえるようになっています【★10】。
そういう考え方に立って作られた障害者権利条約は,
障害のある人もない人もこの社会の中でともに分け隔(へだ)てなく暮らすことを,とてもだいじにしています【★11】。
このことを「インクルージョン」と言います。
教育の場面では「インクルーシブ教育」という言葉も使われます【★12】。
そして,世界が作った障害者権利条約や【★13】,
その条約をベースにして改正した障害者基本法,新しく作った障害者差別解消法という日本の法律は【★14】【★15】,
障害のある人が他の人と平等に,障害のない人と同じように社会で暮らせるように,
一人ひとりのニーズに合わせて,社会のバリアを取り除くようにしないといけない,と決めています。
これを「合理的配慮(ごうりてきはいりょ)」と言います。
合理的配慮は,学校・職場・お店など,社会のいろんな場面にあてはまることですが,
学校での合理的配慮なら,たとえば,
車椅子の子が教室に入りやすいように,スロープを作って段差をなくす,
ものが飲み込みづらい子のために,その子の給食にはとろみをつけて飲み込みやすくする,
音に敏感な子のために,教室みんなの机や椅子の足にカバーをつけて雑音を少なくする,
視力がとても弱い子のために,その子のテストの時間は他の人よりも長くする,
そのほかにも,障害のある子一人ひとりのニーズに合わせたさまざまな合理的配慮の例があります。
障害のある人の希望が,いつも必ず実現されるとはかぎらず,
相手にとってあまりに大きな負担になる時は,実現できないこともあります【★16】。
しかし,合理的配慮については,
希望がいつも必ず実現されるかどうかよりも,もっと重要なことがあります。
これまでずっと,学校・職場・お店などの社会のがわは,
「前例がありません」
「あなただけ特別扱いできません」
「もし何か事故があったらまずいので対応できません」
などと言って,障害のある人の希望をきちんと受け止めてきませんでした。
合理的配慮は,そういったこれまでの社会のあり方を変えて,
障害のある人の希望を相手がきちんと受け止め,建設的な対話をしっかり積み重ねることを,重視しているのです【★17】。
合理的配慮は,とてもだいじな法律の言葉です。
ところが,配慮という表現が使われているために,
まるで「思いやり」や「恩恵(おんけい)」であるかのような誤解があったり,
そこからさらに,障害のある人を「わがまま」「クレーマー」などと非難する人さえいます。
こういった誤解や非難は,まったくの間違いです。
障害のある人が障害のない人と同じように暮らせるために社会が対応するのは,
けっして思いやりや恩恵などではありませんし,
障害のある人が障害のない人と同じように暮したいと望むことは,
けっしてわがままでもおかしなクレームでもありません。
どんな人も,障害のある人もない人も,
一人ひとりが大切にされ,安心した毎日と幸せな人生を送れること。
法律は,そのことを一番大切にしています【★18】。
今から48年前,有名な障害者運動家の横塚晃一さんは,
車椅子の人のバス利用に関するバス会社の労働組合との交渉のときに,こう言いました。
「この問題は,車イスの障害者を乗せるか乗せないか,どうやったら乗せられるかが問題ではない。
車イスの障害者が当然乗るものという発想の転換こそ必要なのだ。」【★19】
「どうしたら社会が障害のある人を受け入れられるか」という考え方ではなく,
「障害のある人も障害のない人と同じように暮らせるのが当然だ」という「発想の転換」が,私たちの社会には必要です【★20】。
今回の修学旅行のことだけでなく,これから先もさまざまな場面で,ぜひ声を上げてください。
そして,みんなでいっしょに社会をより良いものにしていきましょう。
条約や法律は,そのための大きな力になります【★21】。
【★1】 教育基本法2条「教育は,その目的を実現するため,学問の自由を尊重しつつ,次に掲(かか)げる目標を達成するよう行われるものとする。 …二 個人の価値を尊重して,その能力を伸ばし,創造性を培(つちか)い,自主及び自律の精神を養うとともに,職業及び生活との関連を重視し,勤労を重んずる態度を養うこと。」
学校教育法21条 「義務教育として行われる普通教育は,教育基本法…第5条第2項に規定する目的を実現するため,次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。 一 学校内外における社会的活動を促進(そくしん)し,自主,自律及び協同の精神,規範(きはん)意識,公正な判断力並(なら)びに公共の精神に基(もと)づき主体的に社会の形成に参画(さんかく)し,その発展に寄与(きよ)する態度を養うこと。」
【★2】 文部科学省初等中等教育局長平成31年3月20日「学校における医療的ケアの今後の対応について(通知)」(30文科初第1769号)「9.校外における医療的ケア」「(1)校外学習(宿泊学習を含む。)」「①校外学習における医療的ケアの実施については,教育委員会及び学校は,児童生徒の状況に応じ,看護師等又は認定特定行為業務従事者による体制を構築すること。なお,小・中学校等については,原則として看護師等を配置又は活用しながら,主として看護師等が医療的ケアに当たり,教職員等がバックアップする体制を構築すること。②校外学習のうち,泊を伴うものについては,看護師等や認定特定行為業務従事者の勤務時間等も考慮した人員確保とともに,緊急の事態に備(そな)え,医療機関等との連携(れんけい)協力体制を構築(こうちく)すること。その際には,泊を伴う勤務に対応できるよう,必要に応じ各自治体における勤務に関する規則の整備をすること」
【★3】 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律10条2項「学校の設置者は,その設置する学校に在籍する医療的ケア児が保護者の付添いがなくても適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするため,看護師等の配置その他の必要な措置(そち)を講(こう)ずるものとする」
【★4】 令和3年6月文部科学省初等中等教育局特別支援教育課「小学校等における医療的ケア実施支援資料~医療的ケア児を安心・安全に受け入れるために~」「保護者に付添いの協力を得ることについては,本人の自立を促(うなが)す観点からも,真に必要と考えられる場合に限るよう努めるべきである。真に必要と考えられる場合としては,例えば,医療安全を確保する観点から,入学や転入学時のほか,夏休みなどの長期休業や長期の入院の後はじめて登校する際などに,医療的ケア児の健康状態に応じて必要な情報を引き継ぐ場合などが考えられる。また,やむを得ず保護者の協力を求める場合には,代替案(だいたいあん)などを十分に検討した上で,真に必要な理由や付添いが不要になるまでの見通しなどを丁寧(ていねい)に説明することが必要である」
【★5】 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)2条1項「締約国(ていやくこく)は,その管轄(かんかつ)の下にある児童に対し,児童又はその父母若(も)しくは法定保護者の人種,皮膚の色,性,言語,宗教,政治的意見その他の意見,国民的,種族的若しくは社会的出身,財産,心身障害,出生又は他の地位にかかわらず,いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し,及び確保する」
【★6】 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)23条1項「締約国は,精神的又は身体的な障害を有(ゆう)する児童が,その尊厳を確保し,自立を促進し及び社会への積極的な参加を容易にする条件の下で十分かつ相応(そうおう)な生活を享受(きょうじゅ)すべきであることを認める」
同条2項「締約国は,障害を有する児童が特別の養護についての権利を有することを認めるものとし,利用可能な手段の下で,申込みに応じた,かつ,当該児童の状況及び父母又は当該児童を養護している他の者の事情に適した援助を,これを受ける資格を有する児童及びこのような児童の養護について責任を有する者に与えることを奨励(しょうれい)し,かつ,確保する」
同条3項「障害を有する児童の特別な必要を認めて,2の規定に従って与えられる援助は,父母又は当該児童を養護している他の者の資力を考慮して可能な限り無償(むしょう)で与えられるものとし,かつ,障害を有する児童が可能な限り社会への統合及び個人の発達(文化的及び精神的な発達を含む。)を達成することに資する方法で当該児童が教育,訓練,保健サービス,リハビリテーション・サービス,雇用(こよう)のための準備及びレクリエーションの機会を実質的に利用し及び享受することができるように行われるものとする」
同条4項「締約国は,国際協力の精神により,予防的な保健並びに障害を有する児童の医学的,心理学的及び機能的治療の分野における適当な情報の交換(リハビリテーション,教育及び職業サービスの方法に関する情報の普及及び利用を含む。)であってこれらの分野における自国の能力及び技術を向上させ並びに自国の経験を広げることができるようにすることを目的とするものを促進する。これに関しては,特に,開発途上国の必要を考慮する」
【★7】 障害者権利条約7条1項「締約国は,障害のある児童が他の児童との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を完全に享有することを確保するための全ての必要な措置をとる」
同条2項「障害のある児童に関する全ての措置をとるに当たっては,児童の最善の利益が主として考慮されるものとする」
同条3項「締約国は,障害のある児童が,自己に影響を及ぼす全ての事項について自由に自己の意見を表明する権利並びにこの権利を実現するための障害及び年齢に適した支援を提供される権利を有することを確保する。この場合において,障害のある児童の意見は,他の児童との平等を基礎として,その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする」
【★8】 障害者権利条約24条1項「締約国は,教育についての障害者の権利を認める。締約国は,この権利を差別なしに,かつ,機会の均等(きんとう)を基礎として実現するため,障害者を包容(ほうよう)するあらゆる段階の教育制度及び生涯(しょうがい)学習を確保する。当該教育制度及び生涯学習は,次のことを目的とする。
(a)人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ,並びに人権,基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。
(b)障害者が,その人格,才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。
(c)障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること」
同条2項「締約国は,1の権利の実現に当たり,次のことを確保する。
(a)障害者が障害に基づいて一般的な教育制度から排除(はいじょ)されないこと及び障害のある児童が障害に基づいて無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと。
(b)障害者が,他の者との平等を基礎として,自己の生活する地域社会において,障害者を包容し,質が高く,かつ,無償の初等教育を享受することができること及び中等教育を享受することができること。
(c)個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。
(d)障害者が,その効果的な教育を容易にするために必要な支援を一般的な教育制度の下で受けること。
(e)学問的及び社会的な発達を最大にする環境において,完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられること」
同条3項「締約国は,障害者が教育に完全かつ平等に参加し,及び地域社会の構成員として完全かつ平等に参加することを容易にするため,障害者が生活する上での技能及び社会的な発達のための技能を習得することを可能とする。このため,締約国は,次のことを含む適当な措置をとる。
(a)点字,代替的(だいたいてき)な文字,意思疎通(そつう)の補助的及び代替的な形態,手段及び様式並びに定位及び移動のための技能の習得並びに障害者相互による支援及び助言を容易にすること。
(b)手話の習得及び聾(ろう)社会の言語的な同一性の促進を容易にすること。
(c)盲人,聾者又は盲聾者(特に盲人,聾者又は盲聾者である児童)の教育が,その個人にとって最も適当な言語並びに意思疎通の形態及び手段で,かつ,学問的及び社会的な発達を最大にする環境において行われることを確保すること」
同条4項「締約国は,1の権利の実現の確保を助長することを目的として,手話又は点字について能力を有する教員(障害のある教員を含む。)を雇用し,並びに教育に従事(じゅうじ)する専門家及び職員(教育のいずれの段階において従事するかを問わない。)に対する研修を行うための適当な措置をとる。この研修には,障害についての意識の向上を組み入れ,また,適当な意思疎通の補助的及び代替的な形態,手段及び様式の使用並びに障害者を支援するための教育技法及び教材の使用を組み入れるものとする」
同条5項「締約国は,障害者が,差別なしに,かつ,他の者との平等を基礎として,一般的な高等教育,職業訓練,成人教育及び生涯学習を享受することができることを確保する。このため,締約国は,合理的配慮が障害者に提供されることを確保する」
【★9】 子どものことは,最後は大人が「子どもにとって最もよいこと(児童の最善の利益)」(子どもの権利条約3条)を判断して決めますが,その判断のためにも,子どもの意見をきちんと聞くというプロセスが必要です(意見表明権。子どもの権利条約12条)。これを,「子どもの最善の利益は,子どもの意見表明の先にある」と言ったりします。
2009年国連子どもの委員会一般的意見12号「意見を聴かれる子どもの権利」パラグラフ74「第3条〔最善の利益〕と第12条〔意見表明権〕との間に緊張関係はなく,2つの一般原則の補完的役割が存在するのみである。一方が子どもの最善の利益を達成するという目的を定め,他方が子ども(たち)の意見を聴くという目標を達成するための方法論を用意している。実のところ,第12条の要素が尊重されなければ第3条の正しい適用はありえない。(略)」
【★10】 障害を個人の疾患(しっかん)や機能障害とする考え方を「医療モデル(医学モデル)」,社会との関係で生じる不利益(ふりえき)であるとする考え方を「社会モデル」,医療モデル(医学モデル)に社会モデルを加えた考え方を「相互モデル」と言います。
【★11】 障害者権利条約3条 「この条約の原則は,次のとおりとする。 …(c)社会への完全かつ効果的な参加及び包容…」
【★12】 2016年国連障害者権利委員会「インクルーシブ教育を受ける権利に関する一般的意見第4号」(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会情報センター訳)パラグラフ10「インクルーシブ教育は,以下のように理解される。
(a)すべての学習者の基本的人権。特に,教育は個々の学習者の権利であり,児童の場合,親や養育者の権利ではない。この点において,親の責任は児童の権利に従属(じゅうぞく)する。
(b)すべての生徒の福祉を重視し,彼らの固有の尊厳と自律を尊重し,個人のニーズと,効果的に社会に参加し,貢献(こうけん)する能力を認めるという原則。
(c)他の人権を実現する一手段。障害のある人が貧困(ひんこん)から脱(だっ)し,地域社会に完全に参加する手段を得,搾取(さくしゅ)から保護されることを可能にするために主要な手段。また,インクルーシブな社会を実現するために主要な手段。
(d)教育を受ける権利を妨(さまた)げる障壁(しょうへき)の撤廃(てっぱい)に対する継続的かつ積極的なコミットメントのプロセスの結果で,すべての生徒に配慮し,効果的にインクルージョンするために,通常学校の文化,方針及び実践(じっせん)を変革(へんかく)することを伴(ともな)う。」
【★13】 障害者権利条約2条 「この条約の適用上,…『合理的配慮』とは,障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有(きょうゆう)し,又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって,特定の場合において必要とされるものであり,かつ,均衡(きんこう)を失(しっ)した又は過度の負担を課さないものをいう」
【★14】 2011(平成23)年改正 障害者基本法4条2項「社会的障壁(しょうへき)の除去(じょきょ)は,それを必要としている障害者が現(げん)に存(そん)し,かつ,その実施に伴(ともな)う負担が過重でないときは,それを怠(おこた)ることによつて前項の規定に違反することとならないよう,その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」
【★15】 2013(平成25)年成立・2016(平成28)年施行 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)7条2項 「行政機関等は,その事務又は事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨(むね)の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」
民間事業者は当初,「努めなければならない」という努力義務でしたが,2021(令和3)年改正・2024(令和6)年施行からは,行政機関と同様に法的義務になりました。
2021(令和3)年改正後の同法8条2項「事業者は,その事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」
【★16】 障害者権利条約2条 「この条約の適用上,…『合理的配慮』とは,障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有(きょうゆう)し,又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって,特定の場合において必要とされるものであり,かつ,均衡(きんこう)を失(しっ)した又は過度の負担を課さないものをいう」
障害者基本法4条2項「社会的障壁(しょうへき)の除去(じょきょ)は,それを必要としている障害者が現(げん)に存(そん)し,かつ,その実施に伴(ともな)う負担が過重でないときは,それを怠(おこた)ることによつて前項の規定に違反することとならないよう,その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」
障害者差別解消法)7条2項「行政機関等は,その事務又は事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨(むね)の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」
同法8条2項「事業者は,その事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」
【★17】 内閣府リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」(https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo2/print.pdf)「『合理的配慮』には対話が必要です! ・合理的配慮の提供に当たっては,社会的なバリアを取り除くために必要な対応について,障害のある人と事業者等が対話を重ね,共に解決策を検討していくことが重要です。このような双方のやり取りを『建設的対話』と言います。 ・障害のある人からの申出への対応が難しい場合でも,障害のある人と事業者等の双方が持っている情報や意見を伝え合い,建設的対話に努めることで,目的に応じて代わりの手段を見つけていくことができます」
【★18】 憲法13条「すべて国民は,個人として尊重(そんちょう)される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする」
憲法14条1項「すべて国民は,法の下に平等であつて,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において,差別されない」
【★19】 横塚晃一「母よ!殺すな」第2版336頁。1977(昭和52)年に「青い芝の会」が行動を起こした「川崎バス闘争」と言います。
【★20】 「青い芝の会が起こした一連の『バス闘争』とは何であったのか。横塚晃一によれば,それは<発想の転換>を求める闘いでした。運輸省・交通局・バス会社・バス労組は,無条件でバスに乗りたいという青い芝の会の主張を,<恩恵を施す慈善的態度>でしか捉えることができていませんでした。(略)こうした態度は,必ず相手に対して制約を求めてきます。また,そうした制約は,必ずエスカレートしていきます。障害者もバスに『乗ってもよい』→『乗せてあげてもよい』→『遠慮がちに乗るべきだ』→『乗ることを遠慮すべきだ』→『なるべく街に出てくるな』といった具合にです。(略)青い芝の会は,ただ『バスに乗る』というだけのことに,他の人々が求められない条件や制約を課されることに反対しました。こうした条件や制約が,障害者の生きる幅を削り取っていくことを肌感覚で知っていたのだと思われます」(荒井裕樹「障害者差別を問い直す」172頁)
「私が本法(山下注:障害者差別解消法)について話す際,この『発想の転換』について触れることが多い。例えば,ある人が『どうしたら社会は障害者をより広く受け入れるようになるか』と考えたとする。どこにも問題がない問いのようだが,本当にそれで良いのか。(略)(この問いでは)障害者が同じ社会の対応な構成員とは認識されていない。(略)本法を機に議論したいのも,障害者に対して『どのくらい丁寧に遇(ぐう)するか』ではない。『どうしたら,このような『発想の転換』に至れるか』についてだ」(朝日新聞2024年5月21日荒井裕樹教授寄稿記事「障害者への合理的配慮 公平な社会目指すため」「対等な構成員と認識されぬ構図 『発想の転換』を」)
【★21】 痰の吸引が必要な小学生の校外学習に親が付添うよう学校が求めたことが違法かどうかが争われた裁判で,名古屋地方裁判所令和2年8月19日判決(判例時報2478号24頁)と名古屋高等裁判所令和3年9月3日判決(D1-Law.com判例体系)は,学校が親の付き添いを求めたのは違法ではないとして,原告である子どもと親からの請求を認めませんでした。しかし,本文で説明したように,今は「医療的ケア児支援法」という新しい法律があります。この法律が施行された日は2025(令和3)年9月18日で,名古屋高裁の判決の日の2週間後です。




