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2022年11月 1日 (火)

黙秘権って子どもにもあるの?


 黙秘権って子どもにもあるんですか? 悪いことをしてないなら説明して疑いをはらせばいいし,悪いことをしているなら正直に話して謝るべきだと思うんですけど,黙秘権ってどうしてあるんですか?




「あなたには,黙秘権という権利があります。

 話したくないことは話さなくてかまいません。

 質問に対して,最初から最後まで答えずに黙っていることもできますし,ある質問には答えて,ある質問には答えない,ということもできます。

 黙秘したことで,あなたが不利に扱われることはありません。

 ただし,あなたがこの法廷で話したことは,あなたの有利にも不利にも扱われますので,気をつけてください」



 刑事裁判は,公開の法廷で行われます【★1】

 裁判は,子どものあなたも,傍聴(ぼうちょう)することができます。



 裁判が始まると,まず裁判官は,裁判にかけられている被告人(ひこくにん)が本人であることを確かめます【★2】

 つぎに検察官が,「この人がこういう犯罪をした」と書かれた起訴状(きそじょう)を読み上げます【★3】

 そして裁判官は,「今,検察官が読み上げたことが,間違っているか,その通りか」を被告人に尋(たず)ねますが,その直前に,最初に書いた黙秘権の説明をします【★4】【★5】



 この「話したくないことは話さなくて良い」という黙秘権は,

 裁判のときだけでなく,

 裁判になる前の,警察官や検察官が本人を取り調べるときにもあります【★6】


 そして,この黙秘権は,

 大人だけでなく,子どもにもあります。


 警察官や検察官が子どもを取り調べるとき,その子どもに黙秘権がありますし,

 大人とちがって非公開になっている少年審判でも,最初に書いた黙秘権の説明が,裁判官からされます【★7】




 国のおおもとのルールである憲法は,

 「どんな人も,自分にとってマイナスなことを,むりやり話させられることはない」,としています【★8】

 そして,刑事手続のルールである刑事訴訟法は,そこからさらに広げて【★9】

 犯罪をしたと疑われている本人は,マイナスなことだけに限らず,「話したくないことは話さなくてよい」としています。

 これが黙秘権です。


 そして,子どもにも黙秘権があることは,子どもの権利条約という世界の約束ごとです【★10】




 どうして黙秘権という権利があるのでしょうか。



 人類の歴史では長いあいだ,犯罪をした人を処罰するとき,「本人が犯罪をやったと認めること」,つまり,自白(じはく)があることが重要だとされてきました。

 なので,捜査するがわは,本人にむりやり犯罪を認めさせるために,

 体や心に苦痛を与える「拷問(ごうもん)」を繰り返してきました【★11】


 日本も,大きな戦争に負ける前,

 法律上のたてまえでは「拷問は禁止」としていたのに,

 実際には,取り調べのときに拷問が広くおこなわれていたのです【★12】


 なので,日本が大きな戦争に負けて,一人ひとりを大切にする社会に大きく変わるとき,憲法も大きく変わりました。

 拷問は「絶対に」禁止になり【★13】

 拷問などでむりやりとられた自白は裁判で証拠にできなくなり【★14】

 本人の自白以外に証拠がないときは,裁判で有罪にしたり処罰したりできないことになったのです【★15】



 黙秘権は,捜査するがわが自白をむりやり取ろうとしてくることを防ぐのと関係しています【★16】



 しかし,黙秘権が認められる理由は,単にそれだけではありません【★17】



 憲法は,「どんな人も,一人ひとりが大切にされる,人として尊重される」ということを,一番大切にしています。

 「一人ひとりが大切にされる,尊重される」ということは,

 「自分のことは自分で決める,他の人から何かを強制されない」ということにつながります。

 そしてそれは,取り調べを受けている場面にも当てはまります。

 一人ひとりが尊重されるからこそ,

 何を話し,何を話さないかは,自分で決める。

 他の人から強制されるのはおかしい。

 だから,黙秘権があるのです【★18】【★19】




 「悪いことをしていないなら,していないと言えばいい」,という人がいます。

 しかしそれは,犯罪を捜査するがわを甘く見ています。


 あなたを疑い,あなたを処罰しようとしているがわは,

 圧倒的に力を持っている,取り調べのプロです。

 あなたの話を,かんたんには信用してくれません。


 むしろ,

 あなたが前に話したことと今話したことの間に少しだけ違いがあったり,

 あなたがあやふやな記憶で話したことが,他の証拠と食い違っていたりすると,

 それをとらえて,「あなたはウソをついている」と厳しくせまってきます。

 あなたが話したとおりに供述調書が作られず,気づかないうちに犯罪を認めたかのような供述調書にサインさせられてしまうこともあります。

 ひどい場合には,あなたが説明したアリバイをつぶすために他の人の証言が取られてしまったりします【★20】


 悪いことをしていないなら,

 自分を疑うがわの人に話すよりも,

 真っ先に,自分の味方である弁護人と作戦を立てる必要があるのです。




 「悪いことをしたなら,黙っているのは人としてまちがっている。正直に話すべきだ」,という人がいます。


 しかし,ウソをつくのならば「人としてまちがっている」と言えますが【★21】

 ウソをつくことと,黙って答えないことは,全くちがいます【★22】


 人としての生き方が正しいかどうかは,法律が決めることではありません。

 どんな生き方をするかは,外から押しつけられるものではなく,自分で選んで決めるものです。

 そして,人としての生き方がどうであれ,刑事事件という法律の問題になっている以上,

 正直に話すのが法律的にプラスなのか,

 正直に話さないと法律的にマイナスになるのか,

 話すとしたら何をどこまで話すのか,ということを,

 まずは,自分の味方の法律家である弁護士に相談することが必要なのです。




 最高裁は,「憲法が黙秘を認めているのは,刑事事件でマイナスになることについてだけ」と言っています【★23】

 でも私は,その解釈はおかしいと考えています。

 上に書いたように,「自分のことは自分で決める,他の人から強制されない」のですから,

 刑事事件以外の場面,たとえば親や先生から何かを聞かれたときも,

 答えたくないことは答えない,話したくないことは話さない,ということは認められなければならないはずです。



 「怒らないから正直に話しなさい」と親や先生に言われて,正直に話したらこっぴどく怒られた。

 そんな理不尽(りふじん)な思いをしたことのある人も,多いのではないでしょうか。


 私が担当したケースの中には,

 学校のテストでカンニングを疑われて,やっていないと一生懸命説明しているのに先生たちに信じてもらえず,

 長時間にわたる事情聴取を受けたあと,自ら命を絶った生徒もいます【★24】


 力を持っている相手,しかも,自分を罰しようとしてくる相手が,あなたの話をきちんと聞いてしっかり受け止めてくれるとは限りません。

 むしろ,そうでないことのほうが,とても多いのです。

 だからこそ,そういう力を持っている相手に話し始める前に,

 まずは,あなたの話にしっかり耳を傾ける立場の人に相談することが大切です。



 まわりの大人や,ニュースでみかける偉(えら)い人たちを,よく観察してみてください。

 「お答えを差し控(ひか)えさせていただきます」というフレーズを,よく耳にしませんか。

 ほかにも,ごにょごにょと何かを答えているようでいて,実際には,聞かれたことに正面から何も答えずにはぐらかして終わっている,

 そんな大人が多いことにも,気がつくと思います。

 人としての生き方がどうであれ,責任ある立場ならきちんと答えなければいけないはずの場面でも,

 力を持っている大人たちは,質問に正面からきちんと答えません。

 それなのに,子どもだと,力を持っている大人にむりやり答えさせられ,黙っていることが許されない,というのではおかしいと,私は思います。




【★1】 憲法82条1項 「裁判の対審(たいしん)及び判決は,公開法廷でこれを行ふ(う)」
【★2】 人定質問(じんていしつもん)と言います。
 刑事訴訟規則196条 「裁判長は,検察官の起訴状の朗読(ろうどく)に先だち,被告人に対し,その人違(ひとちがい)でないことを確かめるに足りる事項を問わなければならない」
【★3】 起訴状朗読と言います。
 刑事訴訟法291条1項 「検察官は,まず,起訴状を朗読しなければならない」
【★4】 黙秘権の説明を,権利告知(けんりこくち)と言います。
 刑事訴訟法291条4項 「裁判長は,起訴状の朗読が終った後,被告人に対し,終始(しゅうし)沈黙(ちんもく)し,又は個々の質問に対し陳述(ちんじゅつ)を拒(こば)むことができる旨(むね)その他裁判所の規則で定める被告人の権利を保護するため必要な事項を告げた上,被告人及び弁護人に対し,被告事件について陳述する機会を与えなければならない」
 刑事訴訟規則197条1項 「裁判長は,起訴状の朗読が終った後,被告人に対し,終始沈黙し又個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨の外(ほか),陳述をすることもできる旨及び陳述をすれば自己に不利益な証拠ともなり又利益な証拠ともなるべき旨を告げなければならない」
【★5】 権利告知のあと,被告人・弁護人の陳述があります(【★4】の刑事訴訟法291条4項参照)。人定質問,起訴状朗読,権利告知,被告人・弁護人の陳述の4つの手続を,あわせて「冒頭手続(ぼうとうてつづき)」と言います。
【★6】 刑事訴訟法198条1項 「検察官,検察事務官又は司法警察職員は,犯罪の捜査をするについて必要があるときは,被疑者(ひぎしゃ)の出頭を求め,これを取り調べることができる。…(略)」
 同条2項 「前項の取調に際しては,被疑者に対し,あらかじめ,自己の意思(いし)に反(はん)して供述(きょうじゅつ)をする必要がない旨を告げなければならない」
 犯罪捜査規範169条1項 「被疑者の取調べを行うに当たっては,あらかじめ,自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げなければならない」
 同条2項 「前項の告知は,取調べが相当期間中断した後再びこれを開始する場合又は取調べ警察官が交代した場合には,改めて行わなければならない」
【★7】 少年審判規則29条の2 「裁判長は,第1回の審判期日の冒頭において,少年に対し,供述を強(し)いられることはないことを分かりやすく説明した上,審判に付すべき事由の要旨を告げ,これについて陳述する機会を与えなければならない」
【★8】 憲法38条1項 「何人(なんぴと)も,自己に不利益な供述を強要されない」
 (注;憲法38条1項は)「アメリカ合衆国憲法修正5条の自己負罪拒否(じこふざいきょひ)の特権に由来する」(芦部信喜「憲法第6版」252頁)
【★9】 「憲法38条1項は『何人も,自己に不利益な供述を強要されない』とする。(略)刑事訴訟法は,より広く『自己の意思に反して供述する必要がない』旨,あるいは『質問に対して陳述を拒むことができる』旨が定められている」(長谷部恭男「憲法」256頁)
【★10】 子どもの権利条約40条1項 「締約国(ていやくこく)は,刑法を犯したと申し立てられ,訴追(そつい)され又は認定されたすべての児童が尊厳(そんげん)及び価値についての当該児童の意識を促進(そくしん)させるような方法であって,当該児童が他の者の人権及び基本的自由を尊重することを強化し,かつ,当該児童の年齢を考慮し,」更(さら)に,当該児童が社会に復帰し及び社会において建設的な役割を担(にな)うことがなるべく促進されることを配慮した方法により取り扱われる権利を認める」
 同条2項 「このため,締約国は,国際文書の関連する規定を考慮して,特に次のことを確保する。 (略) (b) 刑法を犯したと申し立てられ又は訴追されたすべての児童は,少なくとも次の保障を受けること。 (略) (iv) 供述又は有罪の自白を強要されないこと。 (略)」
 少年司法運営に関する国連最低基準規則(北京ルールズ)7.1 「無罪の推定,犯罪事実の告知を受ける権利,黙秘権,弁護人依頼権,親や保護者の立会権,証人尋問権(証人と相対し反対尋問する権利),上級の機関に不服を申し立てる権利などの基本的な手続的保障は,手続のあらゆる段階で保障されなければならない」
【★11】 例えば日本でも,江戸時代は,有罪にするには自白が必要だったので,自白を得るための拷問が行われていました。
 「『吟味詰り之口書』は,書面に轉換された被疑者の自白である。これが原則として有罪判決に必要であるということは,拷問による自白强制が不可避であったことを意味する」(平松義郎「近世刑事訴訟法の研究」775頁)
【★12】 「戦前の刑事手続においては,『絶対主義』・『必罰主義』を内容とする実体的真実主義の原理の故もあって,自白取得のため拷問・脅迫等が絶えなかった。…旧憲法下においても,法律上,拷問・脅迫は禁止されていたが,黙秘権や自白の証拠能力・証明力の制限は保障されていなかった。それ故,『自白は証拠の王である』として,自白取得のために禁止されている拷問等が絶えなかった」(芦部信喜「憲法Ⅲ人権(2)」208頁)。
 「大正刑訴法は,捜査機関の権限を拡大・強化することによって,人権蹂躙(じゅうりん)の発生を防止しようとしたものであった。しかし,大正刑訴法の施行後においても,政府の意図とは裏腹に,人権蹂躙事件が頻発することになる。…検挙された者に対する取調べに際しては,かなりの拷問が用いられている。たとえば,竹刀で悶絶(もんぜつ)するまで殴る,指の間に鉛筆を挟んで縛めつける,三角柱の柱の上に座らせて膝の上に石を置く,生爪を剥(は)ぐ,熱湯に手を入れさせる,天井から逆様に吊るし鼻の穴に唐辛子を入れる等々である」(多田辰也「被疑者取調べとその適正化」103頁)
【★13】 憲法36条 「公務員による拷問及び残虐(ざんぎゃく)な刑罰は,絶対にこれを禁ずる」
【★14】 憲法38条2項 「強制,拷問若(も)しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留(よくりゅう)若しくは拘禁(こうきん)された後の自白は,これを証拠とすることができない」
【★15】 憲法38条3項 「何人も,自己に不利益な唯一(ゆいいつ)の証拠が本人の自白である場合には,有罪とされ,又は刑罰を科せられない」
【★16】 「黙秘すなわち,供述拒否が憲法上の適正手続権として保障されなければならない理由は…第三に,黙秘権を保障しないと,取調べが糾問的(きゅうもんてき)で過酷なものになり,被疑者の身体の安全や自由に危険が生じたり,虚偽(きょぎ)の自白がなされたりするおそれが高まるという,歴史的な要求という側面もある」(渕野貴生「黙秘する被疑者・被告人の黙秘権保障」季刊刑事弁護79号11頁)
【★17】 (注:旧刑事訴訟法の下でも自白義務がなかったことを指摘し,それでも実際に敗戦まで黙秘権が尊重されず時に拷問がなされていた,という佐伯千仭博士の問題提起を紹介したうえで)「旧刑事訴訟法の下でも(規範的,倫理的には)黙秘権が保障されていたことを指摘するのは,黙秘権の普遍的(ふへんてき)な正確を理解するうえで,正しい議論の仕方だと思います。ただし他方で,そのような指摘や議論の仕方は,『黙秘権を保障するかどうかは,被疑者・被告人に法律上・事実上の供述義務…を課さないことを認めるかどうかであり,それに尽きる』という理解を伴いがちです。…そのような黙秘権の理解は,戦後の日本国憲法…の下では,不十分・不適切なものになるといわねばなりません。すなわち,黙秘権という権利の意義ないし機能として,供述義務を課さない…という消極的なものだけを考えてしまうのは不十分・不適切であって,現在ではむしろ,克服(こくふく)されなければならないものだと思うのです」(高田昭正「黙秘権について 歴史的意義と現代的意義」季刊刑事弁護38号64頁)
【★18】 「黙秘権の本質は,個人の人格の尊厳に対する刑事訴訟の譲歩(じょうほ)にある。人格は自律を生命とする。自己保存の本能を克服(こくふく)して,自己を進んで刑罰に服させるのは崇高(すうこう)な善であり,人はそのように行為する道徳的義務を持つ。それは極めて崇高な道徳的義務である。しかし正(まさ)にその故に他からの強制を許さない。ただ各自の自発的行為にまつだけである。この故に,積極的に自己を有罪に導く行為をとることを法律的に強制しない。まして国家は,個人を保護するためにのみ存在するものである。その目的達成のための手段として,個人の人格を侵害するというのは,自己矛盾である。黙秘権とは,このような人格の尊厳に対して刑事訴訟が譲歩した『証拠禁止』である。その供述が信憑性(しんぴょうせい)に乏しく,誤判に導く虞(おそれ)があるためにつくられた『証拠法則』ではない」(平野龍一「刑事法研究第3巻 捜査と人権」94頁)
 「黙秘権は人間の尊厳に由来する。被疑者は,拷問によって供述を強要されないというにとどまらず,供述するか供述しないかの自由な自己決定権をもっている」(田口守一「刑事訴訟法第7版」139頁)
 (注:黙秘権の現代的意義について)「一つは,田宮博士が明確に述べられた,黙秘権の絶対的性格です。被疑者・被告人の黙秘権は他の何ものかによってその存在を条件づけられたり,制約を受けたりする権利ではないこと…が確認されねばなりません。すなわち,個人の尊厳や自律性,人格の不可侵性の…現れとして黙秘権は(その存在と内容を)正当化されるのです。ですから,黙秘権を確立しなさいという要求は,そのような『個人の尊厳と自律性を根拠とする論理構造(絶対的性格)』をもつ被疑者・被告人の権利を保障しなさいという要求をすることなのです」(高田昭正「黙秘権について 歴史的意義と現代的意義」季刊刑事弁護38号67頁)
 「黙秘すなわち,供述拒否が憲法上の適正手続権として保障されなければならない理由は,第一に,それが自己防衛本能ともいうべき,人間の,というより生物の本質に根ざしたものであることにある。…自己を破壊するような行動をするように迫ることは,人間の尊厳を踏みにじることになる。だから,そうしなくても済むように供述の提供を拒否できることを権利として保障する必要があるのである」(渕野貴生「黙秘する被疑者・被告人の黙秘権保障」季刊刑事弁護79号11頁)
【★19】 「黙秘権を保障するということは,自分が何を話すのかについて少年の自己決定を尊重するということであり,少年を一個の独立した人格として認めることにほかならない。そうであるとすれば,弁護人・付添人が黙秘することの意味と必要性について少年に十分に説明し,その説明により,少年が自分には供述するか否かを自分の判断で決める権利があるのだと認識し,理解したうえで黙秘を選択したとすれば,それは少年が自ら選び取った決断である。少年が自己の人生に関わる出来事について,そのような決断の経験を経ることは,少年の人格と発達を促進することになる」(村中貴之「少年事件と黙秘」季刊刑事弁護79号31頁)
【★20】 後藤貞人「黙秘権行使の戦略」季刊刑事弁護79号19頁
【★21】 「ウソをつくのは犯罪?」の記事も見てください。
【★22】 「被疑者に黙秘権を与えるのは,道徳に反する--罪を犯したのであれば,いさぎよく告白すべきであるし,無実であれば,真実を述べて疑いを解くべきである--という主張がある。法律家でない一般の国民には,むしろ根強い考え方であるかも知れない。しかし,これは,ともすれば自白の追及に傾きやすい捜査の現実に対する認識の不足に基づいている。そして,黙秘権は,供述しないことを許すだけであって,『虚言(きょげん)の自由』を認めるものではないから,不道徳でもない」(松尾浩也「刑事訴訟法上・新版」119頁)
【★23】 最高裁大法廷昭和32年2月20日判決・刑集11巻2号802頁 「いわゆる黙秘権を規定した憲法38条1項の法文では,単に『何人も自己に不利益な供述を強要されない。』とあるに過ぎないけれども,その法意は何人も自己が刑事上の責任を問われる虞(おそれ)ある事項について供述を強要されないことを保障したものと解すべきであることは,この制度発達の沿革に徴して明らかである」
 「黙秘しうる事実は,刑事責任を負わせ又は過重するような事実に限られる。…わが憲法はただ『不利益な供述』として,何らの限定をも設けていないから,刑事責任に限定する理由はない,という反対論がある。しかし,わが法も規定の位置からいって刑事に関するものであることは明らかであ(る)」(平野龍一「刑事法研究第3巻 捜査と人権」98頁)
 なお,最高裁は,憲法38条1項について,「純然たる刑事事件においてばかりではなく,それ以外の手続においても,実質上,刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には,ひとしく及ぶ」としています(川崎民商税務検査拒否事件。最高裁大法廷昭和47年11月22日判決・刑集26巻9号554頁)。
【★24】 「先生の指導を受けて死にたいほどつらい」の記事を見てください。
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