« ブログが本になりました!(パート2) | トップページ

2019年7月 1日 (月)

アニメのキャラの模写をSNSにアップしていい?



 絵を描くのが好きで,他の人にあまり知られてない最近の大好きなアニメのキャラクターを,いつもノートに模写(もしゃ)してます。友だちから好評なので,SNSにもアップしてたくさんの人に見てもらいたいんですが,やっぱり法律上問題になりますか。トレースじゃなくて模写だから大丈夫かなとも思うんですが,どうですか。




 絵を描くのが好きなんですね。

 私は,あなたのように絵を描ける人が,とてもうらやましいです。

 「絵を描くのが苦手だ」と話すと,必ずと言っていいほど,子どもたちから「試しに描いてみて」と言われます。

 しぶしぶながら私が描くと,案の定,とんでもないものができあがります。

 そして,それを見た子どもたちは,楽しそうに笑い転げます。




 あなたが,大好きなアニメのキャラクターを自分のノートに模写したり,

 そのノートを友だちに見せたりすることは,

 法律上問題はありません。

 でも,それをSNSにアップするのには,注意が必要です。




 アニメなどの作品には,「著作権(ちょさくけん)」という権利があります【★1】


 著作権を持っている人は,その作品についていろんなことができますし,

 著作権を持っていない人は,その作品についてやってはいけないことが多くあります【★2】


 例えば,「作品のコピーを作ること」【★3】

 コピーを作れるのは,

 著作権を持っている人か(作った本人や,その権利を引き継(つ)いだ家族,権利を譲(ゆず)り受けた人など),

 著作権を持っている人がOKした人だけです【★4】

 他の人が勝手にコピーを作ってはいけません。


 他にも,「作品をテレビやネットなどで流すこと」【★5】

 作品をテレビやネットなどで流せるのは,

 著作権を持っている人か,その人がOKした人だけです。

 他の人が勝手に流してはいけません。



 あなたがアニメのキャラクターを模写したのは,「作品のコピーを作ること」にあたります。


 トレースが,もとの作品を下に敷いて上からなぞって描くのに対して,

 模写は,作品を見ながら自分で描き写すものなので,

 トレースほど正確なコピーにはなりませんね。


 でも,法律では,

 多少正確でなくても,もとのキャラクターと「同じ」と思えるものはコピーだ,としています【★6】【★7】

 なので,模写であっても,コピーです。

 原則として,著作権を持っている人からOKをもらう必要があります。



 ただ,法律は,例外として,

 「そのコピーを,自分自身で楽しむとか,家族や少人数で楽しむというのであれば,

 著作権を持っている人からOKをもらわなくてもいい」

 としています【★8】


 だから,あなたの場合,

 自分のノートに模写したり,そのノートを友だちに見せたりするのは,

 法律上問題ありません。



 しかし,多くの人に見てもらうのは,さっきの例外を超えています。

 原則にもどって,模写は「勝手なコピー」としてアウトになります。


 また,多くの人に見てもらうためにSNSにアップするのも,

 「ネットに流すこと」を勝手にした,として,アウトになります【★9】




 憲法という,国のおおもとのルールは,

 文章や,絵や,音楽など,

 いろんなかたちで自分の思いや考えを表現することを,

 とても大事にしています【★10】

 いろんな表現が行き交い,混じり合うことで,

 私たちひとり一人の人生と,私たちの社会とが,豊かなものになるからです。


 だから,著作権の法律は,

 一人ひとりの表現を大切に守っています【★11】


 他方で,素晴らしい作品や素敵な作品が「独(ひと)り占(じ)め」されているよりも,

 他の人とシェアできることもあったほうが,社会は豊かになります。


 なので,著作権の法律は,

 一人ひとりの表現を守るのと同時に,

 個人的に楽しむためのコピーならOKとか,

 学校で教育に使うためならOKとか【★12】

 古い作品で時間が経っているものなら使ってもOKなど【★13】

 誰かの表現を他の人が使える場面もたくさん作って,

 この社会が豊かなものになるように,バランスを取っているのです【★14】



 また,憲法は,一人ひとりの表現だけでなく,一人ひとりの財産も守っています【★15】


 著作権は,大切な財産です。

 「知的財産権(ちてきざいさんけん)」と呼ばれます【★16】


 汗水垂らして働いて得たお金や,

 一生懸命育てた野菜や果物や花,

 がんばって建てた立派な家や,

 長年かけて苦労して集めた趣味のコレクション,

 それらが財産であるのと同じように,

 アニメなどの作品も,その人が創意工夫をこらして作り上げた,大切な財産なのです。


 その財産を,法律が認めたかたち以外で勝手に使うのは,

 他の人の物を盗んだり傷つけたりするのと同じように,

 犯罪として処罰される場合があります【★17】

 また,刑事処分とまではいかなくても,

 著作権を持っている人から,使うのを止めるよう求められたり【★18】,損害賠償というお金を求められたりすることがありえます【★19】




 あなたは,模写をSNSにアップして,多くの人に見てもらいたいのですよね。

 そのアニメを作った人に,「模写をSNSにアップしてもいいですか」と連絡してみてください。


 あなたがその作品のファンで,とても好きだということ。

 その作品を心から応援していて,広くたくさんの人に知ってもらいたいと願っていること。

 その気持ちをしっかりと伝えて,自分の模写をSNSにアップしてOKかどうかを聞いてみるとよいと思います。



 私自身も,このブログ記事に著作権を持っています【★20】

 時々,私の記事を使いたいという方から,ていねいな連絡をもらいます【★21】

 私は,「山下弁護士の記事だ」とはっきりわかるようにして使うことと,私の記事でお金もうけをしないことを条件に,使うことをOKしています。

 私の記事が使われ,メッセージが広く届くことが嬉しいですし,

 そうやっていろんな人から連絡をもらうことで,

 「またブログをがんばって書こう」と前向きな気持ちになります。


 あなたが模写したアニメの作者も,同じように思ってくれるかもしれません。



 あなたが模写を続けて,絵がますます上達し,

 やがて,今度はあなたがオリジナルの作品を描くようになったら,

 その作品の著作権を持つのは,あなたです。


 そして,あなたの作品を好きになった子どもたちから,

 「模写してみんなに見てもらってもいいですか」と連絡が来たときに,

 素敵な対応ができる大人になっていてほしいと思います。

 



【★1】 著作権法10条 「この法律にいう著作物を例示すると,おおむね次のとおりである」「四 絵画,版画,彫刻その他の美術の著作物」
【★2】 「本法において著作権とは『第21条から第28条までに規定する権利』をいう(17条1項括弧書)。これに示されているとおり,本法には著作権という”単一の権利”は存在せず,これらの”複数の権利”を総称する言葉にすぎない。…この定義に列挙された個々の条項に『含まれる権利の種類』の各々(おのおの)を,支分権(しぶんけん)という。…以上のように著作権は複数の多様な支分権の集合体なので,『権利の束』と呼ばれている」(奥村久道「著作権法第3版」148頁)
【★3】 複製権(ふくせいけん)といいます。
 著作権法21条 「著作者は,その著作物を複製する権利を専有(せんゆう)する」
【★4】 「著作権は相続,譲渡(じょうと)が可能な財産権ですので,複製権について許諾(きょだく)を申し入れる相手が必ずしも著作者であるとは限りません。…また著作者は一部の譲渡も可能ですので,複製権を有する者と,他の権利を有する者が異なる場合があることに留意する必要があります」(著作権法令研究会「実務者のための著作権ハンドブック第9版」30頁)
【★5】 公衆送信権(こうしゅうそうしんけん)といいます。
 著作権法23条1項 「著作者は,その著作物について,公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては,送信可能化を含む。)を行う権利を専有する」
【★6】 著作権法2条1項 「この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる」「一五 複製 印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製(さいせい)することをい(う)…(略)」
 「複製は原著作物の再製であるが,必ずしも原著作物と全く同一のものを作り出す必要がなく,多少の修正増減があっても著作物の同一性を変じないかぎり,同一物の複製にあたり,複製権はこれに及ぶことになる」(半田正夫「著作権法概説第16版」137頁)
【★7】 あなたの模写は,元の作品を見ながら作るもので,元の作品という「著作物」のコピー(複製)にあたることは明らかですが,キャラクターそれ自体が「著作物」にあたるのか,という細かい論点もあります。
 サザエさんのキャラクターの顔をバスの車体に描いたケース(特定のマンガのコマを写したものではない)で著作権侵害とした判例(東京地裁昭和51年5月26日判決・判例時報815号27頁)は,キャラクター自体が著作物かどうかはっきり判断されていませんが,その後,ポパイのキャラクターがネクタイの柄に使われたケースで,最高裁は,キャラクターそのものは著作物ではなく,キャラクターが描かれたマンガが著作物だ,としたうえで,ネクタイは第1回目のポパイ作品(1929年)の著作権を侵害しているけれども,保護期間が1990年に満了しているので,ネクタイ販売の差し止めは認められない,としました(最高裁第一小法廷平成9年7月17日判決・民集51巻6号2714頁)。
 もっとも,キャラクター自体が著作物でなくても,そのキャラクターが出てくるマンガが著作物として保護されていますから,実際のマンガのコマを写さずにキャラクターを描くことも著作権の侵害にあたりうることに注意が必要です。
【★8】 「私的使用のための複製」といいます。
 著作権法30条1項 「著作権の目的となっている著作物…は,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること…を目的とするときは,次に掲げる場合を除き,その使用する者が複製することができる(以下略)」
 「家庭内に準ずることから人数的には通常は10人程度であり,かつ,その間に家庭内に準ずる親密で閉鎖的な関係があることを要し,これには親密な特定少数の友人間,小研究グループが該当すると考えられている」(奥村久道「著作権法第3版」221頁)
【★9】 鍵をかけたアカウントや非公開のグループで,ごく少数の限られた友だちとネットで共有するだけなら,許されると考えられなくもないですが(公衆送信権(著作権法23条1項)の「公衆」に該当するかどうかの問題),ネットはトラブルが起きやすいので,注意が必要です。
 「自動公衆送信とは,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じて自動的に行うものをいう…。(略)公衆からの求めに応じたものに限る。したがって,特定少数のみの求めに応じるもの,一方的に送り付けるものは,自動公衆送信に該当しない」(奥村久道「著作権法第3版」169頁)
 「著作権でも肖像権(しょうぞうけん)でも,『つぶやきや投稿の公開範囲』は重要な要素です。著作権法では,ある程度の人数が見たりシェアできる以上,どんな範囲で公開しようが権利侵害になる可能性はあるのですが,現実には,広く一般に見られる場へのアップではより慎重さが求められます。逆に,数十人の仲間しか見ないような場では,多少は自由にふるまう人が多いでしょう。つまり,ソーシャルメディアと著作権などの関係を考える時に,前提としての法律知識は無論重要ですが,同時に鍵(かぎ)となるのは『どの程度やると相手の迷惑か』『怒られそうか』という常識というか間合いの取り方でもあるのです」(福井健策「18歳の著作権入門」104頁)
【★10】 憲法21条1項 「集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する」
【★11】 「日本国憲法は,著作活動の保護を積極的に保障する規定(米合衆国憲法1条8節8項,ドイツ連邦共和国基本法73条9号参照)はもたないが,しかし,19条(思想の自由),21条(表現の自由),23条(学問の自由)および29条(財産権の不可侵)の各規定に著作権法の基礎を見いだすことができる」(千野直邦,尾中普子「八訂版・著作権法の解説」3頁)
 もっとも,大日方信春教授は,「<著作権は表現の自由のためにある>との言説は<著作権は表現行為を制約している>ということを,隠微する言説ではないか」「やはり著作権は表現行為を制約するものだという視点が重要で,ただ表現の自由も絶対的に保障されるわけではないので,著作権法による言論規制が合理的理由によるものであるのか,ここを問う視点を明確に,あるいは意図的にもち続けることが,憲法学から著作権法制度をみるときには重要になる」と重要な指摘をしています(「著作権と憲法理論」,知的財産法政策学研究33号244頁)。
【★12】 著作権法35条1項 「学校その他の教育機関…において教育を担任する者及び授業を受ける者は,その授業の過程における利用に供(きょう)することを目的とする場合には,その必要と認められる限度において,公表された著作物を複製し,若(も)しくは公衆送信…を行い,又は公表された著作物であって公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし,当該著作物の種類及び用途並びに当該服制の部数及び当該複製,公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は,この限りでない」
【★13】 著作権法51条1項 「著作権の存続期間は,著作物の創作の時に始まる」
 同条2項 「著作権は,この節に別段の定めがある場合を除き,著作者の死後…70年を経過するまでの間,存続する」
【★14】 著作権法1条 「この法律は,著作物並びに実演,レコード,放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め,これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作者等の権利の保護を図り,もって文化の発展に寄与することを目的とする」
【★15】 憲法29条1項 「財産権は,これを侵してはならない」
 同条2項 「財産権の内容は,公共の福祉に適合するやう(よう)に,法律でこれを定める」
【★16】 知的財産基本法2条1項 「この法律で『知的財産』とは,発明,講演,植物の新品種,意匠(いしょう),著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発明又は解明がされた自然の法則又は現象であって,産業上の利用可能性があるものを含む。),商標,商号その他事業活動に用いられる商品又は役務(えきむ)を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう」
 同条2項 「この法律で『知的財産権』とは,特許権,実用新案権,育成者権,意匠権,著作権,商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう」
【★17】 著作権法119条1項 「著作権,出版権又は著作隣接権を侵害した者…は,10年以下の懲役(ちょうえき)若(も)しくは1000万円以下の罰金に処し,又はこれを併科(へいか)する」
 ただし,被害者が告訴(こくそ)しなければ処罰できない親告罪(しんこくざい)です。
 著作権法123条1項 「第119条…の罪は,告訴がなければ公訴を提起することができない」
【★18】 著作権法112条1項 「著作者,著作権者…は,その著作者人格権,著作権,…を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる」
【★19】 民法709条 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う」
【★20】 著作権法10条 「この法律にいう著作物を例示すると,おおむね次のとおりである」「一 小説,脚本,論文,講演その他の言語の著作物」
【★21】 記事の一部分だけを引用するのなら,私への連絡は要(い)りません。
 著作権法32条1項 「公表された著作物は,引用して利用することができる。この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない」
 

Part1_2_20190624165301thumb1

 

« ブログが本になりました!(パート2) | トップページ

8_社会や人とのかかわりのこと」カテゴリの記事