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2018年4月 1日 (日)

ウソをつくのは犯罪?

 

 ウソをつくのは犯罪ですか?

 


 ウソをつくことは,場合によっては,犯罪として処罰されることがあります。




 裁判所に証人として呼ばれた人が,ウソの証言をするのは,偽証罪(ぎしょうざい)です
【★1】

 ただし,16歳になっていない子どもの証人は,偽証罪には問われません
【★2】


 証人ではなく,裁判の当事者,つまり,

 刑事の裁判で,犯罪をしたと疑われて訴えられている本人(被告人)や,

 民事の裁判で,訴えた人(原告)や,訴えられた人(被告)は
【★3】

 裁判で不利にはなりますが,ウソをついても犯罪にはなりません。





 国会は,法律を作る場所,国権の最高機関です
【★4】

 その国会に,証人として呼ばれた人がウソの証言をするのも,犯罪です
【★5】




 ウソの犯罪や災害を警察・消防に話すのは,軽犯罪法違反です
【★6】

 ウソの犯罪で「この人を処罰してください」とまで警察に言うのは,虚偽告訴罪(きょぎこくそざい)です
【★7】

 ウソの通報でパトカーや消防車・救急車を呼ぶのは,偽計業務妨害罪(ぎけいぎょうむぼうがいざい)です
【★8】



 役所の人にウソをついて,ほんとうの内容ではない戸籍(こせき)や住民票,土地や建物や自動車などの記録,パスポートなどを作らせるのは,公正証書原本不実記載罪(こうせいしょうしょげんぽんふじつきさいざい)です
【★9】




 「あいつは~~だ」「あいつは~~なことをした」などと言いふらしたり,ネット上に書いたりして,からかうのは,名誉毀損罪(めいよきそんざい)です
【★10】

 その内容がほんとうであっても犯罪になることはありますが
【★11】

 名誉毀損のケースの多くは,ウソが言いふらされています。



 ウソを言いふらすことで,人の信用を傷つけるのは信用毀損罪(しんようきそんざい),他の人の仕事をじゃまするのは業務妨害罪(ぎょうむぼうがいざい)です【★12】



 人をだましてお金や物を手に入れるのは,詐欺罪(さぎざい)です
【★13】



 他の人になりすまして文書を作って使うのは,文書偽造罪(しぶんしょぎぞうざい)・行使罪(こうしざい)
【★14】

 ウソのお金を作って使うのは,通貨偽造罪(つうかぎぞうざい)・行使罪
【★15】

 他の人の犯罪に関してウソの証拠を作るのは,証拠偽造罪(しょうこぎぞうざい)です
【★16】



 お医者さんが,役所などに出す診断書にウソを書くと,虚偽診断書作成罪(きょぎしんだんしょさくせいざい)です【★17】



 そして,公務員がウソの内容の文書を作ったり,内容を作り替えたりするのは,虚偽公文書作成罪(きょぎこうぶんしょさくせいざい)です
【★18】




 重要なものだけでも,上に書いたようなものがありますし,

 その他にも,ウソが犯罪として処罰される法律は,たくさんあります。



 また,ウソをついたことが犯罪にはならなくても,

 損害賠償(そんがいばいしょう)という民事の責任を負い,お金を払わなければならなくなるマイナスも,ありえます。




 この社会は,お互(たが)いに信用しあうことで成り立っています。

 たとえ,処罰されず,損害賠償を払わなくても済んだとしても,

 ウソをつく人は,まわりからの信用を失います。

 社会の中で生きていくことを,自分で難しくしてしまうのです。




 もちろん,いつも必ずほんとうのことしか言ってはいけない,というわけではありません。

 4月1日のエイプリルフールにつくウソは,世の中を明るくしますし,

 幼い子どもにサンタクロースからのプレゼントがあるのも,素敵なことだと思います。



 病気,セクシュアリティ,前科前歴,自分のルーツや家族のことなど,

 社会に差別や偏見(へんけん)があるために,ほんとうのことをまわりに話せず,

 事実とちがうことを話さなければいけないこともあります。

 それは,さっき挙げた犯罪のような,他の人や社会を傷つけるウソとは,ちがいます。

 むしろ,事実とちがうことを話さなければならない本人が,一番傷ついています。

 ほんとうのことを話せないようにさせている,差別・偏見のある社会のがわの問題です。

 私は,そうやって苦しんでいる人たちから,「ウソとして犯罪にならないか」という法律相談を受けることも,多くあります。





 もしも,失敗や悪いことをしてしまった時には,

 ウソをついてごまかすのではなく,早いうちに正直に話しましょう。

 一度ウソをつくと,そのウソにつじつまを合わせるために,さらにウソを重ねなければなりません。

 そうしてウソを重ねていくと,かならずどこかで,つじつまが合わなくなります。

 そして,ウソをつき続けていたことがばれて,信用を大きく失います。

 私は弁護士として,そうやってウソをつき続けて信用をなくした大人たちを,たくさん見ています。



 その逆に,犯罪をしていないのに,「やっただろう」と疑われているとき,

 とても厳しい取り調べにたえられず,「やりました」とウソの自白をさせられてしまう危険があります。

 犯罪をしてしまっている場合でも,実際にしたこと以上にひどいことをしたかのように自白させられてしまう危険もあります。

 そういう危険から身を守るために,答えたくない質問には答えないままでいることができます。

 それを,「黙秘権(もくひけん)」と言います(別の記事でくわしく書きます)
【★19】




 大人はよく,子どもたちに「ウソをついてはいけない」,と言いますね。



 でも,子どもが一生懸命ほんとうの話をしているのに,大人が「それはウソだ」と決めつけて信じないということが,多く起きています。

 そして,「ウソをつくな」と言っているその大人が,子どもに都合よくウソをついている,ということも,よくあります。

 さらには,子どもには「ウソをつくな」と偉そうに言う大人が,その人よりも力のあるものに向かっては「ウソをつくな」と声を上げないで黙っている,ということさえあります。




 私はそれらを,大人の一人として,とても恥ずかしく思っています。




 あなたには,

 お互いを信用しあえる社会のしっかりしたメンバーの一人として,

 誠実に生きる大人になってほしい,

 私はそう強く願っています。

 

 

【★1】 刑法169条 「法律により宣誓(せんせい)した証人が虚偽(きょぎ)の陳述(ちんじゅつ)をしたときは,3月以上10年以下の懲役(ちょうえき)に処(しょ)する」
【★2】 偽証罪に問われるのは,「ウソを言いません」と宣誓した証人ですが,16歳未満の証人には宣誓をさせることができないことになっているので,偽証罪に問われることもありません。
 民事訴訟法201条2項 「16歳未満の者又は宣誓の趣旨(しゅし)を理解することができない者を証人として尋問(じんもん)する場合には,宣誓をさせることができない」
【★3】 民事の裁判では,当事者(原告や被告)は,偽証罪には問われませんが,過料(かりょう)という行政罰があります(刑事罰ではありません)。
 民事訴訟法209条1項 「宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは,裁判所は,決定で,10万円以下の過料に処する」
【★4】 憲法41条 「国会は,国権の最高機関であって,国の唯一の立法機関である」
【★5】 議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律6条1項 「この法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは,3月以上10年以下の懲役に処する」
【★6】 軽犯罪法1条 「左の各号の一に該当する者は,これを拘留(こうりゅう)又は科料(かりょう)に処する」 「一六 虚構(きょこう)の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者」
【★7】 刑法172条 「人に刑事又は懲戒(ちょうかい)の処分を受けさせる目的で,虚偽の告訴,告発その他の申告(しんこく)をした者は,3月以上10年以下の懲役に処する」
【★8】 刑法233条 「…偽計(ぎけい)を用いて,人の…業務を妨害した者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」
【★9】 刑法157条1項 「公務員に対し虚偽の申立てをして,登記簿,戸籍簿その他の権利若(も)しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ,又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」
 同条2項 「公務員に対し虚偽の申立てをして,免状,鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は,1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」
【★10】 刑法230条1項 「公然と事実を摘示(てきじ)し,人の名誉を毀損した者は,その事実の有無にかかわらず,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」
【★11】 内容がほんとうであれば,名誉毀損罪として罰せられない場合もあります。
 刑法230条2項 「死者の名誉を毀損した者は,虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ,罰しない」
 刑法230条の2第1項 「前条第1項の行為(こうい)が公共の利害に関する事実に係(かか)り,かつ,その目的が専(もっぱ)ら公益を図ることにあったと認める場合には,事実の真否(しんぴ)を判断し,真実であることの証明があったときは,これを罰しない」
 同条2項 「前項の規定の適用については,公訴が提起されるに至(いた)っていない人の犯罪行為に関する事実は,公共の利害に関する事実とみなす」
 同条3項 「前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には,事実の真否を判断し,真実であることの証明があったときは,これを罰しない」
【★12】 刑法233条 「虚偽の風説(ふうせつ)を流布(るふ)し,又は偽計(ぎけい)を用いて,人の信用を毀損し,又はその業務を妨害した者は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」
【★13】 刑法246条1項 「人を欺(あざむ)いて財物を交付させた者は,10年以下の懲役に処する」
 同条2項 「前項の方法により,財産上不法の利益を得(え),又(また)は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする」
【★14】 文書偽造罪・行使罪は,公文書と私文書とで条文がちがい,公文書の偽造・行使のほうが重く処罰されます。
 刑法155条1項 「行使の目的で,公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し,又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は,1年以上10年以下の懲役に処する」
 同条2項 「公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も,前項と同様とする」
 同条3項 「前二項に規定するもののほか,公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し,又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は,3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」
 刑法158条1項 「第154条から前条までの文書若しくは図画を行使し…た者は,その文書若しくは図画を偽造し,若しくは変造し,虚偽の文書若しくは図画を作成し…た者と同一の刑に処する」
 刑法159条1項 「行使の目的で,他人の印章若しくは署名を使用して権利,義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し,又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利,義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は,3月以上5年以下の懲役に処する」
 同条2項 「他人が押印し又は署名した権利,義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も,前項と同様とする」
 同条3項 「前2項に規定するもののほか,権利,義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し,又は変造した者は,1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」
 刑法161条1項 「前2条の文書又は図画を行使した者は,その文書若しくは図画を偽造し,若しくは変造し,又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する」
【★15】 刑法148条1項 「行使の目的で,通用する貨幣,紙幣又は銀行券を偽造し,又は変造した者は,無期又は3年以上の懲役に処する」
 同条2項 「偽造又は変造の貨幣,紙幣又は銀行券を行使し,又は行使の目的で人に交付し,若しくは輸入した者も,前項と同様とする」
【★16】 刑法104条 「他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し,偽造し,若しくは変造し,又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」
【★17】 刑法160条 「医師が公務所に提出すべき診断書,検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは,3年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する」
【★18】 刑法156条 「公務員が,その職務に関し,行使の目的で,虚偽の文書若しくは図画を作成し,又は文書若しくは図画を変造したときは,印章又は署名の有無により区別して,前2条の例による。」
【★19】 憲法38条1項 「何人(なんぴと)も,自己に不利益な供述を強要されない」
 刑事訴訟法198条2項 「前項の取調に際しては,被疑者に対し,あらかじめ,自己の意思に反して供述をする必要がない旨(むね)を告げなければならない」
 

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