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2018年2月

2018年2月 1日 (木)

インフルエンザで登校NGなのは法律で決まってる?

 

 先週の木曜日から熱っぽくなって,次の日に病院に行ったら,インフルエンザだと言われました。薬のおかげで,熱は昨日(日曜日)の朝には下がりました。明日(火曜日)にどうしても参加したい学校の行事があるので,今日病院に行ったら,お医者さんが「まだ明日は学校に行ってはダメ。法律で決まってるよ」と言って,許してくれません。法律で決まってるって,ほんとうですか?

 

 

 インフルエンザになった子どもを,校長先生が「来てはダメ」と止めることができる。

 学校保健安全法という法律に,そう書かれています。


 学校に来てはいけない日数も,きちんと決められています
【★1~3】



 むかしは,「熱が下がってから2日経つまで登校してはダメ,3日目から登校OK」という決まりでした。

 「熱が下がって2日経てば,その子の体の中にいるウイルスの数も減っているから,登校しても他の子にうつらない」,というのが,その理由でした。




 でも,最近は薬が良くなって,熱がすぐ下がるようになりました。

 熱が下がっても,体の中にまだウイルスが残っている,ということがありえます。




 なので,6年前の2012年(平成24年)に,決まりが変わりました。

 
「熱が下がってから2日経つまで登校してはダメ」

 という1つめのルールに,

 「インフルエンザにかかってから5日経つまで登校してはダメ」

 という2つめのルールが加わりました。

 両方をクリアしていないと,登校が認められません。



 (1つめのルールは,保育園や幼稚園の園児の場合,熱が下がってから「3日」が経つまで登園してはダメです)



 日にちの数え方は,法律で決まっています。

 最初の日をカウントしないで,次の日を1日目として数えます
【★4】

(「誕生日が4月1日だと学年が早生まれなのはなぜ?」の記事を読んでみてください)




 あなたは,昨日の朝に熱が下がったのですね。

 そうすると,今日を1日目として数えますから,

 2日目の明日は,まだ,1つめのルールをクリアしていません。



 また,あなたがインフルエンザにかかった日がはっきりわかりませんが,

 熱っぽくなった木曜日がそうだったとすると,

 次の日の金曜日を1日目として数えますから,

 明日の火曜日はまだ5日目で,2つめのルールもクリアしていません。



 2つのルールは,絶対にクリアしなければダメ,というものではなく,

 その子の病気の状態を見て,お医者さんが「他の子にうつらないだろう」とOKすれば,

 例外的に,早く登校が認められることもあります
【★3】


 でも,きっとあなたの場合は,

 2つのルールをどちらもクリアしていないので,

 お医者さんが例外として認めなかったのだろうと思います。





 とても楽しみにしていた行事に参加できないのは,本当にくやしいことですよね。




 あなたが学校に行くこと。

 あなたが学校で学び,好きなことに取り組めること。

 法律はそれらを,とてもだいじにしています。




 そして,それと同じように,

 他の子どもたちが健康でいられること,

 他の子どもたちが学校で学び,好きなことに取り組めることも,

 法律はだいじにしています。




 まだ完全に治っていないあなたが,学校に行ってしまうことで,

 他の子たちがインフルエンザになってしまうかもしれない,

 そして,うつされた子が,学校に行けなくなったり,遊べなくなったりするかもしれない。

 そのことを,じっくり想像してみてください。




 法律は,

 あなたのことと,他の子どもたちのこと,

 だいじなその両方のバランスを取るように,作られています。




 行事に参加できないのはとても残念ですが,

 ぜひ,明日もゆっくりと,体を休めてください。

 そして,今後またこういうくやしい思いをすることのないように,

 これからは,うがい・手洗いなどの予防を,しっかりするようにしてください。






 インフルエンザの予防接種は,する人と,しない人がいますね。

 予防接種を受けるかどうかは,自分自身で(小さな子どもは親が)決めています。





 いろんな病気が流行していたむかしは,

 予防接種を受けることが,法律で義務づけられていました。

 予防接種を受けなければ犯罪として処罰される,とまで,法律に書かれていました
【★5】



 
むかしの法律は,

 「一人ひとりを病気から守るため」ではなく,

 社会に病気が広がらないため,「社会を守るため」に作られていました
【★6】【★7】



 1948年(昭和23年)に作られた法律には,

 「インフルエンザの予防接種を受ける義務がある」と書かれていました
【★8】


 でも,インフルエンザの予防接種のやり方を,国はきちんと決めていませんでした。


 なので,細かい話ですが,じっさいの予防接種は,

 法律の義務としてではなく,「役所が皆さんに勧めているものです」というかたちをとって,行われていました
【★9~11】


 ただ,義務にしても,勧められているにしても,

 人々から見れば,「国から言われて予防接種を受ける」ことには,変わりありませんでした。




 ところが,そうやって,

 法律で義務づけられり,国から言われたりして,予防接種をしたことで,

 副作用のために,亡くなってしまう人や,重い障害が残ってしまう人がいました。




 「社会を守るため」の予防接種で,

 個人が命や健康を失うという犠牲(ぎせい)を負わなければならないのか。



 そのことが,とても大きな社会問題になったのです。





 1976年(昭和51年),

 「予防接種は義務だけれど,予防接種をしなくても処罰しない」

 と,法律が変わりました
【★12】



 それでも,インフルエンザの予防接種については,

 「誰がいつ受けなければいけないか」を都道府県の役所が決めていい,

 と法律に書かれたので,

 多くの地域の保育園・幼稚園・小中学校で,集団での予防接種が行われてきました
【★13】




 そして,被害を受けた子どもや家族たちが,国などを相手に裁判で闘ってきました
【★14】



 1994年(平成6年),

 予防接種そのものは,「受けなければいけない」義務ではなくなり,

 「受けるように努力しましょう」というものになりました
【★15】



 そして,特にインフルエンザの予防接種は,

 個人が,病気にかかるのを防いだり,病気が重くなったりするのを防いだりすることに効果はあっても,

 社会全体の流行まで止められるわけではないので,

 法律は,「受けるように努力しましょう」とも言わずに,

 「それぞれが自分自身で(小さな子は親が)判断しましょう」,ということになったのです
【★16】【★17】




 インフルエンザにかかった人が学校に行けない法律も,

 予防接種の法律も,

 「一人ひとりと社会との関係をどう考えるか」という,大事なことと,つながっています。





 人にうつることがある病気,感染症は,

 人々がとても不安になって,

 社会を守ることを重視しようとするあまり,

 個人の命や人生が犠牲になってきました。




 感染症がどんな病気なのかを,きちんと学んで,正しく予防すること。

 不安や誤解から,感染した人に偏見(へんけん)を持ったり,差別をしたりしないこと。

 それが,私たち一人ひとりにとって,絶対に必要なことです。




 特に,ハンセン病やHIVは,

 それらに感染した人々に対して,社会が,とてもひどい差別を重ねてきました
【★17~★20】

 (HIVについては,「性病をうつされた…相手を訴えたい」の記事も読んでみてください)

 今の感染症に関する法律は,その反省の上に作られています
【★21】




 「法律がそうなっているから」というだけでなく,

 どうして法律がそうなっているのか,

 一人ひとりを大切にする社会のしくみがどうあるべきかを,

 今回のインフルエンザをきっかけに,あなたにもじっくり考えてみてほしいと思っています。

 

 

【★1】 学校保健安全法19条 「校長は,感染症にかかっており,かかっている疑いがあり,又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは,政令で定めるところにより,出席を停止させることができる」
【★2】 学校保健安全法施行令6条1項 「校長は,法第19条の規定により出席を停止させようとするときは,その理由及び期間を明らかにして,幼児,児童又は生徒(高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。以下同じ。)の生徒を除く。)にあってはその保護者に,高等学校の生徒又は学生にあっては当該生徒又は学生にこれを指示しなければならない」
 同条2項 「出席停止の期間は,感染症の種類等に応じて,文部科学省令で定める基準による」
【★3】 学校保健安全規則19条 「令第6条第2項の出席停止の期間の基準は,…次のとおりとする。
(略)
 二 第二種の感染症…にかかった者については,次の期間。ただし,病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは,この限りでない。
 イ インフルエンザ…にあっては,発症した後5日を経過し,かつ,解熱(げねつ)した後2日(幼児にあっては,3日)を経過するまで」
【★4】 初日不算入の原則と言います。ただし,初日が午前0時からスタートするときは,初日からカウントします。
 民法140条 「日,週,月又は年によって期間を定めたときは,期間の初日は,算入しない。ただし,その期間が午前零(れい)時から始まるときは,この限りでない。」
【★5】 「予防接種法は,…当初は相当に厳しい罰則を設けていた。同法26条は,当初,予防接種を受けない者またはその保護者,保護者が予防接種を受けさせていないときは児童福祉施設の長等でその保護者に対して義務履行を指示しなかった者…は,3000円以下の罰金に処すると規定していた」(西埜章「予防接種と法」40頁)
 ただし,実際に処罰された事例は把握(はあく)されていません。
 「法的強制が罰則によって担保(たんぽ)されているとはいっても,現実に罰則が適用された事例があるか否(いな)かは定かではない。改正前においてさえ,『この法律ほど罰則が完全に無視されているのも珍らしい』といわれていたのである」(西埜章「予防接種と法」41頁)
【★6】 「予防接種法の特色は,多数の疾病について義務接種の制度を採用した点にあるが,その目的は,個人を伝染病から防衛しようとすること(個人防衛)よりも,社会集団内に伝染病が伝播(でんぱ)拡大するのを予防すること(集団防衛)にあったものといってよい」(西埜章「予防接種と法」37頁)
【★7】 東京高等裁判所平成4年12月18日判決(判例時報1445号3頁)「昭和23年に制定された法は,予防接種を法律上の義務として広汎(こうはん)に実施することにより伝染病の予防を図ろうとするものであって,国家又は地域社会において一定割合以上の住民が予防接種を受けておけば,伝染病の発生及びまん延の予防上大きな効果があることに着目して,主として社会防衛の見地から国民に対して接種を義務付けているものである。法1条において,『伝染の虞がある疾病の発生及びまん延を予防するために,予防接種を行い,公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする。』とあるのは,この趣旨である。また,…ポリオ生ワクチン,インフルエンザワクチン及び日本脳炎ワクチンについては,ある時期法律の根拠によらず,行政指導の形で国民に接種を勧奨(かんしょう)し,任意に接種を受けてもらういわゆる勧奨接種が実施されたが,それも同じく社会防衛,集団防衛の目的を有していたものである(右事実は当事者間に争いがない。)」
【★8】 「1948(昭和23)年制定当初の予防接種法は,1条で『この法律は,伝染の虞(おそれ)がある疾病(しっぺい)の発生及びまん延を予防するために,予防接種を行い,公衆衛生の向上及び増進に寄与(きよ)することを目的とする』と規定し,2条で予防接種の定義・対象疾病の種類・保護者の定義について規定し(…痘そう・ジフテリア・腸チフス・パラチフス・百日せき・急性灰白髄炎・発しんチフス・コレラ・ペスト・インフルエンザ・ワイル病〔2項〕…),1条の目的を達成するための手段として予防接種の強制制度を定めた」(竹中勲「予防接種強制制度の合憲性と予防接種健康被害に対する憲法上の救済権」8頁)
【★9】 「我が国におきまして,予防接種法が制定されたのは昭和23年でございますけれども,当初の制定された時点において,対象疾患としてインフルエンザが項目として上がっていたところでございます。ただ,当時においては,インフルエンザは法律上の対象疾患として規定されておりましたけれども,具体的な実施事項は定められていないということで,半ば空規定のような形になっていたわけでございます。その後20年代あるいは30年代に入りまして,通知に基づいて予防接種の勧奨が行われてきたところでございます。昭和37年には『インフルエンザ特別対策実施要領』というのが,当時の局長通知で定められておりますけれども,小学生,中学生,幼稚園及び保育所の児童に対して勧奨が行われてきたところでございます。なお,昭和51年の法改正までは,法律に基づかない行政指導という形で勧奨接種としてインフルエンザの予防接種が実施されてきたところでございます」(平成17年2月2日,厚生労働省「予防接種に関する検討会」第5回議事録)
【★10】 東京高等裁判所平成4年12月18日判決(判例時報1445号3頁)「予防接種の中には,法に基づき国民の義務として実施されているもののほか,特別の法的根拠に基づかない行政指導として一般国民に接種を受けることを勧奨し,これを希望する者に対して接種するものがあった(インフルエンザ,日本脳炎,急性灰白髄炎)。具体的には,国が地方自治体に年ごとに通知を発して一定の予防接種を勧奨するよう行政指導し,地方自治体がそれに基(もと)づき住民に予防接種を勧奨し,地方自治体の実施する接種を受けさせるというものである。これらについても,その各時点における予防接種施行心得,予防接種実施規則ないし予防接種実施要領に準じて実施することの指示がされていた」
【★11】 「勧奨接種による事故については,行政指導の違法性が問題になる場合もある。インフルエンザの予防接種は,昭和51年の予防接種法の改正前は,地方公共団体により勧奨接種として実施されていたものであるが,この勧奨接種は厚生省公衆衛生局長等による都道府県知事宛の通達に基づくものであり,いわば厚生大臣の行政指導によるものであった。従って,このような行政指導による予防接種を受けた結果,その副反応により接種児童が死亡した事件においては,行政指導の違法性が争われることになるが,行政指導もまた公権力の行使に該当するから,違法性の判断基準については前述したところがほぼ当てはまることになる」(西埜章「予防接種と法」102頁)
【★12】 ただし,緊急の場合の臨時の予防接種については,罰則が残りました。
 「第10次改正において罰則の規定は全面改正され…緊急の場合の臨時の予防接種についてだけ規定し,定期の予防接種及び一般的な臨時の予防接種は罰則をもって強制しないことになったのである。このような大幅な改正の理由としては,①法制定当時と比べて公衆衛生の向上が著しいこと,②予防接種の義務づけに対する考え方が変化したこと,③国民に公衆衛生思想が普及していること,などが挙げられている」(西埜章「予防接種と法」40頁)
【★13】 「昭和51年に予防接種法の改正がございました。それによりまして,インフルエンザが『一般的な臨時の予防接種』という位置付けとなっております。この一般的な臨時の予防接種,現在はそういうカテゴリーはございませんけれども,都道府県知事が予防接種を受けるべき者の範囲や期日を指定する位置付けの対象疾病カテゴリーでございます。多くの自治体では保育所,幼稚園あるいは小学生,中学生といった児童・生徒を対象として行われていたところでございます」(平成17年2月2日,厚生労働省「予防接種に関する検討会」第5回議事録)
【★14】 インフルエンザの予防接種に関する裁判例は下記の通り(西埜章「予防接種と法」11頁を参考にして作成)。
 東京地裁昭和48年4月25日判決,東京高裁昭和49年9月26日判決,最高裁第一小法廷昭和51年9月30日判決・民集30巻8号816頁(死亡事案,被告は東京都。差戻審で和解)
 東京地裁昭和52年1月31日判決・判例時報839号21頁(脳性麻痺,7年後に死亡した事案。被告は国・市・担当医師。控訴審で和解)
 東京地裁昭和59年5月18日判決・判例時報1118号28頁,東京高裁平成4年12月18日判決・判例時報1445号3頁(死亡・後遺障害事案。被告は国)
 仙台地裁昭和60年3月12日判決・判例時報1149号37頁,仙台高裁昭和63年2月23日判決・判例時報1267号23頁(後遺障害事案,被告は市長)
 名古屋地裁昭和60年10月31日判決・判例時報1175号3頁(死亡・後遺障害事案。被告は国。控訴審で和解)
 東京地裁昭和61年3月14日判決・判例時報1215号73頁,東京高裁平成4年3月30日判決・判例タイムズ801号120頁(死亡事案。被告は町・国)
 福岡地裁平成元年4月18日判決・判例時報1313号17頁,福岡高裁平成5年8月10日判決・判例時報1471号31頁(死亡・後遺障害事案。被告は国)
 長野地裁平成2年5月24日判決・判例タイムズ725号249頁(後遺障害事案。被告は市長)
【★15】 予防接種法9条1項 「第5条第1項の規定による予防接種であってA類疾病に係るもの又は第6条第1項の規定による予防接種の対象者は,定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種(同条第3項に係るものを除く。)を受けるよう努めなければならない」
 同条2項 「前項の対象者が16歳未満の者又は成年被後見人であるときは,その保護者は,その者に定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種(第6条3項に係るものを除く。)を受けさせるため必要な措置(そち)を講(こう)ずるよう努めなければならない」
【★16】 平成5年12月14日公衆衛生審議会「今後の予防接種制度の在り方について」 「現在,一般的な臨時接種の対象となっているインフルエンザについては,当審議会において,『インフルエンザ予防接種の当面のあり方について』(昭和62年8月6日)として,社会全体の流行を抑止(よくし)することを判断できるほどの研究データは十分に存在しない旨(むね)の意見をすでに提出しており,また,流行するウイルスの型が捉(とら)えがたく,このためワクチンの構成成分の決定が困難であるという特殊性を有すること等にかんがみ,予防接種制度の対象から除外することが適当である。しかし,インフルエンザの予防接種には,個人の発病防止効果や重症化防止効果が認められていることから,今後,各個人が,かかりつけ医と相談しながら,接種を受けることが望ましい」
【★17】 もっとも,その後,高齢の人にはインフルエンザの予防接種をしたほうがいい,ということから,2001年(平成13年),高齢の方のインフルエンザの予防接種について法律に書き加えられました。しかしそれでも,インフルエンザの予防接種を受けることは,「努力規定」にはなっていません。
 予防接種法2条1項 「この法律において『予防接種』とは,疾病に対して免疫(めんえき)の効果を得させるため,疾病の予防に有効であることが確認されているワクチンを,人体に注射し,又は接種することをいう」
 同条3項 「この法律において『B類疾病』とは,次に掲(かか)げる疾病をいう。 一 インフルエンザ (略)」
 同法5条1項 「市町村長は,A類疾病及びB類疾病のうち政令で定めるものについて,当該市町村の区域内に居住する者であって政令で定めるものに対し,保健所長…の指示を受け期日又は期間を指定して,予防接種を行わなければならない」
 予防接種法施行令1条の2 「法第5条第1項の政令で定める疾病は,次の表の上欄に掲げる疾病とし,同項…の政令で定める者は,同表の上欄に掲げる疾病ごとにそれぞれ同表の下欄に掲げる者…とする。 (略) (上欄) インフルエンザ (下欄) 一 65歳以上の者 二 60歳以上65歳未満の者であって,心臓,腎臓若(も)しくは呼吸器の機能又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有するものとして厚生労働省令で定めるもの」
 予防接種法9条1項 「第5条第1項の規定による予防接種であってA類疾病に係るもの又は第6条第1項の規定による予防接種の対象者は,…予防接種…を受けるよう努めなければならない」
 「現行のB類疾病であるインフルエンザに係る予防接種については,平成13年改正時において,集団予防の効果が乏しいことから,努力規定を設けないこととし,市町村による接種の実施,公費による費用支弁,健康被害救済制度の対象としてのB類疾病に位置づけたが,接種の有効性の根拠が明確でないこと等から,国会において修正がなされ,当分の間,65歳以上の者及び60歳以上65歳未満の者であって,心臓,腎臓若しくは呼吸器の機能又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有するものとして厚生労働省令で定めるものに限ることとした」(厚生労働省健康局結核感染症課「逐条解説予防接種法」76頁)
【★18】 政府広報オンライン「HIV・ハンセン病に対する偏見・差別をなくそう」(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201108/3.html
 国立ハンセン病資料館キッズコーナー(http://www.hansen-dis.jp/kids/index.html
【★19】 熊本地方裁判所平成13年5月11日判決(判例時報1748号30頁)「厚生省は,新法の下で,ハンセン病患者の隔離政策を遂行してきたものであるが,いうまでもなく,患者の隔離(かくり)は,患者に対し,継続的で極めて重大な人権の制限を強いるものであるから,すべての個人に対し侵すことのできない永久の権利として基本的人権を保障し,これを公共の福祉に反しない限り国政の上で最大限に尊重することを要求する現憲法の下において,その実施をするに当たっては,最大限の慎重さをもって臨むべきであり,少なくとも,ハンセン病予防という公衆衛生上の見地からの必要性…を認め得る限度で許されるべきものである。新法6条1項が,伝染させるおそれがある患者について,ハンセン病予防上必要があると認められる場合に限って,入所勧奨を行うことができるとしているのも,その趣旨を含むものと解されるところである。また,右の隔離の必要性の判断は,医学的知見やハンセン病の蔓延(まんえん)状況の変化等によって異なり得るものであるから,その時々の最新の医学的知見に基づき,その時点までの蔓延状況,個々の患者の伝染のおそれの強弱等を考慮しつつ,隔離のもたらす人権の制限の重大性に配意して,十分に慎重になされるべきであり,もちろん,患者に伝染のおそれがあることのみによって隔離の必要性が肯定されるものではない」
「遅くとも昭和35年以降においては,すべての入所者及びハンセン病患者について隔離の必要性が失われたというべきであるから,厚生省としては,その時点において,新法の改廃(かいはい)に向けた諸手続を進めることを含む隔離政策の抜本的な変換をする必要があったというべきである。そして,厚生省としては,少なくとも,すべての入所者に対し,自由に退所できることを明らかにする相当な措置を採るべきであった。のみならず,ハンセン病の治療が受けられる療養所以外の医療機関が極めて限られており,特に,入院治療が可能であったのは京都大学だけという医療体制の下で,入院治療を必要とする患者は,事実上,療養所に入所せざるを得ず,また,療養所にとどまらざるを得ない状況に置かれていたのであるが,これは,抗ハンセン病薬が保険診療で正規に使用できる医薬品に含まれていなかったことなどの制度的欠陥によるところが大きかったのであるから,厚生省としては,このような療養所外でのハンセン病医療を妨(さまた)げる制度的欠陥を取り除くための相当な措置を採るべきであった。さらに,従前のハンセン病政策が,新法の存在ともあいまって,ハンセン病患者及び元患者に対する差別・偏見の作出(さくしゅつ)・助長(じょちょう)に大きな役割を果たしたことは,(略)のとおりであり,このような先行的な事実関係の下で,社会に存在する差別・偏見がハンセン病患者及び元患者に多大な苦痛を与え続け,入所者の社会復帰を妨げる大きな要因にもなっていること,また,その差別・偏見は,伝染のおそれがある患者を隔離するという政策を標榜(ひょうぼう)し続ける以上,根本的には解消されないものであることにかんがみれば,厚生省としては,入所者を自由に退所させても公衆衛生上問題とならないことを社会一般に認識可能な形で明らかにするなど,社会内の差別・偏見を除去するための相当な措置を採るべきであったというべきである。この点,厚生省は,特に,昭和50年代以降,非公式的にではあるが,外出制限規定を弾力的に運用するなど,様々な点で隔離による人権制限を緩和させていったことは一応評価できるが,新法廃止まで,新法の改廃に向けた諸手続を進めることを含む隔離政策の抜本的な変換を行ったものとは評価できない。また,厚生省は,新法廃止まで,すべての入所者に対し,自由に退所できることを明らかにするなどしたことはなく,療養所外でのハンセン病医療を妨げる制度的欠陥を取り除くことなく放置し,さらには,社会一般に認識可能な形でハンセン病患者の隔離を行わないことを明らかにするなどしなかったのであるから,前記の相当な措置等を採ったとも評価し得ない。伝染病の伝ぱ及び発生の防止等を所管事務とする厚生省を統括管理する地位にある厚生大臣は,厚生省が右のような隔離政策の抜本的な変換やそのために必要となる相当な措置を採ることなく,入所者の入所状態を漫然と放置し,新法6条,15条の下で隔離を継続させたこと,また,ハンセン病が恐ろしい伝染病でありハンセン病患者は隔離されるべき危険な存在であるとの社会認識を放置したことにつき,法的責任を負うものというべきであり,厚生大臣の公権力の行使たる職務行為に国家賠償法上の違法性があると認めるのが相当である。そして,厚生大臣は,昭和35年当時,…隔離の必要性を判断するのに必要な医学的知見・情報を十分に得ていたか,あるいは得ることが容易であったと認められ,また,ハンセン病患者又は元患者に対する差別・偏見の状況についても,容易に把握可能であったというべきであるから,厚生大臣に過失があることを優に認めることができる」
 「新法の隔離規定は,新法制定当時から既に,ハンセン病予防上の必要を超えて過度な人権の制限を課すものであり,公共の福祉による合理的な制限を逸脱(いつだつ)していたというべきであり,遅くとも昭和35年には,その違憲性が明白になっていた…新法の隔離規定が存続することによる人権被害の重大性とこれに対する司法的救済の必要性にかんがみれば,他にはおよそ想定し難いような極めて特殊で例外的な場合として,遅くとも昭和40年以降に新法の隔離規定を改廃しなかった国会議員の立法上の不作為(ふさくい)につき,国家賠償法上の違法性を認めるのが相当である。そして,…新法の隔離規定の違憲性を判断する前提として認定した事実関係については,国会議員が調査すれば容易に知ることができたものであり,また,昭和38年ころには,全患協による新法改正運動が行われ,国会議員や厚生省に対する陳情等の働き掛けも盛んに行われていたことなどからすれば,国会議員には過失が認められるというべきである」
【★20】 ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律前文 「ハンセン病の患者は,これまで,偏見と差別の中で多大の苦痛と苦難を強いられてきた。我が国においては,昭和28年制定の『らい予防法』においても引き続きハンセン病の患者に対する隔離政策がとられ,加えて,昭和30年代に至ってハンセン病に対するそれまでの認識の誤りが明白となったにもかかわらず,なお,依然としてハンセン病に対する誤った認識が改められることなく,隔離政策の変更も行われることなく,ハンセン病の患者であった者等にいたずらに耐え難い苦痛と苦難を継続せしめるままに経過し,ようやく『らい予防法の廃止に関する法律』が施行されたのは平成8年であった。我らは,これらの悲惨な事実を悔悟(かいご)と反省の念を込めて深刻に受け止め,深くおわびするとともに,ハンセン病の患者であった者等に対するいわれのない偏見を根絶する決意を新たにするものである。ここに,ハンセン病の患者であった者等のいやし難(がた)い心身の傷跡の回復と今後の生活の平穏(へいおん)に資(し)することを希求(ききゅう)して,ハンセン病療養所入所者等がこれまでに被った精神的苦痛を慰謝するとともに,ハンセン病の患者であった者等の名誉の回復及び福祉の増進を図り,あわせて,死没者に対する追悼(ついとう)の意を表するため,この法律を制定する」
【★21】 HIV・エイズについては,1989年(平成元年)に「エイズ予防法」(後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」が作られましたが,「社会を守る」ことを重視し,HIVに感染した人,エイズを発症している人をないがしろにする,問題のある法律でした(諏訪の森法律事務所・中川重徳弁護士「エイズ予防法を読む」(http://www.ne.jp/asahi/law/suwanomori/ronkou/002.html),山田卓生・大井玄・根岸昌功編「エイズに学ぶ」日本評論社)。エイズ予防法は,【★22】の法律ができた1999年(平成11年)に廃止されました。
【★22】 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律前文 「人類は,これまで,疾病,とりわけ感染症により,多大の苦難を経験してきた。ペスト,痘そう,コレラ等の感染症の流行は,時には文明を存亡の危機に追いやり,感染症を根絶することは,正(まさ)に人類の悲願と言えるものである。医学医療の進歩や衛生水準の著しい向上により,多くの感染症が克服されてきたが,新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により,また,国際交流の進展等に伴(ともな)い,感染症は,新たな形で,今なお人類に脅威を与えている。一方,我が国においては,過去にハンセン病,後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め,これを教訓として今後に生かすことが必要である。このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ,感染症の患者等の人権を尊重しつつ,これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し,感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。ここに,このような視点に立って,これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため,この法律を制定する」

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