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2014年8月

2014年8月 1日 (金)

後見人の弁護士がつくってどういうこと?

 

 中学1年生です。お父さんとおばあちゃんの3人で暮らしてたんですが,この前,お父さんが事故で亡くなりました。今,おばあちゃんと2人で生活してます。最近,裁判所の人との面接があって,「おばあちゃんと,弁護士の人が,あなたの後見人(こうけんにん)になります」って言われたんですが,説明がよくわかりませんでした。弁護士の後見人がつくって,どういうことですか。

 


 「後見人」というのは,文字どおり,あなたを後ろから見守ってくれる,親代わりの人のことです。


 親が亡くなってしまった。

 親が行方不明になってしまった。

 裁判所が「親としてふさわしくない」と判断した
【★1】


 そんないろんな事情で,子どもに親がいなくなってしまうと,

 子どもの生活を見たり,子どもの財産をきちんと見る人が,いなくなってしまいます。



 だから,そういう時に,家庭裁判所が,親代わりの人を選びます。

 それが,「未成年後見人」です
【★2~4】



 「後見」という言葉は,明治時代に今の民法という法律ができるよりもずっと前から,日本にありました。

 室町時代に観阿弥(かんあみ)・世阿弥(ぜあみ)が始めた,「能」という伝統的な舞いがあります。

 その舞台の奥のほうで,役者が舞うのをしっかりと見守っている人が,「後見」です。

 舞いで役者の服がみだれてきたら,後見の人が,さっと服を整えてくれます。

 もし役者が舞えなくなったときには,後見の人が前に出てきて,本人の代わりに舞います
【★5】


 法律の「後見」も,それと似たような役割をします。

 子ども本人がきちんと生活できているかどうかを,未成年後見人が見守り,サポートします。

 子ども本人では難しい法律的な手続があれば,未成年後見人が,本人に代わってします。




 法律上,20歳で成人したら,自分のことを全部自分でしなければならなくなります
【★6】

 その成人するまでの間,親がいない子どもに,未成年後見人が付いてサポートをすることは,とてもだいじなことです。



 誰が,子どもの未成年後見人になるか。

 それは,家庭裁判所が,いろんなことを考えて,決めています
【★7】


 そして,家庭裁判所は,「未成年後見人がきちんと子どもをサポートしているかどうか」を,きちんとチェックしています【★8】


 つい最近まで,未成年後見人は,たった1人しかなれませんでした【★9】

 未成年後見人は,親族の中から選ばれることが多いのですが,

 たとえば,亡くなった親が残した財産がたくさんあって,その管理が複雑だったりすると,親族の未成年後見人1人では,とても大変です。



 だから,2年前に法律が変わりました【★10】

 1人だけでなく,複数で未成年後見人になることが,認められるようになりました。



 たぶん,あなたの場合,

 「日々の生活のことは,いっしょに暮らしているおばあちゃんが親代わりとしてメインで担当し,

 お父さんが残した財産の管理のことは,法律の専門的な知識が必要だから,弁護士がメインで担当するのがいい」,

 と,裁判官が考えたのだと思います
【★11】

 裁判所が,信頼できる弁護士たちのリストの中から選んできて,

 その弁護士が,あなたのおばあちゃんとタッグを組んで,あなたを支えてゆくのです。



 これまで,弁護士が子どもとかかわる場面といえば,

 犯罪のこと,学校のこと,親子のことなど,

 何らかのトラブルがきっかけとなって出会い,

 そのトラブルの解決のためにかかわる,というのが,ほとんどでした。

 だから,

 弁護士と子どもが話す内容は,そのトラブルにかかわることが中心ですし,

 そのトラブルが解決すれば,弁護士と子どものつきあいも,基本的にはそこで終わってしまいます。


 でも,この未成年後見人としての弁護士とのかかわりは,ちがいます。

 あなたの生活全般について広く弁護士がサポートできますし,

 あなたが成人するまでの,とても長い間,あなたとつきあうことができます。

 ずっとあなたをサポートする,力強い味方の弁護士が,あなたのそばにいます。

 しかも,その弁護士のさらに後ろで,裁判所も,あなたを守っています。



 親を亡くして,とてもつらかったと思います。

 そして,親を亡くしたことで,いままで知らなかった弁護士と,新たに出会うこととなったのも,ほんとうに不思議な縁だと思います。

 その弁護士のサポートをうまく受けながら,ぜひ,自分らしい生き方を見つけていってください。

 

 

【★1】 「親権喪失(そうしつ)」と「親権停止」の手続があります。
民法834条 「父又は母による虐待(ぎゃくたい)又(また)は悪意の遺棄(いき)があるときその他父又は母による親権の行使が著(いちじる)しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは,家庭裁判所は,…その父又は母について,親権喪失の審判をすることができる。ただし,2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは,この限りでない」
民法834条の2第1項 「父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは,家庭裁判所は,…その父又は母について,親権停止の審判をすることができる」
【★2】 民法838条 「後見は,次に掲(かか)げる場合に開始する。
 一  未成年者に対して親権を行う者がないとき,又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
 二  後見開始の審判があったとき。」
 民法839条1項 「未成年者に対して最後に親権を行う者は,遺言(いごん)で,未成年後見人を指定することができる。…」
 民法840条1項 「前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは,家庭裁判所は,未成年被後見人(みせいねんひこうけんにん)又(また)はその親族その他の利害関係人の請求によって,未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも,同様とする。」
 認知症(にんちしょう)などでも,「成年後見」の制度があります。本人に必要なサポートの度合いによって,「後見」「保佐」「補助」というバリエーションがあります(民法7条~18条)。成年後見では,裁判所が「始めます」という「開始の審判」をして,はじめて,サポートをする人(後見人・保佐人・補助人)を誰にするかを選びます。しかし,子どもにつける未成年後見の場合は,親権者がいなければ,当然に後見がスタートすることになっていて(民法838条1号),裁判所は,誰を未成年後見人に選ぶかを決めるだけです。
 大人の場合には,自分のことを自分でするのが基本なので,誰かがサポートに入るのはあくまで例外です。ですから,その例外にあたるのかどうかを,裁判所がきちんと判断する必要があります。ぎゃくに,子どもの場合には,まだ法律的なことを自分ではできないのが基本なので(民法5条),親権者がいなければ,自動的に後見がスタートするのです。
【★3】 民法第857条 「未成年後見人は,第820条から第823条までに規定する事項について,親権を行う者と同一の権利義務を有(ゆう)する。…」
  民法820条 「親権を行う者は,子の利益のために子の監護(かんご)及(およ)び教育をする権利を有し,義務を負う。」
 民法821条 「子は,親権を行う者が指定した場所に,その居所を定めなければならない。」
 民法822条 「親権を行う者は,第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒(ちょうかい)することができる。」
 民法823条1項 「子は,親権を行う者の許可を得なければ,職業を営(いとな)むことができない。」
【★4】 あなたが15歳以上なら,おばあちゃんと養子縁組の届出をして,おばあちゃんが「養親」として法律上の親になることができます。
 民法797条1項 「養子となる者が15歳未満であるときは,その法定代理人が,これに代わって,縁組の承諾(しょうだく)をすることができる」
 これは,逆に言うと,15歳以上ならば,未成年であっても養子縁組をするかどうかは自分で決める,ということです。
 民法818条2項 「子が養子であるときは,養親の親権に服する」
 民法798条 「未成年者を養子とするには,家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし,自己又は配偶者(はいぐうしゃ)の直系卑属(ちょっけいひぞく)を養子とする場合は,この限りでない」(「自己」は自分のこと,「配偶者」は,夫から見た妻,妻から見た夫のこと,「直系卑属」は,子ども・孫・ひ孫・・・のことです。)
 しかし,15歳になっていない子どもが養子縁組をするには,「法定代理人」という人(親や,親代わりの人)が手続きをする必要があります。でも,あなたの場合,お父さんが亡くなったことで,法定代理人がいません。だから,今の時点では養子縁組をすることができなくて,未成年後見人が選ばれることになるのです。
 その後,未成年後見人の判断で,おばあちゃんと養子縁組をすることもありえますし,あなたが15歳になって養子縁組を自分ですることもできます。そうすると,おばあちゃんが親権者になり,未成年後見も,そこで終わります。
【★5】 「the能ドットコム」能楽用語事典「後見」
 http://db2.the-noh.com/jdic/2008/05/post_18.html
【★6】 民法4条 「年齢20歳をもって,成年とする。」
【★7】 民法840条3項 「未成年後見人を選任するには,未成年被後見人の年齢,心身の状態並(なら)びに生活及び財産の状況,未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは,その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無),未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。」
【★8】 民法863条1項 「後見監督人又は家庭裁判所は,いつでも,後見人に対し後見の事務の報告若(も)しくは財産の目録の提出を求め,又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。」
 同条2項 「家庭裁判所は,後見監督人,被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で,被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。」
【★9】 改正前の民法842条(改正によって今はこの条文はなくなりました) 「未成年後見人は,1人でなければならない。」
【★10】 改正後の民法は,平成24年4月1日から施行されています。
【★11】 民法857条の2第1項 「未成年後見人が数人あるときは,共同してその権限を行使する。」
 同条2項 「未成年後見人が数人あるときは,家庭裁判所は,職権で,その一部の者について,財産に関する権限のみを行使すべきことを定めることができる。」
 同条3項 「未成年後見人が数人あるときは,家庭裁判所は,職権で,財産に関する権限について,各未成年後見人が単独で又は数人の未成年後見人が事務を分掌(ぶんしょう)して,その権限を行使すべきことを定めることができる。」

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