« 親が裁判所で離婚の話し合いをしている【マンガ】 | トップページ | 援助交際で子どもが捕まることがあるの »

2013年8月 1日 (木)

補導って何?

 

 夜,家に帰らずに友だちと街で遊んでいたら,警察に補導されました。よく考えたら,補導って,いったい何ですか?


 補導は,子どもたちが悪い道に進まないようにするために,警察が,子どもに注意をしたり,親や学校などに連絡をしたりすることです。


 補導は,細かく見れば,いろんな種類があります【★1】

 万引きに対する補導も,多くあります
【★2】

 しかし,一番多いのは,「不良行為少年」に対する補導です。



 「犯罪にあたることは,していない。犯罪をするかもしれない,ということでもない。でも,このまま放っておくと,悪い道に進んでしまうかもしれないようなことをしている」。

 そういう子どものことを,警察は,「不良行為少年(ふりょうこういしょうねん)」と呼んでいます
【★3】【★4】


 どんなことが「不良行為」にあたるか,という例を,警察は,17個挙げています【★4】

 その中で,補導の数がとりわけ多いのは,夜中に出歩くこと(深夜はいかい)と,たばこを吸うこと(喫煙)です。

 平成23年に「不良行為少年」として補導された子どもは100万人いますが,このうち,「深夜はいかい」が56万人,「喫煙」が35万人ですから,この2つが補導のほとんどだということになります
【★5】


 補導というのは,警察が,その子に対して,「そういうことをしないように」と注意をしたり,アドバイスをしたり,親に連絡をしたりすることです【★6】

 特に必要があるときには,警察は,学校や職場にも連絡します。



 警察は,「不良行為少年」だということで親などに連絡をしたら,その補導の記録を残します【★7】

 その後,「実際に犯罪をした」,とか,「このままだと犯罪をするかもしれない」,という理由で,家庭裁判所での審判(しんぱん)を受けることになったら,裁判官は,それまでの補導の記録を,あなたの処分を決めるための資料の一つにします。

 なお,警察から子どもへのその場の注意だけで,親などに連絡をしなかったときには,記録は残りません。

 また,この「不良行為少年」の補導の記録は,20歳になったら,捨てられてなくなります
【★8】【★9】


 じつは,この「補導」は,法律で決められていることではありません。

 国会で国会議員たちが話し合って決めたルールではないのです。

 補導は,警察が作ったルールです
【★10】


 夜に出歩いている子どもや,たばこで自分の体を傷つけている子どもに,声をかける大人たちの中の一人として,警察官も,たしかに大切な役割をはたしています。

 けれど,警察は,犯罪をとりしまる,強い力を持っています。

 そんな警察が,法律というわくぐみのないまま,その強い力で子どもに向き合うと,どうでしょう。

 子どもが守られるというよりも,かえって,子どもを追い詰めることにもなりかねません。

 だから,補導については,きちんと法律のわくぐみを作って,警察ができることと,警察がしてはいけないこととを,はっきりさせる必要があります。



 犯罪をしたわけでもない,犯罪をするかもしれないというわけでもない。

 だけれど,夜に出歩いたり,たばこで自分の体を傷つけたりしている。

 そういう子どもたちに必要なのは,犯罪をとりしまる警察の力ではありません。

 子どもたちに必要なのは,その子どもの話をきちんと受け止めてくれる大人と,「ここにいていいんだ」と子どもたちが思える居場所です。



 警察が,子どもたちを,まるで危ない存在や犯罪者のようにあつかう。

 警察が,子どもを注意をするだけで,子どもの話をきちんと受け止めない。

 警察が,子どもにとって居場所になっていないかもしれない「家」や「学校」に,連絡をするだけ。

 そんなことでは,子どもたちの心のすきまが埋まることにはつながりません。

 かえって,子どもたちの立場から見れば,警察をはじめとするまわりの大人たちや,この社会のしくみに対して,不満や不信をつのらせてしまうのではないかと思います。



 私は,補導は,その子どもにいろんな大人がかかわることができるきっかけになるものであってほしい,と思っています。

 そして,大人が子どもの話を受け止め,その子どもにちゃんとした居場所ができる,そのためのしくみであるべきだ,と思っています。

 

 

【★1】 大きくわけて,「街頭補導(がいとうほどう)」と「継続補導(けいぞくほどう)」の2つがありますが,一般的にみなさんが「補導」と呼んでいるものは,「街頭補導」のほうです。
 「街頭補導」は,道路などの公共の場所,駅など多くの客が集まるところ,風俗(ふうぞく)の営業所など,子どもの犯罪が行われやすい場所で,子どもたちを発見し,必要に応じてその場で対応する活動です(少年警察活動規則7条)。
 「継続補導」は,警察が相談に乗っている子どもや,不良行為少年について,犯罪を防ぐために特に必要なときに,親のOKをもらったうえで,家,学校,友だち関係などについて,相当の改善(かいぜん)が認められるまでの間,アドバイスや指導などを続けることです(8条2項)。
【★2】 補導は,記事にメインで書いた「不良行為少年」だけではなく,「非行少年」,つまり,犯罪をした14歳以上の子ども(犯罪少年)や,犯罪にあたることをした13歳以下の子ども(触法少年),犯罪じたいはしていないけれども犯罪をするかもしれない子ども(ぐ犯少年)にもおこなわれます(少年警察活動規則7条,2条5号)。
 このうち,「非行少年」の補導というのは,事件の捜査(そうさ)をするだけでなく,早めに子どもや親にアドバイスをすることや,学校などへの連絡をすることをさします(同規則13条1項)。
 「14歳に満たない者の行為は罰しない」とされています(刑法41条)。だから,犯罪にあたることをした13歳以下の子どもは,「法に触(ふ)れることをした子ども」という意味で,「触法少年(しょくほうしょうねん)」と呼ばれます。この触法少年として平成23年に補導された子どもは,1万6616人でした。このうち,万引きで補導されたのが7498人,自転車を盗んで補導されたのが1586人でした(警察庁生活安全局少年課「平成23年中における少年の補導及び保護の状況」http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/hodouhogo_gaiyou_H23.pdf)。
 14歳以上の子どもの万引きの場合は,事件として「検挙(けんきょ)」され,警察から家庭裁判所に文書で連絡がいきます(簡易送致(かんいそうち)と言います)。14歳以上の「犯罪少年」も,補導の対象にはなっているので,少しややこしいですね。
 万引きのことや,簡易送致については,また別の記事で詳しく書こうと思います。
【★3】 少年警察活動規則2条「この規則において,次の各号(かくごう)に掲(かか)げる用語の意義(いぎ)は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
(略)
六  不良行為少年 非行少年には該当しないが,飲酒,喫煙,深夜はいかいその他自己又は他人の徳性を害する行為(以下「不良行為」という。)をしている少年をいう。」
【★4】 「不良行為少年の補導について」(警察庁生活安全局長平成20年10月17日警察庁丙少発第33号)は,「不良行為の種別及び態様」で,不良行為を,「以下の行為であって,犯罪の構成要件(こうせいようけん)又はぐ犯要件に該当しないものの,そのまま放置すれば,非行その他健全育成上の支障が生じるおそれのあるもの」として,17個挙げています。
 (1)飲酒,(2)喫煙,(3)薬物乱用,(4)粗暴行為(そぼうこうい),(5)刃物等所持,(6)金品不正要求,(7)金品持ち出し,(8)性的いたずら,(9)暴走行為,(10)家出,(11)無断外泊,(12)深夜はいかい,(13)怠学(たいがく),(14)不健全性的行為,(15)不良交友,(16)不健全娯楽(ごらく),(17)その他(上記の行為以外の非行その他健全育成上支障が生じるおそれのある行為で,警視総監又は都道府県警察本部長が指定するもの)
【★5】警察庁生活安全局少年課「平成23年中における少年の補導及び保護の状況」http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/hodouhogo_gaiyou_H23.pdf
 平成23年の不良行為少年の補導数は101万3167人,うち,深夜はいかい(56万4575人)と喫煙(35万3258人)を合わせると90%以上になります。
【★6】 少年警察活動規則14条1項 「不良行為少年を発見したときは,当該不良行為についての注意,その後の非行を防止するための助言又は指導その他の補導を行い,必要に応じ,保護者(学校又は職場の関係者に連絡することが特に必要であると認めるときは,保護者及び当該関係者)に連絡するものとする」
【★7】 「不良行為少年の補導について」(警察庁生活安全局長平成20年10月17日警察庁丙少発第33号)「第4 少年補導票の作成及び不良行為少年に係(かか)る報告等」「警察職員は,不良行為少年…を発見した場合において,第3の3の連絡〔注:保護者等に対する連絡のこと〕を行うことが必要であると認めるときは,…少年補導票を…作成し,所属の長に速やかに報告するものとする…」,「第5 1 少年補導票の保管」「少年補導票は,当該少年補導票に記載された不良行為少年の住居地を管轄(かんかつ)する警察署において保管するものとする…」
【★8】 「不良行為少年の補導について」(警察庁生活安全局長平成20年10月17日警察庁丙少発第33号)「第5 2 少年補導票の廃棄」「少年補導票は次の場合に廃棄するものとする。(1)第3の3の連絡〔注:保護者等に対する連絡のこと〕を行わなかったとき…。(2)当該少年補導票に記載された不良行為少年が成人となったとき。(3)その他保管の必要がなくなったとき。」
【★9】 20歳になったら廃棄されるのは,「不良行為少年」の補導の記録です。14歳以上の万引きなどの「犯罪少年」の補導は,「非行歴」として,その後もずっと記録が残ります。ただ,補導歴,非行歴のどちらにしても,普通の人がその記録を見ることはできませんし,「前科(ぜんか)」とは違いますから,進学や就職など,その後の人生にマイナスになるかも,と必要以上に心配することはありません。ただし,悪いことをくり返すと,それまでの補導歴や非行歴があなたの処分にかかわってきますから,そういう意味で,生活には注意をしなければいけません。
【★10】 「補導」は,昔は「少年警察活動要綱」という名前の警察内部のルールで決められていました。平成15年から今は,「少年警察活動規則」という国家公安委員会の規則で決められています。
 記事に書いたように,「補導について法律できちんとルールを決めるべきだ」という議論はありますが,問題が多く,今も法律はできていません。
 そうしたところ,平成18年3月,奈良県が,「奈良県少年補導に関する条例」という条例を作りました(同年7月施行)。「法律」は国会で作る国のルールですが,この「条例」は地方の議会で作る地方のルールです。奈良県だけ,議会で補導のルールが決められたわけです。しかし,奈良県の条例では,警察が「できること」をメインにして決めていて,警察が「してはいけないこと」をはっきりさせようとしていないことや,何が「不良行為」かについての決め方が広くてあいまいで,ふつうの不登校までもふくんでいたりすることなどに,批判もあります。

 

« 親が裁判所で離婚の話し合いをしている【マンガ】 | トップページ | 援助交際で子どもが捕まることがあるの »

5_犯罪のこと,やってはいけないこと」カテゴリの記事