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2013年6月 1日 (土)

いじめを弁護士に相談するとどうなるの

 

 2ヶ月くらい前から,クラスで「ウザい」「キモい」「死ね」と言われたり,シカトされたりしています。最近は,上履きを隠(かく)されたり,いつの間にかノートにぐちゃぐちゃにひどいことを書かれたりしています。毎日学校に行くのがイヤだけど,それでも学校には行かなくちゃとも思ったりもして,いろいろ怖くて先生にも親にも話せません。こういうことを弁護士に相談すると,どうなるんですか。いじめてくる子やその親,学校や教育委員会を訴(うった)えることになるんですか。

 

 毎日つらい思いをしている中,誰にも相談できずに,がんばって学校に通い続けているんですね。


 ひょっとして,親や先生に相談できないのは,

 「あなたにも悪いところがあるんじゃないの」と言われてしまうからなのかもしれません。

 でも,あなたがいじめられてもしかたがない理由など,一つもありません。

 あなたは,何一つ悪くありません
【★1】


 ひょっとして,親に相談できないのは,

 いじめられていることを知ったら,親が悲しんでしまうかもしれない,

 自分を大切に思ってくれている親を悲しませたくない,

 そういう思いからかもしれません。

 あるいは,

 いじめられていることを知ったら,親がおこって,いじめっ子の家や学校にすぐに乗り込んで行ってしまうかもしれない,

 でもそこまではしてほしくない,

 そういう思いからかもしれません。



 ひょっとして,先生に相談できないのは,

 先生が,すぐにいじめっ子を注意してしまうからなのかもしれません。

 先生があなたを助けようとしてくれる気持ちじたいは良いのですが,

 あなたの気持ちを置きざりにしたまま先生が自分勝手に動いてしまったら,

 まわりから「チクった」などと言われ,いじめがもっとひどくなるかもしれませんよね。



 いろんな理由で,今,誰にも相談できずに,ひとりぼっちに感じていると思います。


 でも,あなたは,一人ではありません。

 「あなたの話を聞きたい」

 「あなたが苦しい思いをしないでよいように,いっしょに考え,いっしょに動きたい」

 そう思っている大人が,この社会には,たくさんいます。

 ぜひ,あなたの話を聞かせてください。



 「何を話せばいいかわからない」,「今の気持ちをどう言えばいいかわからない」,

 そんな不安はいりません。

 きれいに話ができなくてもいいのです。

 話を聞く大人のほうだって,あなたに気の利(き)いたアドバイスを,すぐにはできないかもしれません。

 でも,何かがすぐに解決しなくてもいいのです。



 人は,つらくなったときに,誰かに話を聞いてもらうと,それだけで,ほっと気持ちが安らぎ,そして「また明日がんばろう」という力がわいてくることが多いです。

 あなたの気持ちが安らぎ,力がわいたら,今度はいつか,あなたが,つらい思いをしているほかの誰かの話に,じっと耳をかたむけ,よりそってあげてくれればよいのです。

 この社会は,そういうふうにお互(たが)いが支え合って成り立っています。

 一人ではないと実感できること。

 それが,法律がとても大切にしていることです。

 そして,今は,いじめでつらい思いをしているあなたが,誰かに話を聞いてもらう時です。



 「チャイルドライン」という,子どもの声をじっくりと聞いてくれる電話相談があります。

 電話番号は,0120-99-7777です。

 ホームページは,
http://www.childline.or.jp/supporter/index.htmlにあります。


 また,文部科学省という国の役所でも,電話で,いじめの相談を24時間受け付けています。

 電話番号は,0570-0-78310です。



 メールであなたの話を聞いてくれるところもあります。

 さねゆきさんが運営している,「いじめと戦おう!」という,とても素晴らしい,そして内容のわかりやすいホームページがあります。

 
http://www.ijimetotatakaou.com/

 このサイトから,メールで相談をすることができます。



 それから,都道府県や市区町村によっては,「オンブズパーソン」「子どもの権利擁護委員(けんりようごいいん)」などの名前で,学校とは別の立場で,いじめの問題を調整する役目をもった人がいますから,そこに相談するのもよいと思います【★2】


 そして,私たち弁護士も,あなたの話にじっくり耳をかたむけます。


 各地の相談窓口の電話番号は,「弁護士に相談するには」の記事を見てください。


 弁護士にいじめを相談すると,いじめてくる子やその親,学校や教育委員会を訴(うった)えることになるんじゃないか,そんなことまで必要ない,と心配かもしれませんね。

 でも,
弁護士は,いつも誰かと争っているのではありません。

 弁護士は,あなたが安心して暮らせるようにするために,いっしょに考え,動くのが仕事です。

 裁判などの争いごとは,あなたが安心して暮らせるようにするための,一つの方法にすぎません。

 あなたの代わりとして,いろんな人とのあいだで話し合いを重ねて,前向きな解決をめざしていくこともたくさんありますし,

 弁護士がほかの人の前に出ることはしないで,弁護士のアドバイスをもとに,あなた自身の力で動いていく,というやり方もあります。

 いじめなど,学校の中のことの問題は,裁判などの争いごとよりも,むしろ,裁判以外の方法で解決をめざすことのほうが多いです。



 弁護士は,100%あなたの立場に立って,いっしょに考え,動くことができます。


 親や先生があなたの話を受け止めてくれない時でも,

 弁護士はあなたの話を受け止めます。



 ぎゃくに,親や先生が「あなたのためを思って」と,いろいろ動いてくれそうなときであっても,

 弁護士は,「あなた自身がどうしたいのか」という気持ちを,なによりもいちばん大切にします。

 弁護士のもとには,「子どもがいじめにあっている。裁判をしたい」という親からの相談が,けっこう寄せられます。

 でも,学校で生活をするのは,親ではありません。子ども本人です。

 だから,子どもの事件をあつかう弁護士は,裁判をする・しないをはじめとして,「子ども自身がどういう気持ちでいるか」を,いちばんだいじにしています。



 弁護士には,秘密を守らなくてはならないという,きびしい義務があります【★3】

 だから,あなたがOKしていないのに,弁護士があなたの話を勝手にだれかに話してしまうということは絶対にありませんから,安心してください。



 弁護士は,

 「どんなことがあったのか」というできごとを整理することと,

 「本人がどうしたいのか」という気持ちを整理すること,

 そして,できごとやあなたの気持ちを,ほかの人たちに伝え,話し合うこと,

 それらを得意とする仕事です。



 だから,弁護士は,いじめについても,

 
あなたがどんないじめを受けてきたのかを整理し,

 あなたが今どうしたいのか,これからどうしたいのかをいっしょに考え,

 そして,あなたが望めば,それらを,

 自分の親,先生や学校,いじめっ子などに,

 あなたといっしょに,あるいは,あなたの代わりに,伝えていくことができます。


 裁判という争いごとだけではなく,いろんな話し合いのやり方があります。

 今のつらい状況を変えて,安心した毎日を過ごせるように,いっしょに作戦を考えていきましょう。



 あなたは,一人ではありません。

 弁護士も,あなたを支える人たちの輪の中のメンバーです。

 ぜひ,話をしてみてください。

 

【★1】 いじめのきっかけが,あなたがほかの人に迷惑をかけたことだった,ということもあると思います。でも,きちんと「ごめんなさい」と気持ちを伝えたのにいじめられているのであれば,やっぱり,あなたがいじめられてよい理由はまったくない,あなたは何一つ悪くないのです。人は,まわりにまったく迷惑をかけずに生きていくことなどありえません。そして,迷惑をかけたときには,きちんと謝(あやま)ることが必要ですし,特に大きな迷惑をかけてしまったときには,きちんと法律上の責任をとっていくことも必要でしょう。でも,だからといって,きちんと謝ったりもしているのに,それ以上に,あなたがいじめで苦しみ続けなければならないのはおかしいのです。いじめの「理由」というのは,どんな人についてもこじつけで言うことができる,後付けのいいわけにすぎません。だから,「自分があのときほかの人に迷惑をかけたから,自分がいじめられてもしかたがないんだ」などとは思わないでください。
【★2】 朝日新聞2012年12月26日の記事で,「子どもの権利条約総合研究所」の調査では以下の自治体で「子どもオンブズ」が設置されている,と紹介されています(カッコ内は設置年です)。私が子どもの権利擁護委員を務めている,東京都豊島区も含まれています。
 兵庫県川西市(1999年),川崎市・埼玉県(2002年),岐阜県多治見市(2004年),秋田県(2006年),福岡県志免町・三重県名張市(2007年),東京都目黒区・愛知県豊田市(2008年),札幌市・福岡県筑前町・愛知県岩倉市(2009年),東京都豊島区,愛知県日進市(2010年),福岡県筑紫野市・愛知県幸田町(2011年),福岡県宗像市・北海道北広島市・東京都世田谷区(2013年)
【★3】 弁護士法23条「弁護士…は,その職務上知り得(え)た秘密を保持(ほじ)する権利を有(ゆう)し,義務を負う」

 

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