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2013年6月

2013年6月 1日 (土)

いじめは犯罪?どうして法律ではダメなのか

 

 いじめがダメだってことはわかってるけど,法律ではどうなってるんですか。犯罪になるんですか?

 


 いじめがどんな犯罪になるのか【★1】

 みなさんが,弁護士に,まず聞いてみたくなる質問のようです。

 一応,参考までに書いておきます。


 なぐったり,けったり,たたいたり,モノを投げつけたりするなど,暴力をふるえば,暴行罪(ぼうこうざい)です
【★2】。相手に当たっていなくても,ふれていなくても,暴行罪は成り立ちます。

 暴力をふるった結果,ケガをすれば,傷害罪(しょうがいざい)です
【★3】

 暴力をふるっていなくても傷害罪が成り立つことはあります。相手が精神的にまいってしまうことがわかっているのに,わざといやがらせをして,病気になれば,傷害罪です。

 「あいつは~~だ」「あいつは~~なことをした」などと,あること・ないことを言いふらしたり,ネット上に書いたりして,からかうのは,名誉毀損罪(めいよきそんざい)です
【★4】。その内容がほんとうかどうかは関係ありません。

 「バカ」「デブ」「ブス」「きもい」などとバカにするのは,侮辱罪(ぶじょくざい)です
【★5】

 「殺す」「死ね」などと怖がらせるのは,脅迫罪(きょうはくざい)です
【★6】

 パシリなど,やりたくないことをむりやりさせるのは,強要罪(きょうようざい)です
【★7】

 カツアゲや,おごらせるなど,お金をむりやり出させるのは恐喝罪(きょうかつざい)
【★8】,お金をむりやり奪(うば)うのは強盗罪(ごうとうざい)です【★9】

 モノを盗むのは,窃盗罪(せっとうざい)です
【★10】

 ノートや教科書にいたずら書きをしたり,上履きや体操服をぼろぼろにしたりするのは,器物損壊罪(きぶつそんかいざい)です
【★11】

 モノを隠(かく)すのも,器物損壊罪です
【★12】

 はだかにさせたり,性的にはずかしいことをさせるのは,強制(きょうせい)わいせつ罪です
【★13】


 ふつうの社会でこれだけ犯罪となることが,「子どもだから」「学校だから」という理由で許されてよいはずがありません。

 だから,深刻(しんこく)ないじめのときには,警察に犯罪として捜査(そうさ)をしてもらうことも必要です。

 また,犯罪とはならなくても,被害者にお金(損害賠償・そんがいばいしょう)を払わなければならなかったり,学校の中で処分(しょぶん)されたりする,という法律的なマイナスもあります。


 でも,私は,いじめがどんな犯罪にあたるかなどということよりも,法律からみて,もっと大事なこと,みなさんに伝えたいことがあります。



 「いじめられる側(がわ)にも問題がある」という考えは,100%まちがいだ,ということ。

 そして,いじめは,相手のことを大切な存在として尊重(そんちょう)せず,相手から安心した毎日のくらしを奪(うば)い,時には,相手の人生・命そのものを奪ってしまうから,法律で許されないことなのだ,ということです。



 私たち弁護士は,中学校に出むいて,いじめの出張授業をさせてもらっています【★14】


 「いじめはしてはいけないことですか」,と授業でみなさんに聞いたとしたら,誰もが,「いけないことです」と答えるでしょう。

 そんなことは,まわりの大人たちからさんざん言われていますから,子どもたちにとっても,当たり前のことです。

 だから,私は,答えがわかりきっているそんなヤボな質問はしません。


 私は,みなさんにこう聞きます。

 「いじめは確かに悪いこと。だけど,いじめられる側(がわ)にも問題がある」,そんなふうに思いますか,と。

 そうすると,ほとんどの人が,「いじめられる側にも問題がある」,「問題があることが多い」,と答えます。

 男子なのにナヨナヨしているとか,太っているなど,他の人とちがったところがある,

 場の空気を読まないとか,他の人に迷惑(めいわく)をかけている
【★15】

 そんなことが,いじめられる側の「問題」だ,と説明してくれます。


 でも,それは,まったくまちがった考え方です。


 自分自身をふり返ってみてください。

 まわりの人とちがっているところや,足りないところが,まったくない,と言えますか。

 まわりにまったく迷惑をかけないで,生きてこられましたか。

 そんなことはないはずです。


 「いじめられる側にも問題がある」。

 その考えは,あなたの,ほかの人とちがっている部分や,足りない部分,人に迷惑をかけていることなどをとらえて,「あなたに対するいじめがあってもしかたがない」,ということにもなってしまうのです。

 「いじめられる側にも問題がある」というのは,結局,どんな人に対してもこじつけて言うことができてしまう,後づけのいいわけにすぎません。



 なぐられれば体は痛いし,お金を取られれば損(そん)をします。

 でも,

 自分がまるで物や人形,奴隷(どれい)のようにあつかわれたり,

 シカトや「死ね」などの言葉で,ここにいること自体が認められなかったりすることは,

 体の痛みやお金の損とはくらべものにならないほど,心が深く傷つきます。



 そんな場所に毎朝登校するときの,重たい気持ち。

 安心した毎日を送ることができず,やがて,そのような学校に行くことができなくなってしまいます。

 その子の,学校に通うという人生のだいじな時期を,いじめは奪うのです。



 一つひとつのいじめそのものは,ナイフで刺(さ)すようにすぐに人の命を落とすものではないかもしれません。

 でも,コップに水が一滴(てき)一滴とたまっていき,やがて最後の一滴でコップから水があふれてしまうように,

 心の痛みは,積み重なっていけば,やがて,その人を自殺にまで追い込みます。

 その子の,幸せな人生そのものを,いじめは奪うのです。

 学校は,これからの人生を幸せに送ることができるようにするために,いろいろなことを学ぶ場所です。

 そのはずの学校で,人生そのものが奪われてしまうことは,絶対にあってはならないのです。


 大人から見ると,学校というのは,本当に変わった場所です。

 同じ年の人だけで集まり,

 みんな同じ服を着て,

 みんな同じ日課を過ごし,

 勉強や部活動の成績など,みんな同じような目標に向かっています。

 だから,他の人のちょっとした「ちがい」が,すごく目立つように感じます。


 でも,学校を出たあとの実際の社会では,一人ひとりが,本当にバラバラです。

 年も,生まれ育った環境(かんきょう)も,外見も,ものの感じ方・考え方も,

 一人ひとりがちがっていてあたりまえです。

 そして,そのちがいをお互(たが)いに認めあい,大切にしながら,社会は成り立っています。

 むしろ,ちがっているものを持っている人が,新しいことを始めたり,社会を良い方向に変える力があると認められたりしています。



 どんな人であっても,大切な存在,大切な人間として扱(あつか)われ,尊重(そんちょう)されること。

 人は,誰かの物でも,誰かの人形でも,誰かの奴隷(どれい)でもない。

 大切な存在,大切な人間として扱われること。

 そして,誰もが,安心した毎日を過ごすことができ,幸せな人生を送ることができること。

 それが,法律が何よりもいちばんだいじに守っている基本です
【★16】

 いじめは,法律がいちばんだいじにしているそのことを奪うから,許されないのです。



 法律は,この社会がうまくまわるために作られているルールです。

 法律は,国会という場所で,多数決で作られます。

 多数決は,「数が多ければ何を決めてもかまわない」,ということではありません。

 「一人ひとりが大切な存在だ」ということを認め合っているからこそ,

 そして,「すべての人が安心・安全な毎日を送り,幸せな人生を送ることができるためにどうすればよいだろうか」と考えながらルールを作るからこそ,

 その多数決にすべての人が納得し,したがうことができるものになるのです。

 この社会が成り立つためには,「お互いを認め合う」,「お互いを傷つけない」,ということが,絶対に必要なのです。



 私たちは,

 いじめでつらい思いをしている子を守るために,

 そして,

 「お互いを大切にし合う」というこの社会を守るために,

 いじめをなくさなければいけないのです。



 学校は,同じような子どもたちが集まっています。

 だからこそ,一人ひとりの少しずつの「ちがい」から,お互いに認め合うことを学んでいくことができる場所です。

 だけれど,大人たちは,子どもたちにそのメッセージをきちんと伝えていません。

 むしろ,「まとまりから外れないように」と,大人が子どもにプレッシャーを与えています。

 それが子どもたちにストレスになって,いじめにつながっているのだ,と,私は思っています。

 自分自身がまわりからきちんと大切にされていなければ,「他の人を大切にする」ということの本当の意味を理解するのは,難しいことです。

 それは,犯罪をおかして他の人を傷つけてしまった人の弁護活動をしている中で,私がいつも感じていることです。

 だから,私たち大人は,いじめをしてしまう子どもにも,「あなたも大切な存在なんだよ」というメッセージが,その心にとどくようにしなければならないと思います。



 大人の社会の中でも,他の人のちがっている部分や弱い部分を受けいれることができず,攻撃(こうげき)する人がいるのは,残念なことです。

 私たち大人も,きちんと反省しなければならないと思っています。



 今学校に通っているみなさんに,「お互いを認め合い,傷つけることなく,それぞれが安心した毎日・幸せな人生を送ることができる」,そういう社会の,きちんとしたメンバーの一人になってほしい,と,私は心から願っています【★17】

 

【★1】ちょうど私がこの記事を書いているときに,文部科学省が5月16日付けで,都道府県教育委員会などに,犯罪行為にあたる「いじめ」を挙げて通知した,と報道されました。
【★2】刑法208条「暴行を加えた者が人を傷害するに至(いた)らなかったときは,2年以下の懲役(ちょうえき)若(も)しくは30万円以下の罰金又(また)は拘留(こうりゅう)若しくは科料(かりょう)に処(しょ)する」
【★3】刑法204条「人の身体を傷害した者は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」
【★4】刑法230条1項「公然(こうぜん)と事実を摘示(てきじ)し,人の名誉を毀損(きそん)した者は,その事実の有無にかかわらず,3年以下の懲役若しくは禁錮(きんこ)又は50万円以下の罰金に処する」
【★5】刑法231条「事実を摘示しなくても,公然と人を侮辱(ぶじょく)した者は,拘留又は科料に処する」
【★6】刑法222条1項「生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨(むね)を告知(こくち)して人を脅迫した者は,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」
【★7】刑法223条1項「生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害(ぼうがい)した者は,3年以下の懲役に処する」
【★8】刑法249条1項「人を恐喝(きょうかつ)して財物を交付(こうふ)させた者は,10年以下の懲役に処する」
同条2項「前項の方法により,財産上不法の利益を得(え),又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする」
【★9】刑法236条1項「暴行又は脅迫を用(もち)いて他人の財物を強取(ごうしゅ)した者は,強盗の罪とし,5年以上の有期懲役に処する」
同条2項「前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者も,同項と同様とする」
【★10】刑法235条「他人の財物を窃取(せっしゅ)した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」
【★11】刑法261条「…他人の物を損壊(そんかい)し,又は傷害した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する」
【★12】隠したものを後で使うつもりならば窃盗罪ですが(法律の言葉で「不法領得(ふほうりょうとく)の意思がある」と言います),いやがらせをする目的で隠した場合には,不法領得の意思がないので窃盗罪ではなく,「持ち主がそのものを使うことができなくなってしまった」ので,器物損壊罪が成立します。
【★13】刑法176条「13歳以上の男女に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は,6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し,わいせつな行為をした者も,同様とする」
【★14】東京にある3つの弁護士会が共同で中学校に出向いていじめの出張授業をしています。そのさい,私たち弁護士は,さきがけていじめの出張授業に取り組んできた平尾潔弁護士の,「いじめでだれかが死ぬ前に―弁護士のいじめ予防授業」(岩崎書店)という本の内容を基本にしています。このブログに書いた私の授業の内容も,平尾弁護士から受けた影響がとても強いです。
【★15】ほかの人に迷惑をかけたことがあるとか,まわりにいつも迷惑をかけている,というのであれば,いじめるのではなく,「きちんと謝(あやま)ってほしい」とか「迷惑なことをやめてほしい」とその子にきちんと伝えて話し合えばよいのです。そして,それでもその子がきちんと聞いてくれなければ,クラスや先生もまきこんで,みんなでいっしょに話し合っていけばいいのです。もし,そうやって努力をしてもその子とわかりあうことがむずかしければ,それ以上むりをして仲直りしようとしなくてもかまいませんが,だからといって,そこからさらに「その子をいじめてよい」ということまでにはなりません。
【★16】憲法13条「すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及(およ)び幸福追求(ついきゅう)に対する国民の権利については,公共の福祉(ふくし)に反(はん)しない限(かぎ)り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする」
【★17】いじめをなくそうと,市や町が,条例(じょうれい)というルールを作って取り組んでいるところもあります。この記事を書いている時点で,兵庫県小野市(平成20年4月),岐阜県可児市(平成24年10月),長崎県雲仙市・福岡県那珂川町(平成24年12月),滋賀県大津市・青森県弘前市・徳島県名西郡石井町(平成25年4月)があります。その他にも今,そのような条例を作ろうとしているところがいくつかあります。また,国のルールである法律でいじめをなくす取り組みを作ろうと,国会でも議論が進んでいます。それぞれの条例・法律の細かい中身については,賛成・反対いろんな意見があります。しかし,「いじめを許さない」「お互いを認め合う」といういちばんだいじなことを,多数決でルールを決める「議会」「国会」という場所で,あらためて確認し,「条例」「法律」というかたちできちんとみんなにメッセージを出していく,ということじたいは,とても大切なことだと思います。
 (補足:この記事を書いた後の2013年6月21日,国会で,いじめ防止対策推進法という法律ができました。この法律のことについては,また別の記事で書こうと思います。)

 

いじめを弁護士に相談するとどうなるの

 

 2ヶ月くらい前から,クラスで「ウザい」「キモい」「死ね」と言われたり,シカトされたりしています。最近は,上履きを隠(かく)されたり,いつの間にかノートにぐちゃぐちゃにひどいことを書かれたりしています。毎日学校に行くのがイヤだけど,それでも学校には行かなくちゃとも思ったりもして,いろいろ怖くて先生にも親にも話せません。こういうことを弁護士に相談すると,どうなるんですか。いじめてくる子やその親,学校や教育委員会を訴(うった)えることになるんですか。

 

 毎日つらい思いをしている中,誰にも相談できずに,がんばって学校に通い続けているんですね。


 ひょっとして,親や先生に相談できないのは,

 「あなたにも悪いところがあるんじゃないの」と言われてしまうからなのかもしれません。

 でも,あなたがいじめられてもしかたがない理由など,一つもありません。

 あなたは,何一つ悪くありません
【★1】


 ひょっとして,親に相談できないのは,

 いじめられていることを知ったら,親が悲しんでしまうかもしれない,

 自分を大切に思ってくれている親を悲しませたくない,

 そういう思いからかもしれません。

 あるいは,

 いじめられていることを知ったら,親がおこって,いじめっ子の家や学校にすぐに乗り込んで行ってしまうかもしれない,

 でもそこまではしてほしくない,

 そういう思いからかもしれません。



 ひょっとして,先生に相談できないのは,

 先生が,すぐにいじめっ子を注意してしまうからなのかもしれません。

 先生があなたを助けようとしてくれる気持ちじたいは良いのですが,

 あなたの気持ちを置きざりにしたまま先生が自分勝手に動いてしまったら,

 まわりから「チクった」などと言われ,いじめがもっとひどくなるかもしれませんよね。



 いろんな理由で,今,誰にも相談できずに,ひとりぼっちに感じていると思います。


 でも,あなたは,一人ではありません。

 「あなたの話を聞きたい」

 「あなたが苦しい思いをしないでよいように,いっしょに考え,いっしょに動きたい」

 そう思っている大人が,この社会には,たくさんいます。

 ぜひ,あなたの話を聞かせてください。



 「何を話せばいいかわからない」,「今の気持ちをどう言えばいいかわからない」,

 そんな不安はいりません。

 きれいに話ができなくてもいいのです。

 話を聞く大人のほうだって,あなたに気の利(き)いたアドバイスを,すぐにはできないかもしれません。

 でも,何かがすぐに解決しなくてもいいのです。



 人は,つらくなったときに,誰かに話を聞いてもらうと,それだけで,ほっと気持ちが安らぎ,そして「また明日がんばろう」という力がわいてくることが多いです。

 あなたの気持ちが安らぎ,力がわいたら,今度はいつか,あなたが,つらい思いをしているほかの誰かの話に,じっと耳をかたむけ,よりそってあげてくれればよいのです。

 この社会は,そういうふうにお互(たが)いが支え合って成り立っています。

 一人ではないと実感できること。

 それが,法律がとても大切にしていることです。

 そして,今は,いじめでつらい思いをしているあなたが,誰かに話を聞いてもらう時です。



 「チャイルドライン」という,子どもの声をじっくりと聞いてくれる電話相談があります。

 電話番号は,0120-99-7777です。

 ホームページは,
http://www.childline.or.jp/supporter/index.htmlにあります。


 また,文部科学省という国の役所でも,電話で,いじめの相談を24時間受け付けています。

 電話番号は,0570-0-78310です。



 メールであなたの話を聞いてくれるところもあります。

 さねゆきさんが運営している,「いじめと戦おう!」という,とても素晴らしい,そして内容のわかりやすいホームページがあります。

 
http://www.ijimetotatakaou.com/

 このサイトから,メールで相談をすることができます。



 それから,都道府県や市区町村によっては,「オンブズパーソン」「子どもの権利擁護委員(けんりようごいいん)」などの名前で,学校とは別の立場で,いじめの問題を調整する役目をもった人がいますから,そこに相談するのもよいと思います【★2】


 そして,私たち弁護士も,あなたの話にじっくり耳をかたむけます。


 各地の相談窓口の電話番号は,「弁護士に相談するには」の記事を見てください。


 弁護士にいじめを相談すると,いじめてくる子やその親,学校や教育委員会を訴(うった)えることになるんじゃないか,そんなことまで必要ない,と心配かもしれませんね。

 でも,
弁護士は,いつも誰かと争っているのではありません。

 弁護士は,あなたが安心して暮らせるようにするために,いっしょに考え,動くのが仕事です。

 裁判などの争いごとは,あなたが安心して暮らせるようにするための,一つの方法にすぎません。

 あなたの代わりとして,いろんな人とのあいだで話し合いを重ねて,前向きな解決をめざしていくこともたくさんありますし,

 弁護士がほかの人の前に出ることはしないで,弁護士のアドバイスをもとに,あなた自身の力で動いていく,というやり方もあります。

 いじめなど,学校の中のことの問題は,裁判などの争いごとよりも,むしろ,裁判以外の方法で解決をめざすことのほうが多いです。



 弁護士は,100%あなたの立場に立って,いっしょに考え,動くことができます。


 親や先生があなたの話を受け止めてくれない時でも,

 弁護士はあなたの話を受け止めます。



 ぎゃくに,親や先生が「あなたのためを思って」と,いろいろ動いてくれそうなときであっても,

 弁護士は,「あなた自身がどうしたいのか」という気持ちを,なによりもいちばん大切にします。

 弁護士のもとには,「子どもがいじめにあっている。裁判をしたい」という親からの相談が,けっこう寄せられます。

 でも,学校で生活をするのは,親ではありません。子ども本人です。

 だから,子どもの事件をあつかう弁護士は,裁判をする・しないをはじめとして,「子ども自身がどういう気持ちでいるか」を,いちばんだいじにしています。



 弁護士には,秘密を守らなくてはならないという,きびしい義務があります【★3】

 だから,あなたがOKしていないのに,弁護士があなたの話を勝手にだれかに話してしまうということは絶対にありませんから,安心してください。



 弁護士は,

 「どんなことがあったのか」というできごとを整理することと,

 「本人がどうしたいのか」という気持ちを整理すること,

 そして,できごとやあなたの気持ちを,ほかの人たちに伝え,話し合うこと,

 それらを得意とする仕事です。



 だから,弁護士は,いじめについても,

 
あなたがどんないじめを受けてきたのかを整理し,

 あなたが今どうしたいのか,これからどうしたいのかをいっしょに考え,

 そして,あなたが望めば,それらを,

 自分の親,先生や学校,いじめっ子などに,

 あなたといっしょに,あるいは,あなたの代わりに,伝えていくことができます。


 裁判という争いごとだけではなく,いろんな話し合いのやり方があります。

 今のつらい状況を変えて,安心した毎日を過ごせるように,いっしょに作戦を考えていきましょう。



 あなたは,一人ではありません。

 弁護士も,あなたを支える人たちの輪の中のメンバーです。

 ぜひ,話をしてみてください。

 

【★1】 いじめのきっかけが,あなたがほかの人に迷惑をかけたことだった,ということもあると思います。でも,きちんと「ごめんなさい」と気持ちを伝えたのにいじめられているのであれば,やっぱり,あなたがいじめられてよい理由はまったくない,あなたは何一つ悪くないのです。人は,まわりにまったく迷惑をかけずに生きていくことなどありえません。そして,迷惑をかけたときには,きちんと謝(あやま)ることが必要ですし,特に大きな迷惑をかけてしまったときには,きちんと法律上の責任をとっていくことも必要でしょう。でも,だからといって,きちんと謝ったりもしているのに,それ以上に,あなたがいじめで苦しみ続けなければならないのはおかしいのです。いじめの「理由」というのは,どんな人についてもこじつけで言うことができる,後付けのいいわけにすぎません。だから,「自分があのときほかの人に迷惑をかけたから,自分がいじめられてもしかたがないんだ」などとは思わないでください。
【★2】 朝日新聞2012年12月26日の記事で,「子どもの権利条約総合研究所」の調査では以下の自治体で「子どもオンブズ」が設置されている,と紹介されています(カッコ内は設置年です)。私が子どもの権利擁護委員を務めている,東京都豊島区も含まれています。
 兵庫県川西市(1999年),川崎市・埼玉県(2002年),岐阜県多治見市(2004年),秋田県(2006年),福岡県志免町・三重県名張市(2007年),東京都目黒区・愛知県豊田市(2008年),札幌市・福岡県筑前町・愛知県岩倉市(2009年),東京都豊島区,愛知県日進市(2010年),福岡県筑紫野市・愛知県幸田町(2011年),福岡県宗像市・北海道北広島市・東京都世田谷区(2013年)
【★3】 弁護士法23条「弁護士…は,その職務上知り得(え)た秘密を保持(ほじ)する権利を有(ゆう)し,義務を負う」

 

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