バイトの給料の入る口座から親がお金を抜いていく
高校生です。知り合いの店でバイトしてます。家にお金の余裕がないんで,自分のかせぎの一部を家に入れることは,しょうがないと思ってます。でも,親が自分の通帳とカードを管理してて,金を一方的に抜いていかれるのが,納得いかないです。どうすればいいですか。
給料は,銀行口座に振り込むのではなく,店から手渡ししてもらうことができます。
店の人に話して,そのようにしてもらってください。
そのうえで,給料からいくらを家に入れるか,親とよく話し合ってください。
今は,給料を銀行口座で受け取ることが,当たり前のようになっています。
でも,実は,法律では,給料は,働いている人本人が,現金手渡しで受け取るのが基本なのです【★1】。
これは,働いているのが子どもであっても,同じです【★2】。
働いている側が「銀行口座に送金するのでもかまいません」とOKしなければ,雇(やと)うがわが給料を銀行振込することはできません【★3】。
銀行の口座はあなたの名義ですが,法律的に見れば,あなたが直接給料を受け取っているのではなく,銀行が代わりに受け取っているということだからです。
むかしから,日本をふくめ,世界中の多くの国々で,「働いても給料が本人の手元にわたらない」,ということがありました。
働いて得たお金は,働いたその人が受け取って,自分自身で自由に使うのが,当たり前のはずです。
でも,弱い立場に置かれた人たちは,自分の給料をほかの人に丸取りされたり,なんだかんだと理由を付けてお金を差し引かれてしまったりすることが多かったのです。
人は,誰かのロボットではないし,誰かの奴隷(どれい)でもありません。
働いた分のお金を本人がきちんと受け取るということは,生きるうえでとても大切なことです。
だから,給料を本人が受け取れないというようなおかしなことが起きないよう,「給料は必ず本人に手渡さないといけない」と法律で決まっています。
特に,子どもは,親よりも弱い立場にあります。
だから,子どもの財産を管理する責任と権限をもっている親であっても,給料を本人の代わりに受け取ることはできない,と,子どもの場合について法律にはっきりと書いてあるのです【★2】。
親が直接子どもの職場におしかけて,子どもの給料を代わりに受け取ろうとする場合がありますが,明らかにダメなことです。
銀行振込だったあなたの場合でも,あなたがお店に,「いままでは銀行に送金してもらっていましたが,それをやめます。これからは直接自分に払ってください」と伝えればいいのです。
これをお店が断ることはできません。
お店によっては,「銀行振込しか対応していない」と言うかもしれませんが,法律的に通用しない言い分です。
また,お店によっては,「今月分はもう送金手続をとってしまって,今からキャンセルできない」と言うかもしれませんが,銀行の送金手続は,前日の銀行の営業時間までであれば,十分キャンセルできます。
あなたの家の事情をお店にきちんと話すほうが,お店の人から理解してもらえて,法律の原則通りに対応してもらいやすいのではないかと思います。
そして,お店から自分で受け取ったお金の中から,親と話し合って納得のいく金額を親に渡せばいいのです。
もし,「銀行振込をやめてください」とお店に言ったのに,お店が銀行振込をして親に取られてしまい,親があなたにお金を返してくれなかったら。
そのときは,お店に,「もう一度きちんと自分に給料を払い直して」と言うことができます【★4】。
お店がきちんと対応してくれなければ,労働基準監督署(ろうどうきじゅんかんとくしょ)という国の役所に事情を話して,その役所からお店に指導をしてもらうこともできます。
高校生のときからアルバイトをして給料の一部を家に入れているのは,すごいことだと思います。
ただ,もしも家がお金のことでこまっているのであれば,生活保護の制度をはじめとした,区役所・市役所などのいろんなサービスが使えるかもしれません。
また,親に借金があるのなら,弁護士がそれを整理して,暮らしを立て直していくこともできます。
「役所や弁護士に相談に行ってほしい」,と,あなたが親にもちかけてみることも,場合によっては必要かもしれません。
また,あなたが将来自分が一人暮らしをしようと思っても,今の状況では,独立するための資金も貯めづらいと思います。
そのような子どもたちのために,自立援助ホームという施設もあります【★5】。
高校を卒業したあとの自立を考えているようであれば,検討してみてください。
【★1】 労働基準法24条1項「賃金は,通貨で,直接労働者に,その全額を支払わなければならない」
【★2】 労働基準法59条「未成年者は,独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は,未成年者の賃金を代(かわ)って受け取ってはならない」
【★3】 労働基準法施行規則7条の2「使用者は,労働者の同意を得た場合には,賃金の支払について次の方法によることができる。 一 当該(とうがい)労働者が指定する銀行その他の金融機関(きんゆうきかん)に対する当該労働者の預金又は貯金への振込み」
【★4】 つまり,お店の側が給料を二重に払わなければならなくなってしまうのです。これは,お店のほうが法律のルールに反したことをしてしまった以上,しかたがありません。お店は,実際にお金を使ってしまったお母さんから返してもらえなければ,損をしてしまうことになります。それだけ雇うがわに厳しいルールを作ることで,子どものあなたを法律が守っているのです。
【★5】 自立援助ホームでは,仕事の探し方,仕事のやり方,生活のしかたを,自立するまでの間学ぶことができます。月3万円程度を施設に払い,残りは貯金とお小遣いにまわして,1年ほどでアパートを借りられるほどのお金がたまったら自立する,という施設です。
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