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2013年4月 1日 (月)

お年玉を親に使われてしまった

 

 お正月に,おじからお年玉をもらいました。そのときに,お父さんが「お母さんに預(あず)けなさい」というので預けたんですが,あとになって,お母さんから「冷蔵庫を買うために使ってしまった」と言われました。有名な弁護士さんが,親がお年玉を使っても全く問題ないって言っていたんですが,ほんとうなんですか。

 

 私はその弁護士さんがどのように言ったのか知りませんが,法律上,お母さんがあなたのお年玉を勝手に使うことは,してはいけないことです。


 20歳になるまでは,子どもの財産は,「親権(しんけん)」を行う人が,管理します【★1】


 あなたの場合,お父さんとお母さんが親権者(しんけんしゃ)です【★2】


 人は,ほんらい,自分の財産は,自分で管理し,自分で好きなように使っていい,という自由があります。


 でも,経済のしくみはとても複雑(ふくざつ)です。

 経済のしくみがわかるようになるまでの子どものときや,

 お年寄りになって判断する力が弱くなってきたときなどは,

 他の人にだまされて,財産をうしなったり,大きな借金を背負わされたりする危険があります。

 だから,そういう人には,その人に代わって,その人のために,財産を管理したり使ったりするサポーターを,法律ではつけているのです。

 子どもの場合は,そのサポーターが,「親権」を行う人です。



 ですから,お父さんがお年玉を預けなさい,と言ったのは,法律的に正しいことです。


 あなたが,せっかくもらったお年玉を,むだ遣いしないよう,あなたを守る義務が,親にはあるのです。

 ただ,ふだんのお小遣いは,自分で管理して,自分で使っていますね。

 また,中学生・高校生・大学生にもなってくると,自分で管理して,自分で使うことを親から許される金額も,大きくなってきます。

 法律は,親が許したぶんについては,子どもが自由に使っていい,としています
【★3】

 「子どもがだまされてお金を失うことはないだろう」,「お金の使い方をここで学んでもらおう」,ということを,金額の大きさや子どもの年齢に応じて,親が考えていくしくみになっているのです。



 でも,お母さんが,冷蔵庫を買うためにあなたのお年玉を勝手に使ったことは,法律的にまちがっていることです。


 親が子どもの財産を管理するのは,あくまで,その子どものためです【★4】

 管理を任(まか)されている人は,その人の財産と,自分の財産とを,ごちゃごちゃにしてはいけないのです。

 おじさんは,お年玉を,あなたが自分のために使ってほしい,というつもりであげたはずです。

 もらったあなたも,そのお年玉を,自分のために使いたいと思って,実際に使うまでの間,親に預けていただけのはずです。



 お母さんは,「冷蔵庫はあなたも使うんだから,あなたのためでもあるじゃない」と言うかもしれません。

 でも,冷蔵庫は,ふつう,お父さんとお母さんが家計の中でやりくりして買うものです。

 もし,万一,家計に余裕(よゆう)がなくて,親があなたのお年玉からもお金を出してもらいたいと思うなら,少なくとも,きちんと話し合って,あなたのためでもあるんだ,ということあなた自身が納得してから,出すようにしなければなりません。



 インターネットを見ると,こんな記事を見ることがあります。

 「親は,子どもを育てるのに必要なお金と,子どもから預かっているお金とを差し引きできると法律に書いてある。だから,親が子どものお年玉を使ってもいい」。

 でも,それは間違いです。

 差し引きしていいのは,たとえば,お年玉を銀行に預けたときの利子分などだけです。

 お年玉そのものを,子どもを育てるのに必要なお金と差し引きすることまで,法律は認めていません
【★5】


 親が子どもの財産を勝手に使ってしまったら,親は,その分を,子どもに返さなければいけません【★6】

 お年玉程度の金額であればまだしも,子どもにもっと大きなお金があって,それを親が勝手に使ってしまったら…
【★7】

 そんなときには,裁判所が,子どもの財産を管理することを親に禁止したり
【★8】,親から「親権」そのものをうばったりすることさえあります【★9】


 今回,使われてしまったお金を返してほしいと親と話すことは,そう簡単なことではないかもしれません。

 自分にお金をかけて育ててもらっている親に,なかなか言いづらいですよね。

 「弁護士がこう言っていた」,という言い方をするのは,かえって親の気分を悪くするかもしれません。

 こういうときには,お年玉をくれたおじさんを味方につけるほうが良いと思います。

 そして,次の年からは,おじさんがお年玉をわたすときに,「このお年玉は,おじの私が管理しておきます」,と,お父さんやお母さんに言ってもらうことも,一つの手です
【★10】

 そう言ってもらうと,そのお年玉は,親が管理することができませんから,勝手に冷蔵庫代に使われる心配はありません。

 いつか自分が自分のために使いたいときに,おじさんに言えば良いのです。



 自分の財産をきちんと大切にできる人が,

 他の人の財産もきちんと大切にできるようになります。

 お金の話を細かくするのはいやらしい,と言う人もいますが,

 お金をきちんと大切にすることは,人として大事なことです。

 それは,子どもであっても,大人であっても,同じことだと思います。

 

【★1】 民法824条「親権を行う者は,子の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし,その子の行為を目的とする債務(さいむ)を生(しょう)ずべき場合には,本人の同意を得なければならない。」
【★2】 民法818条1項「成年に達しない子は,父母の親権に服する」
【★3】 民法820条「親権を行う者は,子の利益のために子の監護及び教育する権利を有し,義務を負う」
【★4】 民法5条3項「…法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は,その目的の範囲内において,未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも,同様とする」
【★5】 民法828条には,「子が成年に達したときは,親権を行った者は,遅滞(ちたい)なくその管理の計算をしなければならない。ただし,その子の養育及び財産の管理の費用は,その子の財産の収益(しゅうえき)と相殺(そうさい)したものとみなす」,とあります。この後半の部分を誤解(ごかい)している人が多いようです。東京大学の内田教授も,「828条但書(ただしがき)は,子の財産の収益を養育費に充(あ)ててよい旨(むね)規定している。言い換えれば,子の財産の元本(がんぽん)を養育費に充当(じゅうとう)することは原則して許されないのである。したがって,収益で不足する限(かぎ)り,親は自ら(みずから)の資産・労力で子を養育しなければならない」と言っています(内田貴「民法Ⅳ」295ページ)。
【★6】 「きちんと注意して管理をしなければならないのにしていなかったから,その分をきちんと返してください」(民法827条),と言うか,「やってはいけないことをしてこちらに損(そん)をさせた分を元にもどしてください」(民法709条。不法行為といいます),という言い方になります。
【★7】 実際に,親戚が亡くなって,その遺産(いさん)から,子どもが大きなお金や土地・建物を手にすることがあります。
【★8】 管理権喪失(そうしつ)の審判(しんぱん)といいます。民法835条「父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは,家庭裁判所は,…その父又は母について,管理権喪失の審判をすることができる」
【★9】 親権喪失の審判といいます。民法834条「父又は母による虐待又は悪意の遺棄(いき)があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著(いちじる)しく害するときは,家庭裁判所は,…その父又は母について,親権喪失の審判をすることができる。ただし,2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは,この限(かぎ)りでない」
【★10】 民法830条1項「無償(むしょう)で子に財産を与(あた)える第三者が,親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは,その財産は,父又は母の管理に属(ぞく)しないものとする」。誰が管理するかをはっきりさせないと,管理する人をわざわざ裁判所に選んでもらわないといけなくなりますから(同条3項),誰が管理するのかを,きちんとおじさんに言ってもらう必要があります。

 

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