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2013年4月 1日 (月)

逮捕された!早く外に出たい

 

 今日,警察に逮捕されてしまいました。一日も早く家に帰りたいんですが,いつ外に出られますか。

 

 ケースによります。その日のうちに出られることもあれば,ずっと出られないこともあります。


 外に出られるかどうかについての,いくつか重要なタイミングがあります。

 ① 逮捕から72時間(3日)

 ② 勾留請求から20日

 ③ 家庭裁判所送致から4週間



 このうち,この記事では,①を中心にお話しします。


①逮捕から72時間(3日)



 逮捕されたときから72時間(3日間)は,ひとりぼっちです【★1】

 この3日間は,家族でさえ,あなたと会って話をすることができません。



 警察署に閉じこめられ,取り調べが始まります。

 自分の言い分をどうやって警察に言えばいいのかは,大人でも難しいことです。

 まして,子どもであれば,もっと難しいことです。



 この先自分がどうなるのか,いつ外に出られるかわからない。

 たまらなく不安になります。

 そんな中,「警察の言うことにしたがえば早く外に出られる」,そんなふうに思わされます。

 そして,警察に言われるがままに,本当ではないことを,言わされたり,書かされたりする人が,とても多いのです。

 だけど,一度そんなふうに本当ではないことを言ったり書いたりすると,あとの裁判でひっくり返すことは,簡単ではありません。



 この3日間,あなたに会えるのは,弁護士だけです。

 でも,この3日間は,「国選(こくせん)弁護」
【★2】という制度がありません。

 あなたや家族が何もしないと,弁護士は来てくれません。

 弁護士は,警察につかまった人たちのために,毎日当番で待機しています。

 呼ばれたら,すぐに会いに行くことができます。

 お金の心配もいりません。

 ですから,
できるだけ早く弁護士を呼んでください。

 弁護士を呼ぶように,警察官に強く言ってください。

 取り調べる警察官に言ってもいいですし,留置場(りゅうちじょう)にいる警察官に言ってもかまいません。

 そうすると,警察官が,弁護士会に連絡しなければいけないことになっています。

 また,あなたの家族が弁護士会に連絡するのでもかまいません。

 東京の場合は 03-3580-0082 です。

 そのほかの都道府県の場合は,それぞれの弁護士会の連絡先を調べてください。



 弁護士は,早く外に出られるようにいろんな活動をします。

 また,あなたの処分(しょぶん)が不当に重くならないように,いろんな活動をします。

 弁護士としての,とても大切な活動です。



 
 「犯罪をしていない」,

 「犯罪はしたけれど,被害者や警察が言っているようなひどいことまではしていない」,

 「犯罪はしたけれど,自分にも言い分がある」,

 あなたの言い分を,警察官,検察官,裁判官などに,しっかりと伝えます。



 「自分は犯罪をしてしまったんだから,弁護士なんてつけても意味がない」,

 そんなふうには考えないでください。



 犯罪をしてしまったのであれば,

 どうして犯罪をしてしまったのか,

 被害者にどう謝ればいいのか,

 自分の家族とこれからどういう関係を築(きず)いていけばいいのか,

 今後犯罪をしないようにするためにどうすればいいのか,

 それを,あなたと一緒に考えます。



 まちがったことをした人でも,一人ひとりが大切な存在です。

 逮捕されたことをきっかけにして,「これからしっかりと暮らし,生きていくために,どうすればいいのか」を,弁護士と一緒に考えること。

 それが,とても大切なのです。



 「弁護士をつけると反省していないと思われるぞ」,と警察が言うかもしれません。

 でも,それは間違いです。

 弁護士はむしろ,どうやって反省すればいいのかを,あなたと一緒に考えるのです。



 「弁護士は金がかかるから親に迷惑をかけるぞ」,と警察が言うかもしれません。

 それも間違いです。

 お金のことも,心配いりません。

 あなた自身に大きなお金がなく,親もお金を出せない。

 そして,この3日間には「国選弁護」がないので,国も弁護士の費用を出してくれない。

 そんなときのために,日本中の弁護士全員がお金を出し合い,担当する弁護士に,そこからお金を出すしくみを作っています。



 お金がなくて犯罪をしてしまう環境(かんきょう)にいる人ほど,自分自身を見つめ直し,立ち直っていくために,弁護士のサポートが必要なはずです。

 それなのに,「お金がないから弁護士のサポートが受けられない」
,というのでは,おかしいのです。

 だから,弁護士全員でお金を出し合っています。



 「こんな子に弁護士なんかつけなくていい」,と親が言うかもしれません。

 でも,逮捕という大事なときに,そんなことを親が言うのは,さみしいことです。

 警察につかまるよりも前から,あなたにとって,家は,さみしい場所だったのではないですか。

 ひとりぼっちだったのではないですか。

 そんな子どもほど,弁護士がサポートしていく必要があります。

 親が弁護士を付けることに反対していても,あなた自身が弁護士をつけたいと思えば,付けることができます。

 そして,弁護士は,そんな親とも,あなたの立場に立って話をします。




 警察が捜査した結果,あなたが「犯罪をしていない」とか,「犯罪をしそうではない」【★3】,ということが警察官にわかったときには,そのときに外に出られます。


 軽い犯罪であれば,3日間で捜査が終わることもあります。

 捜査が終わって,「あとで家庭裁判所から呼び出しがあったとしても,自分でちゃんと裁判所に行けるだろう」と思ってもらえれば,外に出られます。

 ただし,実際には,3日間で捜査が終わることは少ないです。



 捜査が終わっていないけれども,外に出られる,ということもあります。

 
「あとで警察などが呼び出したとしても,自分でちゃんと来るだろう。返す家もあるし,逃げてしまう危険もないし,証拠を隠(かく)したり他の人と口裏(くちうら)合わせをすることもないだろう」と思ってもらえれば,外に出られます【★4】


 早く出られるかどうかは,「起きた事件がどんな内容か」ということはもちろん,「あなたがどれだけ深く反省しているか」,「あなたの家がどんな状況(じょうきょう)か」,「被害者と話し合いができているか」,など,いろんなことを見て決まります。

 ですから,一つ一つの事件で進み方が違うので,このブログでは,その全部を説明することができません。

 ぜひ,すぐに弁護士を呼んで,あなたの事件の場合の見通しを聞いてください。




 もし3日以内に外に出られなかった場合の,その後のことを,簡単に説明します。

 ただし,一般的なことだけをわかりやすく書きますので,ここに書いたのとはちがう流れになることもありますから,注意してください。

 くわしくは,また別の記事で書きます。



②勾留請求から20日


 逮捕後72時間のうちに,検察官(けんさつかん【★5】)が,「捜査を続けるためにもっと長くつかまえておきたい」と裁判官に連絡し【★1】,裁判官がこれを認めると,長くつかまったままになります。

 この,長くつかまることを,「勾留(こうりゅう)」と言います。

 「返す家がない」「逃げてしまうかもしれない」「証拠を隠したり他の人と口裏合わせをするかもしれない」と思われたときに,そうなります
【★4】

 ただし,子どもの場合は,大人の場合とちがって,本当に必要なときにしか勾留をしてはいけないことになっています
【★6】


 場所は,そのまま警察署にとめおかれることがほとんどです。

 本当は警察署にとめおくことには問題があるのですが,実際はそうされています
【★7】【★8】


 原則10日間とめおかれ,捜査が終わらなければ,さらに最大10日間延ばされます【★9】

 しかし,実際には,「延ばすのが当たり前,20日間とめおいて当たり前」というような,不当な取扱いが多いです。

 日にちの計算は,検察官が裁判官に連絡した日(勾留請求の日)を1日目として数えます。



 この期間は,平日の昼間であれば,家族や友だちも,面会や差し入れができます【★10】

 でも,共犯者(きょうはんしゃ)がいたりして,面会や差し入れができないときもあります。

 そのときは,弁護士だけが面会や差し入れができます
【★11】

 最近,法律が変わって,ほとんどの事件で,この「勾留」のときから「国選弁護」が付くようになりました
【★12】

 でも,上に書いたように,「勾留」よりも前の,最初の72時間が大事ですから,逮捕のときに弁護士を呼んでください。



③家庭裁判所送致から4週間


 捜査が終わると,検察官が家庭裁判所に事件を送ります。

 そして,家庭裁判所での判断をするまでの間,「あなたがどういう人かを見極(みきわ)める必要がある」,と裁判官が考えると,さらに長くつかまったままになります。

 これを,「観護措置(かんごそち)」と言います
【★13】

 場所は,少年鑑別所(かんべつしょ)にとめおかれます。

 鑑別所は,少年院とはちがい,あなたがどんな人なのかを見るための場所です。



 4週間後に,裁判所での「審判(しんぱん)」が開かれます(ちょうど4週間後のときもありますが,それよりも少し早い日のほうが多いです)【★14】

 その審判で,「家に帰っていい」,と言われることもあれば,「施設(少年院など)に行きなさい」,と言われることもあります。

 いろんなパターンがあるので,くわしくは,また別の記事で書きます。



 この4週間,弁護士は,「付添人(つきそいにん)」という名前で活動します。

 「国選付添人」という制度がありますが,警察署にいたときの「国選弁護」よりも,弁護士がつけられる事件の範囲がせまい,という問題があります。

 でも,捜査のあいだあなたについてくれていた弁護士に,必ず,そのまま「付添人」として活動を続けてもらってください。

 その弁護士の費用も,お金のない人の事件であれば,弁護士全員でお金を出し合った中から出してもらえますから,心配する必要はありません。



 平成23年に少年院に行きなさいと裁判所から言われた子どもは,3187人でした。

 そのうち,弁護士がついていたのは2518人です
【★15】

 669人もの子どもたちが,弁護士がいないまま裁判がされて,少年院に行くように言われているのは,おかしなことです。

 大人であれば,ほぼすべての事件で,弁護士がついていないと,裁判じたいが開けないことになっています
【★16】

 子どものほうが大人よりも弁護士のサポートが必要なはずなのに,ちぐはぐで,おかしなことですよね。

 そのことも,
また別の記事で書こうと思います。


(注:この記事を書いた後の,2014年6月,法律が変わって,子どもの裁判でもほとんどの事件で弁護士が国選で付くようになりました。くわしくは,「子どもの犯罪の裁判に国選の弁護士は付くの?」の記事を見てください。)

 

【★1】 72時間というのは,本文でも書いたように,検察官(けんさつかん)が裁判官に「もっと長くつかまえておきたい」と求める(勾留請求)までのタイムリミットです。
刑事訴訟法205条1項 「検察官は,…被疑者(ひぎしゃ)を受け取ったときは,弁解(べんかい)の機会を与え,留置(りゅうち)の必要がないと思料(しりょう)するときは直(ただ)ちにこれを釈放(しゃくほう)し,留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。」
同条2項 「前項の時間の制限は,被疑者が身体を拘束(こうそく)された時から72時間を超えることができない。」
【★2】 お金がない人,弁護士のツテのない人には,国が弁護士を選んで付けてくれる制度です。お金がない人は,弁護士の費用(ひよう)も,国が出してくれます。
 でも,本文で書いたとおり,逮捕されてからの72時間(3日間)は,この国選弁護のしくみがありません。
【★3】 「ぐ犯(ぐはん)」と言います。子どもの場合は,犯罪をしていなくても,犯罪をするかもしれない,というときには,裁判になることもあるのです。
少年法3条「次に掲げる少年は,これを家庭裁判所の審判に付する。…
3.次に掲げる事由があって,その性格又は環境に照して,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
 イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
 ロ 正当の理由がなく家屋に寄り附かないこと
 ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し,又はいかがわしい場所に出入すること
 ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること」
【★4】 引き続き長くとめおく「勾留(こうりゅう)」をすることができるのは,刑事訴訟法60条1項に書かれている場合です。
刑事訴訟法207条1項 「前3条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は,その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。…」
刑事訴訟法60条1項 「裁判所は,被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で,左の各号の一にあたるときは,これを勾留することができる。
一  被告人が定まつた住居を有しないとき。
二  被告人が罪証(ざいしょう)を隠滅(いんめつ)すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」
【★5】 「警察官」と発音が似ているのでややこしいですが,別の人です。検察官は,弁護士や裁判官と同じように,法律家です。警察と協力しながら事件を捜査し,ずっとつかまえるか外に出すかを決めたり,犯人の処分を求めて裁判所の手続をとったりします。
【★6】 少年法43条3項 「検察官は,少年の被疑事件については,やむを得ない場合でなければ,裁判官に対して,勾留を請求することはできない」
 少年法48条1項 「勾留状は,やむを得ない場合でなければ,少年に対して,これを発することはできない」
【★7】 本当は,警察署の中にとめおくのは,おかしいのです。捜査をする警察署の中にずっといさせられるのは,とても苦痛ですし,フェアではありません。そのため,外国では,警察以外の場所でつかまえておくことになっています。日本でも,法律の建前では,そうなっていて,あくまで例外的に警察署でもいい,となっています。しかし,その原則と例外が逆になって,警察署にとめおかれることのほうがふつうになってしまっています。これを「代用監獄(だいようかんごく)」と言います。
刑事訴訟法64条1項「…勾留状には…勾留すべき刑事施設…を記載(きさい)し…なければならない。」
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律15条「第3条各号に掲(かか)げる者は,…刑事施設に収容(しゅうよう)することに代えて,留置施設に留置することができる。」
【★8】 子どもの場合,大人の勾留とは違う形で,鑑別所にとめおくこともできる規定があります。これらの規定がちゃんと活用されるべきなのですが,実際にはほとんど活用されず,大人と同じように警察にとめおかれています。
少年法43条1項 「検察官は,少年の被疑事件においては,裁判官に対して,勾留の請求に代え,第17条第1項の措置を請求することができる。」
少年法48条2項 「少年を勾留する場合には,少年鑑別所にこれを拘禁(こうきん)することができる。」
【★9】 刑事訴訟法208条1項 「前条の規定により被疑者を勾留した事件につき,勾留の請求をした日から10日以内に公訴(こうそ)を提起しないときは,検察官は,直ちに被疑者を釈放しなければならない。」
同条2項 「裁判官は,やむを得ない事由があると認めるときは,検察官の請求により,前項の期間を延長することができる。この期間の延長は,通じて10日を超えることができない。」
【★10】 刑事訴訟法80条 「勾留されている被告人は,第39条第1項に規定する者以外の者と,法令の範囲内で,接見(せっけん)し,又は書類若しくは物の授受(じゅじゅ)をすることができる…」
 「第39条第1項に規定する者」というのは,弁護士のことです。
 刑事訴訟法39条1項 「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は,弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者…と立会人なくして接見し,又は書類若しくは物の授受をすることができる。」
【★11】 刑事訴訟法81条 「裁判所は,逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは,検察官の請求により又は職権で,勾留されている被告人と第39条第1項に規定する者以外の者との接見を禁じ,又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲(けんえつ)し,その授受(じゅじゅ)を禁じ,若(も)しくはこれを差し押えることができる…」
【★12】 被疑者国選(ひぎしゃこくせん)と言います。実は,この被疑者国選のしくみが始まったのは,最近のことです。以前は,警察が捜査している間は国選弁護がなく,大人の刑事裁判が始まってからしか国選弁護はありませんでした。だから,自分で弁護士を頼まなければならなかったのです。
 それがおかしい,と弁護士の先輩たちが活動を続け,当番弁護のしくみをつくり,お金も自分たちで出し合いながら続けてきた結果,ようやく,2006年(平成18年)に国選弁護として国がきちんと費用を出すということが決まりました。それでも,スタートしたときは,殺人や強盗などにしか被疑者国選は付きませんでした。2009年(平成21年)から,長期3年を超える懲役若しくは禁固(きんこ)にあたる事件も対象となり,窃盗事件や傷害事件など,多くの事件で被疑者国選が付くようになりました。
 お金が50万円もない人には,国が弁護士の費用を払ってくれます(刑事訴訟法37の3第2項,36条の2,刑事訴訟法第36条の2の資産及び同法36条の3第1項の基準額を定める政令2条)。この50万円は,現金と預貯金の合計で,それ以外のことは関係ありません。また,つかまった子ども本人のお金の額で見ますので,親にお金があっても関係ありません。
【★13】 少年法17条1項 「家庭裁判所は,審判を行うため必要があるときは,決定をもって,次に掲(かか)げる観護の措置をとることができる。
1.家庭裁判所調査官の観護に付すること
2.少年鑑別所に送致すること」
【★14】 法律では,原則2週間,特に必要があるときに1回更新,となっていますが,2週間ではその子がどんな子かを見極めきれないので,更新されることのほうがふつうです。
少年法17条3項 「…少年鑑別所に収容する期間は,2週間を超えることができない。ただし,特に継続の必要があるときは,決定をもって,これを更新することができる」
同条4項 「前項ただし書の規定による更新は,1回を超えて行うことができない」
【★15】 裁判所のウェブサイトの司法統計で確認することができます。
http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/B23DSYO28~29.pdf
【★16】 刑事訴訟法289条1項 「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には,弁護人がなければ開廷することはできない」

 

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