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2013年4月

2013年4月 1日 (月)

お年玉を親に使われてしまった

 

 お正月に,おじからお年玉をもらいました。そのときに,お父さんが「お母さんに預(あず)けなさい」というので預けたんですが,あとになって,お母さんから「冷蔵庫を買うために使ってしまった」と言われました。有名な弁護士さんが,親がお年玉を使っても全く問題ないって言っていたんですが,ほんとうなんですか。

 

 私はその弁護士さんがどのように言ったのか知りませんが,法律上,お母さんがあなたのお年玉を勝手に使うことは,してはいけないことです。


 20歳になるまでは,子どもの財産は,「親権(しんけん)」を行う人が,管理します【★1】


 あなたの場合,お父さんとお母さんが親権者(しんけんしゃ)です【★2】


 人は,ほんらい,自分の財産は,自分で管理し,自分で好きなように使っていい,という自由があります。


 でも,経済のしくみはとても複雑(ふくざつ)です。

 経済のしくみがわかるようになるまでの子どものときや,

 お年寄りになって判断する力が弱くなってきたときなどは,

 他の人にだまされて,財産をうしなったり,大きな借金を背負わされたりする危険があります。

 だから,そういう人には,その人に代わって,その人のために,財産を管理したり使ったりするサポーターを,法律ではつけているのです。

 子どもの場合は,そのサポーターが,「親権」を行う人です。



 ですから,お父さんがお年玉を預けなさい,と言ったのは,法律的に正しいことです。


 あなたが,せっかくもらったお年玉を,むだ遣いしないよう,あなたを守る義務が,親にはあるのです。

 ただ,ふだんのお小遣いは,自分で管理して,自分で使っていますね。

 また,中学生・高校生・大学生にもなってくると,自分で管理して,自分で使うことを親から許される金額も,大きくなってきます。

 法律は,親が許したぶんについては,子どもが自由に使っていい,としています
【★3】

 「子どもがだまされてお金を失うことはないだろう」,「お金の使い方をここで学んでもらおう」,ということを,金額の大きさや子どもの年齢に応じて,親が考えていくしくみになっているのです。



 でも,お母さんが,冷蔵庫を買うためにあなたのお年玉を勝手に使ったことは,法律的にまちがっていることです。


 親が子どもの財産を管理するのは,あくまで,その子どものためです【★4】

 管理を任(まか)されている人は,その人の財産と,自分の財産とを,ごちゃごちゃにしてはいけないのです。

 おじさんは,お年玉を,あなたが自分のために使ってほしい,というつもりであげたはずです。

 もらったあなたも,そのお年玉を,自分のために使いたいと思って,実際に使うまでの間,親に預けていただけのはずです。



 お母さんは,「冷蔵庫はあなたも使うんだから,あなたのためでもあるじゃない」と言うかもしれません。

 でも,冷蔵庫は,ふつう,お父さんとお母さんが家計の中でやりくりして買うものです。

 もし,万一,家計に余裕(よゆう)がなくて,親があなたのお年玉からもお金を出してもらいたいと思うなら,少なくとも,きちんと話し合って,あなたのためでもあるんだ,ということあなた自身が納得してから,出すようにしなければなりません。



 インターネットを見ると,こんな記事を見ることがあります。

 「親は,子どもを育てるのに必要なお金と,子どもから預かっているお金とを差し引きできると法律に書いてある。だから,親が子どものお年玉を使ってもいい」。

 でも,それは間違いです。

 差し引きしていいのは,たとえば,お年玉を銀行に預けたときの利子分などだけです。

 お年玉そのものを,子どもを育てるのに必要なお金と差し引きすることまで,法律は認めていません
【★5】


 親が子どもの財産を勝手に使ってしまったら,親は,その分を,子どもに返さなければいけません【★6】

 お年玉程度の金額であればまだしも,子どもにもっと大きなお金があって,それを親が勝手に使ってしまったら…
【★7】

 そんなときには,裁判所が,子どもの財産を管理することを親に禁止したり
【★8】,親から「親権」そのものをうばったりすることさえあります【★9】


 今回,使われてしまったお金を返してほしいと親と話すことは,そう簡単なことではないかもしれません。

 自分にお金をかけて育ててもらっている親に,なかなか言いづらいですよね。

 「弁護士がこう言っていた」,という言い方をするのは,かえって親の気分を悪くするかもしれません。

 こういうときには,お年玉をくれたおじさんを味方につけるほうが良いと思います。

 そして,次の年からは,おじさんがお年玉をわたすときに,「このお年玉は,おじの私が管理しておきます」,と,お父さんやお母さんに言ってもらうことも,一つの手です
【★10】

 そう言ってもらうと,そのお年玉は,親が管理することができませんから,勝手に冷蔵庫代に使われる心配はありません。

 いつか自分が自分のために使いたいときに,おじさんに言えば良いのです。



 自分の財産をきちんと大切にできる人が,

 他の人の財産もきちんと大切にできるようになります。

 お金の話を細かくするのはいやらしい,と言う人もいますが,

 お金をきちんと大切にすることは,人として大事なことです。

 それは,子どもであっても,大人であっても,同じことだと思います。

 

【★1】 民法824条「親権を行う者は,子の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし,その子の行為を目的とする債務(さいむ)を生(しょう)ずべき場合には,本人の同意を得なければならない。」
【★2】 民法818条1項「成年に達しない子は,父母の親権に服する」
【★3】 民法820条「親権を行う者は,子の利益のために子の監護及び教育する権利を有し,義務を負う」
【★4】 民法5条3項「…法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は,その目的の範囲内において,未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも,同様とする」
【★5】 民法828条には,「子が成年に達したときは,親権を行った者は,遅滞(ちたい)なくその管理の計算をしなければならない。ただし,その子の養育及び財産の管理の費用は,その子の財産の収益(しゅうえき)と相殺(そうさい)したものとみなす」,とあります。この後半の部分を誤解(ごかい)している人が多いようです。東京大学の内田教授も,「828条但書(ただしがき)は,子の財産の収益を養育費に充(あ)ててよい旨(むね)規定している。言い換えれば,子の財産の元本(がんぽん)を養育費に充当(じゅうとう)することは原則して許されないのである。したがって,収益で不足する限(かぎ)り,親は自ら(みずから)の資産・労力で子を養育しなければならない」と言っています(内田貴「民法Ⅳ」295ページ)。
【★6】 「きちんと注意して管理をしなければならないのにしていなかったから,その分をきちんと返してください」(民法827条),と言うか,「やってはいけないことをしてこちらに損(そん)をさせた分を元にもどしてください」(民法709条。不法行為といいます),という言い方になります。
【★7】 実際に,親戚が亡くなって,その遺産(いさん)から,子どもが大きなお金や土地・建物を手にすることがあります。
【★8】 管理権喪失(そうしつ)の審判(しんぱん)といいます。民法835条「父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは,家庭裁判所は,…その父又は母について,管理権喪失の審判をすることができる」
【★9】 親権喪失の審判といいます。民法834条「父又は母による虐待又は悪意の遺棄(いき)があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著(いちじる)しく害するときは,家庭裁判所は,…その父又は母について,親権喪失の審判をすることができる。ただし,2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは,この限(かぎ)りでない」
【★10】 民法830条1項「無償(むしょう)で子に財産を与(あた)える第三者が,親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは,その財産は,父又は母の管理に属(ぞく)しないものとする」。誰が管理するかをはっきりさせないと,管理する人をわざわざ裁判所に選んでもらわないといけなくなりますから(同条3項),誰が管理するのかを,きちんとおじさんに言ってもらう必要があります。

 

妊娠してしまってどうすればいいかわからない【マンガ】

Ninshin1


Ninshin2


Ninshin3

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ブログ記事「妊娠してしまってどうすればいいかわからない」

妊娠してしまってどうすればいいかわからない

 

★質問部分のマンガはこちらをクリック★

 

 高校2年生のA美とB太です。コンドームを使っていなかったので,先日,A美が妊娠(にんしん)してしまいました。自分たちがどうすればいいのか,親にも誰にも相談できません。

 

 子どもを産むか,中絶(ちゅうぜつ)するか,どちらも大事な選択です。

 いろんなことを理解したうえで,二人でよく話し合い,そして最後は必ず親とも話し合って,決めて下さい。




 子どもを産むと決めたら,法律ではどうなるか。



 二人は結婚していませんから【★1】,生まれてくる子どもは,A美さんの子どもとして,A美さんの戸籍(こせき)に入ります。

 その子の父がB太君に間違いないのであれば,役所に,「自分が父です」という届出をします。

 これを「認知(にんち)」といいます。

 生まれてくる前に認知をすることもできますし,生まれた後ですることもできます
【★2】

 この認知には,B太君の両親の了解も,A美さんの両親の了解も必要ありません。

(生まれてくる前に認知するときは,A美さんの了解が必要です。)



 でも,その子に対して,親としての法律上の権利や義務【★3】を持つのは,A美さんでもB太君でもなく,A美さんの両親です【★4】

 A美さんが20歳になるか,A美さんとB太君が結婚するときまでは,そうなります。

 ですから,A美さんの両親にないしょで産むと,いろんな問題を起こします。



 父であるB太君は,生まれてくる子に,きちんと責任を負う必要があります。

 たとえA美さんと結婚していないとか,A美さんや子どもと一緒に暮らしていないとかいう場合でも,子どもが育っていくために必要なお金をずっと払っていかなければなりません。

 これを「養育費(よういくひ)」といいます。

 養育費を払いたくないから,認知をしないとか,養育費の話し合いをしない,とB太君が逃げても,むりです。

 A美さんや,子どものほうから,B太君に対して認知をするよう裁判所に訴(うった)えることができます
【★5】

 養育費について話し合いがまとまらなければ,裁判所が金額を決めます
【★6】

 それでもB太君が養育費を払わなければ,アルバイトの給料や貯金などの財産が強制的(きょうせいてき)に差し押さえられます。



 子どもが生まれれば,A美さんの家族にとっても,B太君の家族にとっても,新しい「親族」が増えることになります。

 家族のうち誰が誰の面倒をみるのか,ということもかかわってきます
【★7】

 遠い将来,親族のうち誰かが亡くなったときの,遺産の分け方にもかかわってきます
【★8】



 子どもを産まないと決めたら,法律ではどうなるか。


 みなさんは,「子どもを堕(お)ろす」という言い方をよくしますが,私はその言い方はしたくありません。

 人工妊娠中絶,あるいは単に中絶,といいます。

 ほんらい,中絶をすることは,犯罪です
【★9】

 でも,経済的なことなど,いろんな事情があるときには,中絶をすることが認められています
【★10】

 法律的には,A美さんの判断だけで中絶ができます
【★11】

 しかし,実際には,病院は,A美さんの親や,B太君,B太君の親にも,中絶手術についての同意(どうい)をもとめてくるところがほとんどです。

 何かトラブルになったときに病院がまきこまれないように,法律では必要とされていない人の意見まで確認しておく病院がほとんどなのです。

 このことは逆にいえば,それだけ,中絶について家族ときちんと話をしておかなければ,トラブルが起きることが実際に多い,ということです。

 また,妊娠22週(=妊娠6ヶ月)を超えると,中絶をすることは法律上できません
【★12】


 実際に中絶をしたら,胎児はどうなるか。

 妊娠12週(=妊娠4ヶ月)以降のときは,「死産」として届け出て,きちんと埋葬(まいそう)しなければいけません
【★13】

 それ以前の中絶の胎児は,地域によっては火葬するところもありますが,現状では,医療廃棄物として取り扱われるところが多いです
【★14】


 中絶にかかる費用は,男女で2分の1ずつ負担するのがふつうです。

 最近では,支払いをしなかった男性に対して,2分の1を支払うようにはっきりと命じた裁判所の判決も出ています
【★15】



 産む場合と,中絶する場合の,それぞれの法律的なことだけを,上に書きました。


 しかし,実際には,それだけでなく,もっとたくさんのことを考えなければいけません。


 A美さんのお腹の中に宿(やど)っている命は,小さいけれども,大切な命です。

 「だから,命を大切にしたいからこそ,産むんだ」,という考えも,ありうると思います。

 けれど,命を大事にするということは,産むことだけで終わるのではありません。

 その子が大人になるまで,ずっとずっと長い間,その命を大切にしていかなければならないことについても,じっくりと考えなければいけません。


 二人はまだ高校生で,自分探しをしている時期です。

 やがて自分探しが落ち着いて,その自分自身を心から大切にできること,

 そして,相手のことも,同じように心から大切にできるようになること。

 あなたは,「そんなこと,今でもできています」,そう思うかもしれません。

 でも,これから学校の中でもっと学び,そして働いてお金をかせいでいく中で,それらの意味を,もっと深く分かることが多くなってきます。

 そういうふうにして,自分と相手とをもっと大切にできるようになってから,新しく迎え入れる命を大事にしていく,という生き方にも,じっくりと思いをめぐらせてみてください。

 残念ながら,お父さんもお母さんも若すぎて,まだ自分と相手のことも大事にできず,生まれてきた子どもをきちんと育てられなくて,保護しなければならないというケースを,私自身がたくさん見ています。



 子育ては,二人だけではできません。

 どんな夫婦でも,それぞれの家族,地域,いろんな人たちに支えられながら,子育てにがんばっています。

 子育てをまわりから支えてもらうことは,恥ずかしいことなどではありません。

 むしろ,絶対に必要なことなのです。

 二人はまだ高校生ですから,他の夫婦以上に,みんなに子育てを支えてもらわなければなりません。

 だからこそ,もし産むのであれば,家族にきちんと話して,協力してもらう必要があります。

 私がむかしかかわったケースで,当時は二人ともほんとうにまだ若かったですが,まわりの大人たちとよく話し合い,そして子どもを産んだ,ということもありました。

 二人はずっとみんなに支えられながら,今も立派にお父さん・お母さんをしています。

 私は二人のことがとても誇り(ほこり)です。

 ただ,他の子どもたちも,その二人と同じようにまわりから支えられながらがんばれるかというと,そんなに簡単なことではない,と感じています。


 他方で,中絶をすることも,軽い気持ちで決めてほしくありません。

 中絶は,A美さんの体に負担をかけるだけでなく,心を深く傷つけます。

 もし,中絶を選ぶこととなったとしても,その苦しみをA美さん一人だけが背負うのではなく,B太君もきちんと分かち合わなければいけません。


 もし,悩んでいるあいだに,中絶できる時期を過ぎてしまっても,

 誰にも相談できないまま,子どもを産んで死なせてしまうことだけは,絶対にしないでください
【★16】

 あなたたち自身で育てられなくても,

 その子を,他の夫婦の子どもとして育ててもらう,「特別養子縁組」というしくみもあります
【★17】




 産むとしても,中絶するとしても,どちらにしても大事なことです。

 今まで私が書いてきたことを,二人でよく確認してみてください。

 そして,今は話しにくいかもしれませんが,早いうちに必ず,親と一緒に話し合って下さい。



 今回のことをきっかけにして,

 自分が家族から大切にされているか,

 自分が自分を大切にしているか,

 そして,自分がパートナーを大切にしているか,

 そのことを,あらためて見つめ直してみてください。



 セックスは,人間として大切なコミュニケーションの一つです。

 だからこそ,これからは,そのコミュニケーションの結果で自分自身や相手が苦しみ悩んでしまうことのないようにしてほしい,と私は願っています。

 そして,ほんらい,大人の私たちには,そのメッセージをきちんと子どものみなさんに伝えていく責任がある,と,私は思っています。

 

【★1】 民法731条「男は,18歳に,女は,16歳にならなければ,婚姻(こんいん)をすることができない」
【★2】 民法779条「嫡出(ちゃくしゅつ)でない子は,その父又は母がこれを認知することができる」(嫡出でない子,というのは,結婚していない男女の間に生まれた子どものことです)
 民法783条1項「父は,胎内(たいない)に在(あ)る子でも,認知することができる。この場合においては,母の承諾(しょうだく)を得(え)なければならない」
【★3】 これを「親権(しんけん)」といいます。民法820条「親権を行う者は,子の利益のために子の監護(かんご)及(およ)び教育をする権利を有(ゆう)し,義務を負う」
【★4】 民法833条「親権を行う者は,その親権に服する子に代わって親権を行う」
【★5】 民法787条「子,その直系卑属(ちょっけいひぞく)又はこれらの者の法定代理人は,認知の訴えを提起(ていき)することができる」
【★6】 民法877条~880条(扶養の請求)または民法788条・766条(子の監護に関する処分の請求)
【★7】 実際はあまり役に立っていない規定ですが,「扶養(ふよう)」という規定があります。
民法877条1項 直系血族(ちょっけいけつぞく)及び兄弟姉妹は,互(たが)いに扶養をする義務がある。
同条2項 家庭裁判所は,特別の事情があるときは,前項に規定する場合のほか,3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
【★8】 相続(そうぞく),遺産分割(いさんぶんかつ)。民法886条~
【★9】 刑法212条 妊娠中の女子が薬物を用い,又はその他の方法により,堕胎(だたい)したときは,1年以下の懲役(ちょうえき)に処(しょ)する。
【★10】 母体保護法14条 …指定医師…は,次の各号の一に該当(がいとう)する者に対して,本人及び配偶者(はいぐうしゃ)の同意を得て,人工妊娠中絶を行うことができる。
一  妊娠の継続又は分娩(ぶんべん)が身体的又は経済的理由により母体の健康を著(いちじる)しく害するおそれのあるもの
二  暴行若(も)しくは脅迫(きょうはく)によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫(かんいん)されて妊娠したもの
【★11】 未成年者なので手術に親の同意がいるようにも思えますが,母体保護法で親の同意について規定がないこと,15歳以上であれば遺言(いごん)を書く能力もあり(民法961条),臓器提供の意思表示もできることも参考にして,妊娠した未成年の女性本人の同意だけで足りる(親の同意は不要)とするのが法律上の解釈(かいしゃく)です。
 また,妊娠させた男性の側についても,母体保護法3条で,「配偶者」を,「届出をしていないが,事実上婚姻(こんいん)関係と同様な事情にある者を含む」と説明していますので,事実上夫婦のような関係にまでなっていなければ,男性の同意は不要,というのが法律の定めです。
【★12】 母体保護法2条2項「この法律で人工妊娠中絶とは,胎児が,母体外において,生命を保続(ほぞく)することのできない時期に,人工的に,胎児及びその附属物(ふぞくぶつ)を母体外に排出(はいしゅつ)することをいう。」
 平成2年3月20日付厚生省発健医第55号「優生保護法第2条第2項の『胎児が,母体外において生命を保続することのできない時期』の基準は,通常妊娠満22週未満であること」
【★13】昭和21年厚生省令第42号(死産の届出に関する規程),墓地埋葬等に関する法律2条1項「この法律で『埋葬』とは,死体(妊娠4箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬(ほうむ)ることをいう。」
【★14】平成16年9月24日環境省「妊娠4か月(12週)未満の中絶胎児の取扱いに関するアンケート調査結果及び今後の対応について」
【★15】東京高裁平成21年10月15日判決,判例時報2108号57頁。妊娠した女性のがわは,体も心も苦痛にさらされるし,経済的な負担も負うことになるけれども,そもそもそうなったのは二人がセックスをしたことから始まっているのだから,女性一人だけが苦痛や負担を負うのではなく,二人で分担しなければいけない,と述べています。
【★16】 保護責任者遺棄(いき)致死(ちし)罪や,殺人罪などになります。
 刑法218条 老年者,幼年者,身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄(いき)し,又はその生存に必要な保護をしなかったときは,3月以上5年以下の懲役に処する。
 刑法219条 前2条の罪を犯し,よって人を死傷させた者は,障害の罪と比較して,重い刑により処断する。
 刑法199条 人を殺した者は,死刑又は無期若(も)しくは5年以上の懲役に処する。
【★17】 民法817条の2第1項 家庭裁判所は,次条から第817条の7までに定める要件があるときは,養親となる者の請求により,実方の血族との親族関係が終了する縁組…を成立させることができる。
 民法817条の7 特別養子縁組は,父母による養子となる者の監護が著(いちじる)しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において,子の利益のため特に必要があると認めるときに,これを成立させるものとする。

万引きがバレて私立中学を退学するように言われてる

 

 私立の中学校に通っています。友だちと一緒にやってしまった万引きが見つかって,学校から,「自主退学するように。自主退学しなければ退学処分にする」と言われています。友だちは,親が自主退学の手続をとってしまったみたいです。僕も退学しないといけないですか。

 

 あなたが「退学はおかしい」と感じているなら,自主退学をする必要はありません。


 万引きがやってはいけないこと,りっぱな犯罪であることは,あなた自身も分かっていることだと思います【★1】

 警察は,犯罪をとりしまるのが役割ですから,あなたに注意をし
【★2】,時には事件として扱います【★3】

 学校も,あなたを立派な人間に育てるのが役割ですから,やはりあなたに注意をし,そして,時には処分をします。

 やってしまった万引きについては,あなた自身も,きちんと反省をしなければなりません。

 でも,だからこそ,警察や学校からの注意や処分は,あなたのやってしまったことの重大さや,あなたの反省の深さとつり合う内容でなければいけません。

 やってしまったことがあまりにもひどかったり,あなたがきちんと反省していなかったりしたら。

 そうであれば
,少年院に行かなければならないこともあるでしょうし,学校をやめなければならないときもあるでしょう。

 反対に,一回かぎりのあやまちで,被害(ひがい)も大きくなく,あなたがきちんと反省しているのだとしたら。

 そうであれば,警察官からの注意ですむこともあるでしょうし,学校からも先生からの注意や自宅謹慎(きんしん)程度ですむこともあるでしょう。

 だけど,一回かぎりのあやまちで,被害も大きくなく,あなたがきちんと反省しているのに,少年院に行かないといけない,学校をやめなければいけない,としたら。

 それは,いくらあなたの間違ったおこないがきっかけだとしても,おかしなことです。



 長い人生の中で,学校に通っている時間は,かぎられた,そして,とても大切な時期です。

 どこの学校に通うかということは,とても大事なことです。

 退学というのは,その大事なことを奪(うば)ってしまう,とても重い処分です。

 本当にそのような重い処分まで必要なのか,とあなたが疑問に思うのはもっともです。

 学校が注意をしても本人が立ち直る見込みがなくて,これ以上学校に置いておけない,というよっぽどのことがないかぎり,退学の話になるのはおかしいはずです
【★4】


 退学は,ふつう,生徒のほうから「学校をやめます」と言う,「自主退学」がほとんどです。

 未成年なので,親が自主退学の書面を書いて学校に出します。

 あなたの友だちは,親が出してしまったのですね。

 あなたは今,学校から自主退学をうながされている,勧(すす)められている立場です。

 自主退学するかどうかは,あくまで,あなたとあなたの親が決めてよいのです。

 ですから,納得できなければ,自主退学の書面を出さないでください
【★5】

 そして,きちんと反省していることをしっかりと学校に伝えて,学校に通いたいということを学校とのあいだでよく話し合うことが大切です。



 こちらが自主退学の手続を取らなければ,学校が,あなたを退学させることをあきらめる,ということも,けっこうあります。

 反対に,学校があきらめずに,「退学処分」をしてしまうときもあります。

 学校には,「懲戒(ちょうかい)処分」の規定があります。

 学校によってルールの名前はまちまちですが,「校則」「学則」などの名前で,生徒手帳に書かれていることが多いです。

 そこに書かれている規定に沿(そ)って,「何月何日をもって退学を命ずる」という文書が出されます。

(逆にいえば,その文書がなければ,まだ退学処分はされていないということ,自主退学をうながされているだけということです)。



 その退学処分にあなたが納得ができなければ,裁判所で争(あらそ)う方法があります。

 ほんとうに退学しなければならないのかどうかを,裁判官に判断してもらうのです。

 難しい言葉ですが,「地位保全(ちいほぜん)仮処分命令(かりしょぶんめいれい)の申立(もうしたて)」という手続です。

 ふつうの裁判はとても時間がかかりますが,このような事件では,だいたい1,2ヶ月程度で裁判所の判断がなされます。

 裁判でもダメで退学となっても,地元の公立中学校できちんと受け入れてもらえますから,安心してください。



 自主退学を断(ことわ)るとどうなるか,

 自主退学をどうやって断ったらよいか,

 学校とどうやって話し合いを進めていけばよいか,

 退学処分になったときに,裁判所の仮処分の申立がどうやって進むか,費用がどうなるか,

 など,あなたが,親と,そして弁護士と一緒に,よく話し合うことが大切です。



 短い時間であまり考えずにあわてて自主退学をしてしまい,一生の後悔(こうかい)が残ることだけは,してほしくありません。

 学校が自主退学を勧(すす)めるとき,「退学処分ではお子さんに傷がつきますよ,自主退学であれば傷が小さくてすみますよ」と言うことが多いです。

 でも,実際には,ほんとうは退学する必要なんてないし納得もしていないのに追い出された,という思いを将来ずっと引きずる傷のほうが,はるかに大きいと思います。

 あなた自身が親や弁護士など大人たちと一緒に一生懸命考え,そして自分で選んだ道であれば,たとえその結果がどんなものであれ,自信をもってこの先の人生を歩んでいくことができます。


 私は,最近の学校が,教育することを軽々とあきらめて,退学処分を出してしまうことが,とても気になります。

 でも,今回のことをきっかけに,あなたが自分自身を振り返り,これからの自分の道を自分で考えて,選び,動いていくことこそが,あなた自身のなによりの「教育」になると確信しています。

 自分の都道府県の弁護士会か,最寄り(もより)の弁護士会の相談窓口に連絡してみてください(弁護士会の相談先は,「弁護士に相談するには」の記事を見て下さい)。

 

【★1】 窃盗(せっとう)罪です。刑法第235条「他人の財物(ざいぶつ)を窃取(せっしゅ)した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役(ちょうえき)又は50万円以下の罰金に処(しょ)する」
【★2】 「補導(ほどう)」といいます。警察から注意を受け,場合によっては親や学校,職場に連絡がいきます。この「補導」は,法律(国会で決めたルール)や条例(都道府県や市区町村で決めたルール)ではなく,警察の内部で決めたやりかたです
 少年警察活動規則2条「この規則において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。…六  不良行為少年 非行少年には該当しないが,飲酒,喫煙,深夜はいかいその他自己又は他人の徳性を害する行為…をしている少年をいう」
 少年警察活動規則14条「不良行為少年を発見したときは,当該不良行為についての注意,その後の非行を防止するための助言又は指導その他の補導を行い,必要に応じ,保護者(学校又は職場の関係者に連絡することが特に必要であると認めるときは,保護者及び当該関係者)に連絡するものとする」
【★3】 その後,家庭裁判所に呼び出されて裁判官から注意を受けたり,場合によっては少年院に行きなさいと言われることもあります。
【★4】 「退学処分は,生徒の身分を剥奪(はくだつ)する重大な措置(そち)であるから,当該(とうがい)生徒に改善の見込みが無く,これを学外に排除(はいじょ)することが社会通念からいって教育上やむをえないと認められる場合に限(かぎ)って選択すべきものである」(東京高裁平成4年3月19日判決,判例時報1417号40頁)。そして,その判断要素として,「校則違反の態様,反省の状況,平素(へいそ)の行状(ぎょうじょう),従前(じゅうぜん)の学校の指導及び措置,並(なら)びに処分に至(いた)る経過等」の諸事情があります(最高裁平成8年7月1日判決,判例時報1599号53頁)。
【★5】 一度書面を出してしまうと,それをなかったことにする(撤回(てっかい)する)ことはとても大変です。ただし,場合によっては撤回することができることもありますので,弁護士に相談してください。

 

弁護士に相談するには

 弁護士に相談したい,弁護士に話を聞いてほしい,弁護士の意見を聞きたい。


 そんなときは,ぜひ,弁護士会の専用窓口に電話してください。

 私と同じように,子どもの問題に取り組んでいる弁護士と話をすることができます。

 電話ですから,相談の費用はかかりませんし,名前を名乗る必要もありません。

 下の連絡先は,日弁連のウェブサイトで紹介されているもののうち,専用の電話回線をもっているところだけを挙げてあります(2016年8月現在)。


 http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/child_rights/contact.html

 自分の都道府県がなくても,近くの弁護士会に電話してかまいません。

 また,「専用の電話ではないけれども相談はできる」という弁護士会もありますので,自分の都道府県の弁護士会に確認してみてください。

 

★東京弁護士会「子どもの人権110番」 03-3503-0110
月~金:13:30~16:30,17:00~20:00
土:13:00~16:00
(面接相談も無料。まず電話で相談して,面接相談したいと伝えてください)

http://www.toben.or.jp/bengoshi/madoguchi/children.html

★第二東京弁護士会「子どもの悩みごと相談」 03-3581-1885
火・木・金:15:00~17:00
(面接相談も無料。前日17時までに03-3581-2257で予約してください)


★東京三会多摩支部「弁護士子どもの悩みごと相談」 042-548-0120
水:14:00~19:00
(面接相談も無料。まず電話で相談して,面接相談したいと伝えてください)


★神奈川県弁護士会「子どもの人権相談」 045-211-7700
木:13:15~16:15
(面接相談も無料。電話で事前予約)


★埼玉弁護士会「子ども弁護士ホットライン」 048-837-8668
木:15:00~18:00


★新潟県弁護士会「子どもの悩みごと相談」 0120-66-6310
月・木:16:00~19:00


★大阪弁護士会「子どもの人権110番」 06-6364-6251
毎週水15:00~17:00,毎月第2木曜日18:00~20:00


★京都弁護士会「子どもの権利110番」 075-231-2378
金:15:00~17:00 (受付は16:30まで)


★愛知県弁護士会「子どもの人権相談」 052-586-7831
土:9:15~17:15


★岐阜県弁護士会「子どもの悩みごと相談」 058-265-2850
平日9:00~16:30


★金沢弁護士会「子どもの悩み事相談」 076-221-0831
木:12:30~16:30


★広島弁護士会「子どもの悩みごと電話相談」 090-5262-0874
平日16:00~19:00


★福岡県弁護士会「子どもの人権110番」 092-752-1331
土:12:30~15:30


★宮崎県弁護士会「子どもの権利ホットライン」 0985-23-6112
毎月第1,第3月曜日16:00~17:30


★仙台弁護士会「子ども相談窓口」 022-263-7585
月~金:9:30~16:30


★札幌弁護士会「子どもの権利110番」 011-281-5110
木:16:00~18:00

 

 このブログを書いている山下に相談したい,という人もいるかもしれません。

 私は,ふだん仕事でメールを使っていません(プライベートでもほとんど使いません)。

 メールのやりとりよりも,実際に会って話をすることを大事にしています。

 もし,「山下に連絡をとりたい」という人がいたら,私の事務所に手紙をください。

 また,東京の四ツ谷の事務所に来て会って話ができるようなら,事務所に電話をください。

 日程を調整しましょう。

(一人で相談に行くのが不安な人は,信頼できる人と一緒に来てもらってもかまいません。)



 〒160-0008
 東京都新宿区三栄町8番地 森山ビル東館3階
 永野・山下法律事務所
 弁護士 山下 敏雅
 電話:03-5919-1194

 

逮捕された!早く外に出たい

 

 今日,警察に逮捕されてしまいました。一日も早く家に帰りたいんですが,いつ外に出られますか。

 

 ケースによります。その日のうちに出られることもあれば,ずっと出られないこともあります。


 外に出られるかどうかについての,いくつか重要なタイミングがあります。

 ① 逮捕から72時間(3日)

 ② 勾留請求から20日

 ③ 家庭裁判所送致から4週間



 このうち,この記事では,①を中心にお話しします。


①逮捕から72時間(3日)



 逮捕されたときから72時間(3日間)は,ひとりぼっちです【★1】

 この3日間は,家族でさえ,あなたと会って話をすることができません。



 警察署に閉じこめられ,取り調べが始まります。

 自分の言い分をどうやって警察に言えばいいのかは,大人でも難しいことです。

 まして,子どもであれば,もっと難しいことです。



 この先自分がどうなるのか,いつ外に出られるかわからない。

 たまらなく不安になります。

 そんな中,「警察の言うことにしたがえば早く外に出られる」,そんなふうに思わされます。

 そして,警察に言われるがままに,本当ではないことを,言わされたり,書かされたりする人が,とても多いのです。

 だけど,一度そんなふうに本当ではないことを言ったり書いたりすると,あとの裁判でひっくり返すことは,簡単ではありません。



 この3日間,あなたに会えるのは,弁護士だけです。

 でも,この3日間は,「国選(こくせん)弁護」
【★2】という制度がありません。

 あなたや家族が何もしないと,弁護士は来てくれません。

 弁護士は,警察につかまった人たちのために,毎日当番で待機しています。

 呼ばれたら,すぐに会いに行くことができます。

 お金の心配もいりません。

 ですから,
できるだけ早く弁護士を呼んでください。

 弁護士を呼ぶように,警察官に強く言ってください。

 取り調べる警察官に言ってもいいですし,留置場(りゅうちじょう)にいる警察官に言ってもかまいません。

 そうすると,警察官が,弁護士会に連絡しなければいけないことになっています。

 また,あなたの家族が弁護士会に連絡するのでもかまいません。

 東京の場合は 03-3580-0082 です。

 そのほかの都道府県の場合は,それぞれの弁護士会の連絡先を調べてください。



 弁護士は,早く外に出られるようにいろんな活動をします。

 また,あなたの処分(しょぶん)が不当に重くならないように,いろんな活動をします。

 弁護士としての,とても大切な活動です。



 
 「犯罪をしていない」,

 「犯罪はしたけれど,被害者や警察が言っているようなひどいことまではしていない」,

 「犯罪はしたけれど,自分にも言い分がある」,

 あなたの言い分を,警察官,検察官,裁判官などに,しっかりと伝えます。



 「自分は犯罪をしてしまったんだから,弁護士なんてつけても意味がない」,

 そんなふうには考えないでください。



 犯罪をしてしまったのであれば,

 どうして犯罪をしてしまったのか,

 被害者にどう謝ればいいのか,

 自分の家族とこれからどういう関係を築(きず)いていけばいいのか,

 今後犯罪をしないようにするためにどうすればいいのか,

 それを,あなたと一緒に考えます。



 まちがったことをした人でも,一人ひとりが大切な存在です。

 逮捕されたことをきっかけにして,「これからしっかりと暮らし,生きていくために,どうすればいいのか」を,弁護士と一緒に考えること。

 それが,とても大切なのです。



 「弁護士をつけると反省していないと思われるぞ」,と警察が言うかもしれません。

 でも,それは間違いです。

 弁護士はむしろ,どうやって反省すればいいのかを,あなたと一緒に考えるのです。



 「弁護士は金がかかるから親に迷惑をかけるぞ」,と警察が言うかもしれません。

 それも間違いです。

 お金のことも,心配いりません。

 あなた自身に大きなお金がなく,親もお金を出せない。

 そして,この3日間には「国選弁護」がないので,国も弁護士の費用を出してくれない。

 そんなときのために,日本中の弁護士全員がお金を出し合い,担当する弁護士に,そこからお金を出すしくみを作っています。



 お金がなくて犯罪をしてしまう環境(かんきょう)にいる人ほど,自分自身を見つめ直し,立ち直っていくために,弁護士のサポートが必要なはずです。

 それなのに,「お金がないから弁護士のサポートが受けられない」
,というのでは,おかしいのです。

 だから,弁護士全員でお金を出し合っています。



 「こんな子に弁護士なんかつけなくていい」,と親が言うかもしれません。

 でも,逮捕という大事なときに,そんなことを親が言うのは,さみしいことです。

 警察につかまるよりも前から,あなたにとって,家は,さみしい場所だったのではないですか。

 ひとりぼっちだったのではないですか。

 そんな子どもほど,弁護士がサポートしていく必要があります。

 親が弁護士を付けることに反対していても,あなた自身が弁護士をつけたいと思えば,付けることができます。

 そして,弁護士は,そんな親とも,あなたの立場に立って話をします。




 警察が捜査した結果,あなたが「犯罪をしていない」とか,「犯罪をしそうではない」【★3】,ということが警察官にわかったときには,そのときに外に出られます。


 軽い犯罪であれば,3日間で捜査が終わることもあります。

 捜査が終わって,「あとで家庭裁判所から呼び出しがあったとしても,自分でちゃんと裁判所に行けるだろう」と思ってもらえれば,外に出られます。

 ただし,実際には,3日間で捜査が終わることは少ないです。



 捜査が終わっていないけれども,外に出られる,ということもあります。

 
「あとで警察などが呼び出したとしても,自分でちゃんと来るだろう。返す家もあるし,逃げてしまう危険もないし,証拠を隠(かく)したり他の人と口裏(くちうら)合わせをすることもないだろう」と思ってもらえれば,外に出られます【★4】


 早く出られるかどうかは,「起きた事件がどんな内容か」ということはもちろん,「あなたがどれだけ深く反省しているか」,「あなたの家がどんな状況(じょうきょう)か」,「被害者と話し合いができているか」,など,いろんなことを見て決まります。

 ですから,一つ一つの事件で進み方が違うので,このブログでは,その全部を説明することができません。

 ぜひ,すぐに弁護士を呼んで,あなたの事件の場合の見通しを聞いてください。




 もし3日以内に外に出られなかった場合の,その後のことを,簡単に説明します。

 ただし,一般的なことだけをわかりやすく書きますので,ここに書いたのとはちがう流れになることもありますから,注意してください。

 くわしくは,また別の記事で書きます。



②勾留請求から20日


 逮捕後72時間のうちに,検察官(けんさつかん【★5】)が,「捜査を続けるためにもっと長くつかまえておきたい」と裁判官に連絡し【★1】,裁判官がこれを認めると,長くつかまったままになります。

 この,長くつかまることを,「勾留(こうりゅう)」と言います。

 「返す家がない」「逃げてしまうかもしれない」「証拠を隠したり他の人と口裏合わせをするかもしれない」と思われたときに,そうなります
【★4】

 ただし,子どもの場合は,大人の場合とちがって,本当に必要なときにしか勾留をしてはいけないことになっています
【★6】


 場所は,そのまま警察署にとめおかれることがほとんどです。

 本当は警察署にとめおくことには問題があるのですが,実際はそうされています
【★7】【★8】


 原則10日間とめおかれ,捜査が終わらなければ,さらに最大10日間延ばされます【★9】

 しかし,実際には,「延ばすのが当たり前,20日間とめおいて当たり前」というような,不当な取扱いが多いです。

 日にちの計算は,検察官が裁判官に連絡した日(勾留請求の日)を1日目として数えます。



 この期間は,平日の昼間であれば,家族や友だちも,面会や差し入れができます【★10】

 でも,共犯者(きょうはんしゃ)がいたりして,面会や差し入れができないときもあります。

 そのときは,弁護士だけが面会や差し入れができます
【★11】

 最近,法律が変わって,ほとんどの事件で,この「勾留」のときから「国選弁護」が付くようになりました
【★12】

 でも,上に書いたように,「勾留」よりも前の,最初の72時間が大事ですから,逮捕のときに弁護士を呼んでください。



③家庭裁判所送致から4週間


 捜査が終わると,検察官が家庭裁判所に事件を送ります。

 そして,家庭裁判所での判断をするまでの間,「あなたがどういう人かを見極(みきわ)める必要がある」,と裁判官が考えると,さらに長くつかまったままになります。

 これを,「観護措置(かんごそち)」と言います
【★13】

 場所は,少年鑑別所(かんべつしょ)にとめおかれます。

 鑑別所は,少年院とはちがい,あなたがどんな人なのかを見るための場所です。



 4週間後に,裁判所での「審判(しんぱん)」が開かれます(ちょうど4週間後のときもありますが,それよりも少し早い日のほうが多いです)【★14】

 その審判で,「家に帰っていい」,と言われることもあれば,「施設(少年院など)に行きなさい」,と言われることもあります。

 いろんなパターンがあるので,くわしくは,また別の記事で書きます。



 この4週間,弁護士は,「付添人(つきそいにん)」という名前で活動します。

 「国選付添人」という制度がありますが,警察署にいたときの「国選弁護」よりも,弁護士がつけられる事件の範囲がせまい,という問題があります。

 でも,捜査のあいだあなたについてくれていた弁護士に,必ず,そのまま「付添人」として活動を続けてもらってください。

 その弁護士の費用も,お金のない人の事件であれば,弁護士全員でお金を出し合った中から出してもらえますから,心配する必要はありません。



 平成23年に少年院に行きなさいと裁判所から言われた子どもは,3187人でした。

 そのうち,弁護士がついていたのは2518人です
【★15】

 669人もの子どもたちが,弁護士がいないまま裁判がされて,少年院に行くように言われているのは,おかしなことです。

 大人であれば,ほぼすべての事件で,弁護士がついていないと,裁判じたいが開けないことになっています
【★16】

 子どものほうが大人よりも弁護士のサポートが必要なはずなのに,ちぐはぐで,おかしなことですよね。

 そのことも,
また別の記事で書こうと思います。


(注:この記事を書いた後の,2014年6月,法律が変わって,子どもの裁判でもほとんどの事件で弁護士が国選で付くようになりました。くわしくは,「子どもの犯罪の裁判に国選の弁護士は付くの?」の記事を見てください。)

 

【★1】 72時間というのは,本文でも書いたように,検察官(けんさつかん)が裁判官に「もっと長くつかまえておきたい」と求める(勾留請求)までのタイムリミットです。
刑事訴訟法205条1項 「検察官は,…被疑者(ひぎしゃ)を受け取ったときは,弁解(べんかい)の機会を与え,留置(りゅうち)の必要がないと思料(しりょう)するときは直(ただ)ちにこれを釈放(しゃくほう)し,留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。」
同条2項 「前項の時間の制限は,被疑者が身体を拘束(こうそく)された時から72時間を超えることができない。」
【★2】 お金がない人,弁護士のツテのない人には,国が弁護士を選んで付けてくれる制度です。お金がない人は,弁護士の費用(ひよう)も,国が出してくれます。
 でも,本文で書いたとおり,逮捕されてからの72時間(3日間)は,この国選弁護のしくみがありません。
【★3】 「ぐ犯(ぐはん)」と言います。子どもの場合は,犯罪をしていなくても,犯罪をするかもしれない,というときには,裁判になることもあるのです。
少年法3条「次に掲げる少年は,これを家庭裁判所の審判に付する。…
3.次に掲げる事由があって,その性格又は環境に照して,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
 イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
 ロ 正当の理由がなく家屋に寄り附かないこと
 ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し,又はいかがわしい場所に出入すること
 ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること」
【★4】 引き続き長くとめおく「勾留(こうりゅう)」をすることができるのは,刑事訴訟法60条1項に書かれている場合です。
刑事訴訟法207条1項 「前3条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は,その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。…」
刑事訴訟法60条1項 「裁判所は,被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で,左の各号の一にあたるときは,これを勾留することができる。
一  被告人が定まつた住居を有しないとき。
二  被告人が罪証(ざいしょう)を隠滅(いんめつ)すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」
【★5】 「警察官」と発音が似ているのでややこしいですが,別の人です。検察官は,弁護士や裁判官と同じように,法律家です。警察と協力しながら事件を捜査し,ずっとつかまえるか外に出すかを決めたり,犯人の処分を求めて裁判所の手続をとったりします。
【★6】 少年法43条3項 「検察官は,少年の被疑事件については,やむを得ない場合でなければ,裁判官に対して,勾留を請求することはできない」
 少年法48条1項 「勾留状は,やむを得ない場合でなければ,少年に対して,これを発することはできない」
【★7】 本当は,警察署の中にとめおくのは,おかしいのです。捜査をする警察署の中にずっといさせられるのは,とても苦痛ですし,フェアではありません。そのため,外国では,警察以外の場所でつかまえておくことになっています。日本でも,法律の建前では,そうなっていて,あくまで例外的に警察署でもいい,となっています。しかし,その原則と例外が逆になって,警察署にとめおかれることのほうがふつうになってしまっています。これを「代用監獄(だいようかんごく)」と言います。
刑事訴訟法64条1項「…勾留状には…勾留すべき刑事施設…を記載(きさい)し…なければならない。」
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律15条「第3条各号に掲(かか)げる者は,…刑事施設に収容(しゅうよう)することに代えて,留置施設に留置することができる。」
【★8】 子どもの場合,大人の勾留とは違う形で,鑑別所にとめおくこともできる規定があります。これらの規定がちゃんと活用されるべきなのですが,実際にはほとんど活用されず,大人と同じように警察にとめおかれています。
少年法43条1項 「検察官は,少年の被疑事件においては,裁判官に対して,勾留の請求に代え,第17条第1項の措置を請求することができる。」
少年法48条2項 「少年を勾留する場合には,少年鑑別所にこれを拘禁(こうきん)することができる。」
【★9】 刑事訴訟法208条1項 「前条の規定により被疑者を勾留した事件につき,勾留の請求をした日から10日以内に公訴(こうそ)を提起しないときは,検察官は,直ちに被疑者を釈放しなければならない。」
同条2項 「裁判官は,やむを得ない事由があると認めるときは,検察官の請求により,前項の期間を延長することができる。この期間の延長は,通じて10日を超えることができない。」
【★10】 刑事訴訟法80条 「勾留されている被告人は,第39条第1項に規定する者以外の者と,法令の範囲内で,接見(せっけん)し,又は書類若しくは物の授受(じゅじゅ)をすることができる…」
 「第39条第1項に規定する者」というのは,弁護士のことです。
 刑事訴訟法39条1項 「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は,弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者…と立会人なくして接見し,又は書類若しくは物の授受をすることができる。」
【★11】 刑事訴訟法81条 「裁判所は,逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは,検察官の請求により又は職権で,勾留されている被告人と第39条第1項に規定する者以外の者との接見を禁じ,又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲(けんえつ)し,その授受(じゅじゅ)を禁じ,若(も)しくはこれを差し押えることができる…」
【★12】 被疑者国選(ひぎしゃこくせん)と言います。実は,この被疑者国選のしくみが始まったのは,最近のことです。以前は,警察が捜査している間は国選弁護がなく,大人の刑事裁判が始まってからしか国選弁護はありませんでした。だから,自分で弁護士を頼まなければならなかったのです。
 それがおかしい,と弁護士の先輩たちが活動を続け,当番弁護のしくみをつくり,お金も自分たちで出し合いながら続けてきた結果,ようやく,2006年(平成18年)に国選弁護として国がきちんと費用を出すということが決まりました。それでも,スタートしたときは,殺人や強盗などにしか被疑者国選は付きませんでした。2009年(平成21年)から,長期3年を超える懲役若しくは禁固(きんこ)にあたる事件も対象となり,窃盗事件や傷害事件など,多くの事件で被疑者国選が付くようになりました。
 お金が50万円もない人には,国が弁護士の費用を払ってくれます(刑事訴訟法37の3第2項,36条の2,刑事訴訟法第36条の2の資産及び同法36条の3第1項の基準額を定める政令2条)。この50万円は,現金と預貯金の合計で,それ以外のことは関係ありません。また,つかまった子ども本人のお金の額で見ますので,親にお金があっても関係ありません。
【★13】 少年法17条1項 「家庭裁判所は,審判を行うため必要があるときは,決定をもって,次に掲(かか)げる観護の措置をとることができる。
1.家庭裁判所調査官の観護に付すること
2.少年鑑別所に送致すること」
【★14】 法律では,原則2週間,特に必要があるときに1回更新,となっていますが,2週間ではその子がどんな子かを見極めきれないので,更新されることのほうがふつうです。
少年法17条3項 「…少年鑑別所に収容する期間は,2週間を超えることができない。ただし,特に継続の必要があるときは,決定をもって,これを更新することができる」
同条4項 「前項ただし書の規定による更新は,1回を超えて行うことができない」
【★15】 裁判所のウェブサイトの司法統計で確認することができます。
http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/B23DSYO28~29.pdf
【★16】 刑事訴訟法289条1項 「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には,弁護人がなければ開廷することはできない」

 

たばことお酒はなんでダメなの?


 子どもがたばこを吸ったりお酒を飲んだりしてはダメって法律で決まっているのは知ってるけど,どうして大人はよくて子どもはダメなんですか。
 吸ったり飲んだりしたら,法律ではどうなりますか。

 

 子どもは,たばこを吸ったり,お酒を飲んだりしてはダメ【★1】

 耳にタコができるほど聞いていますよね。


 人は,他の人に迷惑(めいわく)をかけない限り,好きなことをしていいという自由があります。

 だから,たばこもお酒も,ほんらいは自由です。

 でも,大人でも,たばこやお酒で他の人に迷惑をかける場合には,法律で制限(せいげん)されます
【★2】


 「だったら,未成年だって,他の人に迷惑をかけなければ,吸ったり飲んだりしてもいいじゃん。誰にも迷惑かけてないでしょ?なんでダメなの?」



 それは,
あなたに自分自身を大切にしてほしいからです。


 知っているとおり,たばこもお酒も,健康によくありません。




 「人は,ほんらい自由です」,と言いました。

 でも,健康に悪いことを「自由」にやり続けた結果,何十年も後になって苦しんでいる大人が,とても多いのです。

 突然死んでしまう危険も高いし,ずっと苦しみ続けることだってある。

 たばこやお酒をやめるようにお医者さんに注意されても,なかなかやめられなくて苦しんでいる大人が,たくさんいます。

 健康に悪いという統計・データや,真っ黒になった肺(はい)の写真などを見せられるよりも,実際の大人たちの話を聞くほうが,その大変さをきちんと感じることができます。

 だけど,
子どもは,そういう大人たちの話を聞く機会が,なかなかありません。

 大人のほうも,プライドやはずかしさから,自分たちの話をきちんと子どもたちにしようとしません。


 大人だったら,「自由」の結果苦しんでも,それはそれで「自己責任」,自分でやったことなんだから仕方がない,ということかもしれません。


 だけれど,子どものみなさんにまで,そんな「自己責任」をおってもらいたくないのです。

 私たち大人は,子どものみなさんのことを,大切に思っています。

 子どものみなさんが,大人になるまでの間,そして大人になったあとも,健康で幸せなくらしを送れるように,と願っています。

 ひとの体は,大人になるまで,成長を続けています。

 身長が伸びるのは高校生くらいで止まりますが,その後も,体の中ではまだまだ成長を続けています。

 すくなくとも,そのように体が成長している間は,たばことお酒の悪い影響(えいきょう)を受けてほしくないのです。

 成長を続けている自分自身を,大切にしてほしいのです。


 体が成長する間に悪い影響を受けて,遠い先につらい思いをするのは,あなた自身だけではありません。

 あなたのまわりには,今も,そしてこれからも,ずっとあなたのことを大切に思ってくれる人たちがいます。

 そして,これからやがて最愛の人とも出会うでしょうし,大切な家族もできるでしょう。

 子どものころからのたばことお酒の影響で,あなた自身が苦しめば,そんな人たちをも悲しませます。




 「人に迷惑をかけないんだから,吸ったり飲んだりしてもいい」。

 そんな子どもの言葉を聞くと,「自分のことを大切に思えないような,さみしい毎日を過ごしているのかな」と,心配します。

 「たばこやお酒に害があるから」,「ルールだから」,という大人の一方的な説教も,時には必要かもしれません。

 でもそれよりも,たばこやお酒の話をひとつのきっかけとして,「自分自身のことを大切に思えているかどうか」を,いろんな人とじっくり話し合うことのほうが,もっと大切だと思っています。




 みなさんも知っているとおり,子どもがたばこを吸ったりお酒を飲んだりすることは,法律で禁止されています。

 でも,その子どもに,「刑務所に行きなさい」とか,「罰金(ばっきん)を払いなさい」という刑罰(けいばつ)がくだされることはありません。

 そのような処罰(しょばつ)がされるのは,止めなかった親や,子どもであることを知っていたのにたばこやお酒を売った大人のほうです
【★3】

 法律のしくみがそうなっているのも,「私たち大人が子どもたちを大切にしないといけない」という考え方のあらわれです。




 でも,吸ったり飲んだりした子どもがなにも処分(しょぶん)を受けないかというと,ちがいます。

 「補導(ほどう)」されるということは聞いたことがあると思います。

 警察から注意を受け,場合によっては親や学校,職場に連絡がいきます。

 この「補導」は,法律(国会で決めたルール)や条例(都道府県や市区町村で決めたルール)ではなく,警察の内部で決めたやりかたです
【★4】

 「補導」がなんどもくりかえされるような子どもだと,なんの犯罪もしていなくても,「将来犯罪を起こすかもしれない」という理由で,裁判所に呼び出されて注意を受けたり,場合によっては「少年院に行って自分自身を見つめなおしてきなさい」と言われることさえあります
【★5】

 また,学校のルールでは,たばこやお酒に手を出したときの,学校としての罰(ばつ)が決まっていることがほとんどです。

 この,学校としての罰のことを,懲戒処分(ちょうかいしょぶん)といいます。

 出席停止の処分を受けたり,私立学校や高校だと退学処分を受けたりすることだってあります。




 たばこが吸えたり,お酒が飲めたりすると,なんとなく大人になった気分がして「かっこいい」と思うかもしれません。

 でも,大人どうしの世界では,正直なところ,そんなイメージはありません。

 人としての「かっこよさ」は,たばこやお酒のような「物」で身につけるものではなく,もっとちがうところで見られるものです。

 自分自身を大切にできる人,まわりからたばこやお酒をすすめられても,「いやなものはいやです」ときっぱり断れる人こそ,「かっこいい」と私は思います。

 

 

【★1】 未成年者喫煙禁止法1条「満20年に至(いた)らざる者は煙草を喫することを得ず」,未成年者飲酒禁止法1条「満20年に至(いた)らざる者は酒類を飲用することを得ず」
【★2】 平成15年から,健康増進法という法律で,他の人がたばこの煙(けむり)を受けないようにしましょうとされています。平成16年からは,航空法という法律が変わり,飛行機の中でたばこを吸うと,場合によっては処罰されることになりました。お酒についても,飲酒運転は昔から犯罪ですし,最近ではその刑罰がとても重くなっています。また,若い学生さんたちが友達にイッキ飲みをむりやりさせて,急性アルコール中毒で亡くなってしまうという事件も多くありますが,強要罪(きょうようざい)という犯罪になります。
【★3】 たばこやお酒を止めなかった親には「科料」という罰金に似た(罰金よりも安い)刑罰,子どもにたばこやお酒を売った人には50万円以下の罰金が科せられます(未成年者喫煙禁止法3条1項,5条,未成年者飲酒禁止法3条,1条2項・3項)。
【★4】 少年警察活動規則2条「この規則において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。…六  不良行為少年 非行少年には該当しないが,飲酒,喫煙,深夜はいかいその他自己又は他人の徳性を害する行為…をしている少年をいう」
 少年警察活動規則14条「不良行為少年を発見したときは,当該不良行為についての注意,その後の非行を防止するための助言又は指導その他の補導を行い,必要に応じ,保護者(学校又は職場の関係者に連絡することが特に必要であると認めるときは,保護者及び当該関係者)に連絡するものとする」
【★5】 「ぐ犯(ぐはん)」といいます。
少年法3条「次に掲げる少年は,これを家庭裁判所の審判に付する。…
3.次に掲げる事由があって,その性格又は環境に照して,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
 イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
 ロ 正当の理由がなく家屋に寄り附かないこと
 ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し,又はいかがわしい場所に出入すること
 ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること」

 

親の虐待から逃げてきて家に帰れない

 

 小さいころからずっと,親から,なぐられたり,けられたりしてきました。これ以上がまんできなくて,家を飛び出してきてしまいました。もう家には帰れないし,帰りたくないけれど,夜泊まるところのあてもありません。どうすればいいですか。

 

 いままでずっとがまんをつづけてきたんですね。

 自分のことを大切にしてくれるはずの親に,大切にされず,

 安心して暮らすことのできるはずの家で,安心できず,

 とてもつらくて悲しい,そして,さみしい思いをしてきたと思います。

 暴力で受けたからだの痛みは,しばらくするとなくなりますが,

 こころの痛みはずっとつづきますよね。

 たんなる家出ではなく,「もう家に帰りたくない」という気持ちにまでなるのは,よっぽどのことだったと思います。

 おじいちゃんやおばあちゃん,おじさんやおばさんなど,親戚(しんせき)の家に頼れれば良いのですが,それも難しいのですね。


 このようなとき,
あなたがまだ18歳になっていなければ,児童相談所というところであなたを守ってもらうことができます

 法律の言葉では,「一時保護(いちじほご)」といいます
【★1】

 自分から児童相談所に直接連絡してもいいです。

 全国共通の電話番号は 189 です
【★2】

 自分から連絡しづらい人は,学校や塾の先生,近所の人など,あなたが信頼できる大人に話して,その人から児童相談所に連絡してもらってもかまいません。

 夕方や夜なら,警察に行って,警察官から児童相談所に連絡してもらうという方法もあります。

 保護してもらうときには,「たんなる家出ではなく,家に帰りたくない,帰れないんだ」ということを,きちんと,そして強く説明しましょう。

 そうでないと,大人からは,「よくある親子げんか」とまちがえられて,あなたが家に帰されてしまうこともあります。


 一時保護をされると,「一時保護所」という施設で,あなたの安全が守られます。

 ただ,一時保護所にはいろんな子どもたちがいるし,学校に行ったり友だちと連絡したりすることもできません。

 すぐに安全を守るためにはしかたのないことなのですが,きゅうくつに感じると思います。

 一時保護所で暮らす期間は,早ければ数日~数週間,ふつうは1~2ヶ月くらい,長いとそれ以上かかることもあります。

 その間に,児童相談所の人が,あなたの気持ちを聞いたり,親と話をしたりして,家にもどることができないかどうかを調整します。

 「やっぱり家に帰れない」「家に返せない」という場合には,あなたがこれから生活する場所を児童相談所が探してくれます。

 学校に通っている子どもならば,「児童養護施設(じどうようごしせつ)」という施設があります。

 最近では,施設ではなくて,ふつうの家庭の中でくらす,「里親」「養育家庭(よういくかてい)」も増えました
【★3】

 アルバイトなどをして自立することを目指す子どもには,「自立援助(じりつえんじょ)ホーム」という施設もあります
【★4】

 児童相談所の人の言われたとおりに従(したが)わないといけない,ということではありません。

 あなた自身の人生なのですから,「どこで生活したいか」というあなたの気持ちや考えを,児童相談所の人にきちんと伝え,聞いてもらうことが大切です。


 一時保護について話しましたが,実は,今,一時保護所はどこもいっぱいです。

 小さな子どもを優先して保護しなければならないので,10代の子を保護しようにも,「満員で空きがない」と言われてしまうかもしれません。

 また,そもそも,18歳以上だと,児童相談所が一時保護することはできないのです。


 そんな,
一時保護が難しいけれども家に帰れないという子どもたちのために,弁護士が中心になって,緊急避難(きんきゅうひなん)施設を作りました

 子どものための「シェルター」です。

 見た目はふつうの一軒家(いっけんや)ですが,どこにあるのかは絶対に秘密なので,あなたの安全は守られます。

 子どもには,担当の弁護士が1人ずつ付きます。

 これまでのことや,今のこと,これからのことについて,弁護士があなたと一緒に考えます。

 そして,親,学校,職場,児童相談所,警察…いろんな大人たちと話し合うときにも,弁護士が力になります。


 2004年に,先輩の弁護士たちが,東京に「カリヨン子どもの家」というシェルターを初めて作りました。

 そして,その取り組みが,全国にひろがっています。

 くわしく知りたい人は,下のウェブサイトを見てみてください。


 東京のシェルターについて相談したいときには,東京弁護士会の「子どもの人権110番」に電話をしてください。

 電話番号は, 03-3503-0110 です。

 

【2016年7月現在】
東 京 : カリヨン子どもセンター(http://www.carillon-cc.org/

名古屋 : 子どもセンターパオ(
http://www.pao.or.jp/
横 浜 : 子どもセンターてんぽ(
http://www.tempo-kanagawa.org/
岡 山 : 子どもシェルターモモ(
http://shelter-momo.org/top.html
京 都 : 子どもセンターののさん(
http://www.nonosan.org/
福 岡 : 子どもセンターそだちの樹(http://sodachinoki.org/

広 島 : ピピオ子どもセンター(
http://pipio.or.jp/
和歌山 : 子どもセンターるーも(http://www.lumo-lumo.org/
札 幌 : 子どもシェルターレラピリカ(
http://rerapirka.blogspot.jp/
千 葉 : 子どもセンター帆希(ほまれ)(http://chiba-homare.org/links.html
新 潟 : 子どもセンターぽると(http://porto.cocolog-nifty.com/
大 阪 : 子どもセンターぬっく(http://www.nukku.info/
沖 縄 : 子どもシェルターおきなわ(https://www.facebook.com/kodomo.shelter.okinawa/
大 分 : 子どもシェルターみらい(http://www.oita-kodomosien777.net/
埼 玉 : 子どもセンターピッピ

 

【★1】 児童福祉法33条1項「児童相談所長は,必要があると認めるときは,第26条第1項の措置をとるに至るまで,児童に一時保護を加え,又は適当な者に委託して,一時保護を加えさせることができる。」
同条2項「都道府県知事は,必要があると認めるときは、第27条第1項又は第2項の措置をとるに至るまで,児童相談所長をして,児童に一時保護を加えさせ,又は適当な者に,一時保護を加えることを委託させることができる。」
同条3項 「前2項の規定による一時保護の期間は,当該一時保護を開始した日から2月を超えてはならない。」
同条4項 「前項の規定にかかわらず,児童相談所長又は都道府県知事は,必要があると認めるときは,引き続き第1項又は第2項の規定による一時保護を行うことができる。」
【★4】 この記事を書いたあとの2015年7月1日,全国共通の電話番号が新しくなり,「189(いちはやく)」になりました。
【★3】 「養子縁組(ようしえんぐみ)」は法律的にも親子になることですが,「里親」「養育家庭」は,養子縁組をしないで(つまり,法律的な親子にはならないで),普通の家庭のようにくらすものです。
【★4】 いきなり子どもがひとりぐらしをするのはとても大変です。自立援助ホームでは,仕事の探し方,仕事のやり方,生活のしかたを,自立するまでの間学ぶことができます。月3万円程度を施設に払い,残りは貯金とお小遣いにまわして,1年ほどでアパートを借りられるほどのお金がたまったら自立する,という施設です。

 

離れている親のことを知りたい

 

 テレビで妻が別れた夫のことを子どもに話さないといけないのかという問題があって,僕は話す必要があると思っていたけど,テレビは,話さなくてもよいって言っていました。本当ですか。

 

 私はそのテレビ番組を見ていませんが,私もあなたと同じく,話す必要があると思います。


 
子どもは,自分の親のことを知ることができますし,離れている親と会ったり連絡したりすることもできます。

 このことは,日本をふくむ世界の国々が,「子どもの権利条約」で確認しています
【★1,2】


 
自分は一体どんな人間なのか。

 そのことを,難しい言葉で「アイデンティティ」といいます。

 
アイデンティティは,人が人であるために欠(か)かせないものです。

 特に,子どもから大人になるころは,自分がどんな人間なのかを考える,自分さがしをする時期です。

 
そして,「親が誰(だれ)で,どういう人か」を知ることは,人が自分のアイデンティティをかたちづくっていくために,必要なものなのです。

 だから,親のことを知りたいと思う気持ちは,まったくおかしくありません。

 むしろ,とても大切な気持ちです。


 
ただ,育ててくれている親が,別れたもう一人の親のことをあなたに話さないようにしているのは,あなたのことを思ってのことかもしれません。

 
そう感じるからこそ,あなたのほうから,「離れている親のことを知りたい,話を聞かせてほしい」とは,なかなか言い出しづらいと思います。


 市役所や区役所は,家族の情報を「戸籍(こせき)」というものでまとめて管理しています。

 その「戸籍」をむかしにさかのぼっていくと,あなたの親のことがわかることが多いです。


 でも,いきなり戸籍を取り寄せたりするのではなく,まずは,育ててくれている親に,自分の気持ちをきちんと伝えることが大切だと思います。

 育ててくれていることへの感謝の気持ちとあわせて,「もう一人の親のことを知りたいんだ」という気持ちを,伝えてみましょう。


 どうやってその気持ちを伝えればいいか,弁護士や回りの大人と一緒に,考えてみませんか。


【★1】 児童に関する条約7条1項「児童は…できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する」
【★2】 児童に関する条約9条3項「締約国は,児童の最善の利益に反する場合を除くほか,父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」

 

ケータイを持ちたいのに親が保証人になってくれない

 

 ケータイかスマホを持ちたいんだけど,親が保証人(ほしょうにん)になってくれません。ケータイ代・スマホ代はアルバイトで自分で出すつもりで,親には迷惑かけないのに…。親が保証人になってくれなければケータイやスマホを持つことはできないんですか。


 

 ケータイやスマホを持つときに,親のハンコがいる,ということは知ってますよね。

 子どもも大人もよくまちがえているんですが,
親がハンコを押すのは,「親が保証人になる」ということではなくて,「子どもがケータイやスマホを持つことを親がOKする」ということです。


 「保証人」というのは,ある人がお金を払えなくなったときに,肩代わり(かたがわり)してお金を払う人のことです
【★1】

 たとえば,住む部屋を借りる契約(けいやく)を大家さんとの間でするときには,必ずといっていいほど,「保証人」が必要です。

 家賃が払えなくなったり,部屋をこわしてしまって弁償(べんしょう)するお金がなかったりしたときに,自分の代わりに,大家さんに払ってもらう人のことです。

 家を買うために銀行から住宅ローンでお金を借りるとき。

 自分で立ち上げた会社が銀行から事業資金を借りるとき。

 そんなときなどにも,万が一のときのために,保証人がもとめられたりします。



 でも,ケータイやスマホを子どもが自分の名義で持つときに,親が保証人になるわけではありません。



 ケータイやスマホの申し込みの用紙をよく読んでみて下さい。

 「保証」という言葉は書かれていません。

 それでも心配ならば,「自分が払えなくなったときに親が払わなくてはいけなくなるんですか?」とケータイショップの人に聞いてみて下さい。

 「そういうことではありません」と答えが返ってきます。



 親がハンコを押すのは,「本人が払えなくなったときに親が肩代わりして払います」ということではありません。

 親がハンコを押すのは,「本人がケータイやスマホを持つことをOKします」ということです。

 法律のことばで,「同意(どうい)」といいます
【★2】


 人は,「どんな人と,どんな約束をしてもいい」という自由があります【★3】

 お互いが納得していれば,まわりの人がとやかく口をはさむことはできません。

 だから,ある人が,ケータイ会社との間で,「料金を払うのでケータイやスマホのサービスを使います」という約束をするのは,ほんらい,自由です。

 (このような法律的な約束を,「契約」(けいやく)といいます)


 でも,お互いの力に差があったら,弱いほうに一方的におかしな約束を押しつけられてしまう危険があります。

 だから,法律では,お互いの力に差があるときに,弱いほうがこまることのないよう,いろんなルールを作っています。

 お年寄り
【★4】,消費者(しょうひしゃ)【★5】,働く人【★6】,アパートなどの借り手【★7】など,いろんな人を,いろんな特別のルールで守っています。

 そして,子どももそうです。

 おかしな約束をほかから押しつけられて子どもがこまることのないように,親が約束の内容を前もってチェックし,大丈夫であれば「同意」する(=OKする)ことが,ルールとして決まっているのです。

 そもそも必要のないことではないか,金額や料金プランは高すぎないか,など,子ども自身がこまらないかどうかを,親がチェックしなければいけないのです。



 もし,親の「同意」がないのに子どもが約束してしまったら。

 そのときは,「親がOKしていなかった」という理由で,約束をはじめからなかったことにしてしまうことができます
【★8】

 ただし,「約束をなかったことにする」とはいっても,すでに使ってしまったケータイやスマホの料金ぜんぶを払わなくてすむわけではありません。

 本人が「むだづかい」をして高い料金になった部分は払わなくてもすみますが,必要だったと思われる料金の部分は払わないといけません
【★9】


 親が「同意」しなければ,子どもはケータイやスマホを持つことはできません。

 だからといって,ウソをついて,申込書に親の名前を勝手に書いてハンコをつくことは,やってはいけません。

 他の人の名前を書いてハンコを押したり,その文書を使ったりすることは,りっぱな犯罪です
【★10】

 それに,「親からOKをもらいました」とウソをついて相手をだますと,「本当は親がOKしていなかったんです」といって約束をナシにすることが,できなくなってしまいます
【★11】

 そうすると,こまるのは,あなた自身です。


 「むだづかい」をして高い料金になった部分であっても,あなたが払わなくてはなりません。

 そういうことのないように,前もって親がきちんとチェックして「同意」しましょう,というルールになっているのです。



 だから,親が「同意」してくれないときには,親ときちんと話し合って納得してもらう,ということが,なにより大切です。

 親がハンコを押すのは,「OKすること(同意)」であって,「親が肩代わりして払う(保証)」のではないことを,きちんとわかってもらいましょう。

 そして,自分がこまることにはならないと親に安心してもらえるように,料金プランや,ケータイ・スマホの使い方を,きちんと説明してみましょう。



 やがて,20歳になったとき,そのとたんに,法律では一人前とされて,いろんな約束ごとを,自分で判断していかなければならなくなります。

 これは,けっこう大変なことです。

 未成年のうちは,約束ごとのしかたを,親のサポートを受けながら学んでいくことのできる,大事な時期なのです。

 

【★1】 民法446条「保証人は,主(しゅ)たる債務者(さいむしゃ)がその債務を履行(りこう)しないときに,その履行をする責任を負う」
【★2】 民法5条1項「未成年者が法律行為をするには,その法定代理人の同意を得なければならない」
【★3】 難しいことばで,「私的自治(してきじち)の原則」といいます。
【★4】 認知症などで判断能力が弱くなった人などのための,成年後見(せいねんこうけん)制度があります(民法7条~,民法838条~,任意後見契約に関する法律)。
【★5】 消費者契約法などで,モノやサービスを買うがわである消費者が保護されています。
【★6】 労働基準法,労働契約法などで,会社などでやとわれて働いている人が保護されています。
【★7】 借地借家法で,アパートや建物,土地の借り手のがわが保護されています。
【★8】 これを,「取消権(とりけしけん)」といいます。民法5条2項「前項の規定に反する法律行為は,取り消すことができる」
【★9】 民法121条「取り消された行為は,初めから無効であったものとみなす。ただし,制限行為能力者は,その行為によって現に利益を受けている限度において,返還の義務を負う。」
【★10】 私文書偽造罪(しぶんしょぎぞうざい)という犯罪と,偽造私文書行使罪(ぎぞうしぶんしょこうしざい)という犯罪になります。
刑法159条「行使の目的で,他人の印章若(も)しくは署名を使用して権利,義務若しくは事実証明に関する文書…を偽造…した者は,3月以上5年以下の懲役に処する」
刑法161条「前2条の文書…を行使した者は,その文書…を偽造…した者と同一の刑に処する」
【★11】 民法21条「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術(さじゅつ)を用(もち)いたときは,その行為を取り消すことができない。」この条文は,自分が「大人だ」とウソをついたときのことしか書かれていませんが,「親がOKした」とウソをついたときも同じように取り消せない,と読むのが一般的です(内田貴「民法Ⅰ」)。

 

このブログをつくったわけ

 弁護士は,大人にとっても,ふだんあまり身近に感じることのない職業です。

 ましてや,子どもが弁護士に会って話をすることは,もっとかぎられていると思います。


 私は,「大人になっても子どもの味方でいたい」と,弁護士をめざしました。


 弁護士会の子どもの委員会のメンバーとして,

 子どものシェルターの担当弁護士として,

 児童相談所という子どもを守るお役所のメンバーとして,

 東京都の豊島(としま)区の「子どもの権利擁護(ようご)委員」として,

 いろんな子どもたちと出会います。


 非行(ひこう)をしてしまってつかまった子どもたちや,

 親から虐待(ぎゃくたい)を受けてきた子どもたち,

 親のいない子どもたちや,

 親が離婚(りこん)した子どもたち,

 学校で友だちや先生との関係で苦しい思いをしている子どもたち,


 私は,そんないろんな子どもたちと一緒に考え,動いています。

 これから先も,どんな子どもたちと出会えるだろうかと,楽しみにしています。


 でも,私ひとりが出会える子どもの数は,かぎられています。

 日本全国には,私と同じように,子どものために動く弁護士が,たくさんいます。

 それでも,弁護士全員が出会える子どもの数は,やっぱりかぎられています。

 もっと多くの子どもたちに,法律がどうなっているか,弁護士がどういうことをしているかを,知ってもらうにはどうすればいいか,と,私は考えています。


 私が子どものころには考えられなかったほど,

 今は,ケータイやインターネットが子どもたちにも広がっています。

 ケータイも,インターネットも,うまく使えば,自分の世界を広げることができる,いい道具です。

 でも,本当に必要な情報をさがすのは難しいし,法律のことについてはまちがった情報もたくさん流れています。

 私は,仕事では,ケータイをほとんど使わず,メールも自分の依頼者(いらいしゃ)とのあいだではまったく使いません。

 そんな私ですが,このブログを使って,みなさんに,一生懸命伝えていきたいと思っています。


 弁護士は,「人権」を守るのが仕事です。


 「人権」は,「人が生まれながらにして持っている権利」です。

 学校では,そう教えています。


 私なりにもっとわかりやすく言うと,こういうことです。


 人は,どんな人でも,一人ひとりが,大切な人間として扱(あつか)われる,尊重(そんちょう)されるんですよ,ということ。

 だれかの「物」として扱われるのではない。

 だれかの「人形」として扱われるのではない。

 だれかの「奴隷(どれい)」として扱われるのでもない。

 一人ひとりが,大切な存在(そんざい),大切な人間として扱われる,尊重されるんですよ,ということ。

 それは,

 大人でも子どもでも,

 病気や障害(しょうがい)を持っている人も持っていない人も,

 国籍(こくせき)が日本の人も外国の人も,

 お金を持っている人も持っていない人も,

 勉強ができる人も苦手な人も,

 そとの見た目がどんな人でも,

 心の中の考え方や感じ方がどんな人でも,

 男でも女でも性的マイノリティでも…

 どんな人でも,一人ひとりが,大切な存在(そんざい),大切な人間として扱われる,尊重されるんですよ,ということ。

 だれもが,一人ぼっちではなく,「ここにいていいんだ」という居場所(いばしょ)があること。

 自分の人生を自分が決めていくことができるし,そのためにみんなと一緒に考えることができること。

 そして,毎日の暮らしを安心してすごすことができるし,幸せな人生を送ることができるんですよ,ということ。


 上に書いたことぜんぶをひっくるめて,法律の世界では,「人権」という言葉で表現します。


 このブログは,単に法律がどうなっているかということだけを伝えたいのではありません。

 子どものみなさん一人ひとりの「人権」が守られるんですよ,ということ。

 そのメッセージが,みなさんに伝わるようにしていきたいと思っています。

 このブログが,誰かに少しでも役に立ち,誰かの心を少しでも温かくできれば,これ以上の喜びはありません。


 私の大事にしている憲法と弁護士法の条文,そして,「豊島区子どもの権利に関する条例」の前文を,ぜひみなさんにも読んで欲しいと思います。

 

 

憲法13条 すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及(およ)び幸福追求(ついきゅう)に対する国民の権利については,公共の福祉(ふくし)に反(はん)しない限(かぎ)り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。

弁護士法1条1項 弁護士は,基本的人権を擁護(ようご)し,社会正義を実現することを使命とする。
同条2項 弁護士は,前項の使命に基(もとづ)き,誠実にその職務(しょくむ)を行(おこな)い,社会秩序(ちつじょ)の維持(いじ)及び法律制度の改善(かいぜん)に努力しなければならない。

豊島区子どもの権利に関する条例 前文

子どものみなさん
 あなたの人生の主人公は,あなたです
 あなたのことは,あなたが選んで決めることができます
 失敗しても,やり直せます
 困ったことがあったら,助けを求めていいのです
 あなたは,ひとりではありません
 私たちおとなは,あなたの立場に立って,あなたの声に耳を傾(かたむ)けます
 あなたがあなたらしく生きていけるように,いっしょに考えていきましょう
 あなたという人は,世界でただ一人しかいません
 大切な,大切な存在なのです
 この宣言をもとに,豊島区は子どもの権利に関する条例を制定します。
 子どもは,自分の今の「思い」をわかってほしいと願っています。何かを要求するだけではなく,子どもなりにできることを考えて挑戦し,自分の役割を担(にな)おうとしています。それを手助けするためには,子どもの主体性を認めて,子どもがおとなとともに手を携(たずさ)えて社会に参画(さんかく)できる場をつくることが必要です。子どもに対する差別をなくし,誤(あやま)った思い込みを改め,お互いの権利を意識しながら,子どもとおとなの新しい信頼関係をつくることが大切です。
 どんな子どももみな等(ひと)しく生まれながらに持っているものが子どもの権利です。子どもの権利は,その年齢や発達に応じて保障(ほしょう)されるものです。子どもの権利を実現していくためには,まず,おとな自身が権利というものに関心を持つことが必要です。そして子どもは,おとなや子ども同士のかかわりあいの中から,お互いの権利の尊重,責任などを学び,権利を実現していく力を培(つちか)っていくのです。未来を託(たく)する子どもたちにとって,自分の選択で権利を行使(こうし)することは,かけがえのないことなのです。
 おとなには,子どもを深い愛情のもとに健(すこ)やかに育てる責任があります。そのために,おとなは,家庭,学校及び地域の中でお互いに手を携(たずさ)え,協力しながら,子どもの限りない力を信じて最善の努力をします。豊島区は,それらを実効(じっこう)あるものにするために,安全・安心に暮らせる環境(かんきょう)を整備(せいび)し,この条例に定める子どもの権利保障の理念をあらゆる施策(せさく)に反映(はんえい)させていきます。
 まさにこの豊島区の目指す理念こそ,国が批准(ひじゅん)した児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号)に通じる理念にほかならないのです。

 

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