このブログをつくったわけ
弁護士は,大人にとっても,ふだんあまり身近に感じることのない職業です。
ましてや,子どもが弁護士に会って話をすることは,もっとかぎられていると思います。
私は,「大人になっても子どもの味方でいたい」と,弁護士をめざしました。
弁護士会の子どもの委員会のメンバーとして,
子どものシェルターの担当弁護士として,
児童相談所という子どもを守るお役所のメンバーとして,
東京都の豊島(としま)区の「子どもの権利擁護(ようご)委員」として,
いろんな子どもたちと出会います。
非行(ひこう)をしてしまってつかまった子どもたちや,
親から虐待(ぎゃくたい)を受けてきた子どもたち,
親のいない子どもたちや,
親が離婚(りこん)した子どもたち,
学校で友だちや先生との関係で苦しい思いをしている子どもたち,
私は,そんないろんな子どもたちと一緒に考え,動いています。
これから先も,どんな子どもたちと出会えるだろうかと,楽しみにしています。
でも,私ひとりが出会える子どもの数は,かぎられています。
日本全国には,私と同じように,子どものために動く弁護士が,たくさんいます。
それでも,弁護士全員が出会える子どもの数は,やっぱりかぎられています。
もっと多くの子どもたちに,法律がどうなっているか,弁護士がどういうことをしているかを,知ってもらうにはどうすればいいか,と,私は考えています。
私が子どものころには考えられなかったほど,
今は,ケータイやインターネットが子どもたちにも広がっています。
ケータイも,インターネットも,うまく使えば,自分の世界を広げることができる,いい道具です。
でも,本当に必要な情報をさがすのは難しいし,法律のことについてはまちがった情報もたくさん流れています。
私は,仕事では,ケータイをほとんど使わず,メールも自分の依頼者(いらいしゃ)とのあいだではまったく使いません。
そんな私ですが,このブログを使って,みなさんに,一生懸命伝えていきたいと思っています。
弁護士は,「人権」を守るのが仕事です。
「人権」は,「人が生まれながらにして持っている権利」です。
学校では,そう教えています。
私なりにもっとわかりやすく言うと,こういうことです。
人は,どんな人でも,一人ひとりが,大切な人間として扱(あつか)われる,尊重(そんちょう)されるんですよ,ということ。
だれかの「物」として扱われるのではない。
だれかの「人形」として扱われるのではない。
だれかの「奴隷(どれい)」として扱われるのでもない。
一人ひとりが,大切な存在(そんざい),大切な人間として扱われる,尊重されるんですよ,ということ。
それは,
大人でも子どもでも,
病気や障害(しょうがい)を持っている人も持っていない人も,
国籍(こくせき)やルーツが日本の人も外国の人も,
お金を持っている人も持っていない人も,
勉強が得意な人も苦手な人も,
そとの見た目がどんな人でも,
心の中の感じ方や,頭の中の考え方がどんな人でも,
男でも女でも性的マイノリティでも…
どんな人でも,一人ひとりが,大切な存在(そんざい),大切な人間として扱われる,尊重されるんですよ,ということ。
だれもが,一人ぼっちではなく,「ここにいていいんだ」という居場所(いばしょ)があること。
自分の人生を,誰かに指図(さしず)されたり,支配されたりせずに,自分で選んで決めていけること。
そして,毎日の暮らしを安心して過ごすことができるし,幸せな人生を送ることができるんですよ,ということ。
上に書いたことぜんぶをひっくるめて,法律の世界では,「人権」という言葉で表現します。
このブログは,単に法律がどうなっているかということだけを伝えたいのではありません。
子どものみなさん一人ひとりの「人権」が守られるんですよ,ということ。
そのメッセージが,みなさんに伝わるようにしていきたいと思っています。
このブログが,誰かに少しでも役に立ち,誰かの心を少しでも温かくできれば,これ以上の喜びはありません。
私の大事にしている憲法と弁護士法の条文,そして,「豊島区子どもの権利に関する条例」の前文を,ぜひみなさんにも読んで欲しいと思います。
憲法13条 すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及(およ)び幸福追求(ついきゅう)に対する国民の権利については,公共の福祉(ふくし)に反(はん)しない限(かぎ)り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。
弁護士法1条1項 弁護士は,基本的人権を擁護(ようご)し,社会正義を実現することを使命とする。
同条2項 弁護士は,前項の使命に基(もとづ)き,誠実にその職務(しょくむ)を行(おこな)い,社会秩序(ちつじょ)の維持(いじ)及び法律制度の改善(かいぜん)に努力しなければならない。
豊島区子どもの権利に関する条例 前文
子どものみなさん
あなたの人生の主人公は,あなたです
あなたのことは,あなたが選んで決めることができます
失敗しても,やり直せます
困ったことがあったら,助けを求めていいのです
あなたは,ひとりではありません
私たちおとなは,あなたの立場に立って,あなたの声に耳を傾(かたむ)けます
あなたがあなたらしく生きていけるように,いっしょに考えていきましょう
あなたという人は,世界でただ一人しかいません
大切な,大切な存在なのです
この宣言をもとに,豊島区は子どもの権利に関する条例を制定します。
子どもは,自分の今の「思い」をわかってほしいと願っています。何かを要求するだけではなく,子どもなりにできることを考えて挑戦し,自分の役割を担(にな)おうとしています。それを手助けするためには,子どもの主体性を認めて,子どもがおとなとともに手を携(たずさ)えて社会に参画(さんかく)できる場をつくることが必要です。子どもに対する差別をなくし,誤(あやま)った思い込みを改め,お互いの権利を意識しながら,子どもとおとなの新しい信頼関係をつくることが大切です。
どんな子どももみな等(ひと)しく生まれながらに持っているものが子どもの権利です。子どもの権利は,その年齢や発達に応じて保障(ほしょう)されるものです。子どもの権利を実現していくためには,まず,おとな自身が権利というものに関心を持つことが必要です。そして子どもは,おとなや子ども同士のかかわりあいの中から,お互いの権利の尊重,責任などを学び,権利を実現していく力を培(つちか)っていくのです。未来を託(たく)する子どもたちにとって,自分の選択で権利を行使(こうし)することは,かけがえのないことなのです。
おとなには,子どもを深い愛情のもとに健(すこ)やかに育てる責任があります。そのために,おとなは,家庭,学校及び地域の中でお互いに手を携(たずさ)え,協力しながら,子どもの限りない力を信じて最善の努力をします。豊島区は,それらを実効(じっこう)あるものにするために,安全・安心に暮らせる環境(かんきょう)を整備(せいび)し,この条例に定める子どもの権利保障の理念をあらゆる施策(せさく)に反映(はんえい)させていきます。
まさにこの豊島区の目指す理念こそ,国が批准(ひじゅん)した児童の権利に関する条約(平成6年条約第2号)に通じる理念にほかならないのです。
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